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愚者と勇者は紙一重

作者: 内藤

ぐっちゃぐっちゃなので多分書き直しとか入ります

「…この刀は、二度と解かれないようにしなければ…もう、犠牲を増やしてはならぬ」


  蔵の奥底に老人は刀を置く。


「この刀は儂の最高傑作になるはずじゃった。どこで間違えたのかのぅ」


  老人は1人…いや後ろに泣きながら立っている2人の弟子に向かって呟いている。


「…儂ももう長くない。弟子…いや榊、要。後は任せたぞ」

「…分かりました。この刀は我ら一族が二度と外界に出ないように保管致します。お師匠…今まで…」


  そこまで言ったところで老人は手を振り続きを遮る。


「よいよい。堅苦しいのはなしじゃ。では老いぼれはこの世を去るとするかのぅ」


  そう言い老人は1人蔵を出て隣に立つ家に向かう。その家は刀で切り刻まれたような後が其処彼処にみられた。今にも崩れそうな家の中に入り仏壇に手を合わせ…


  自らの腹を掻っ切った。


  その日。世界最高の刀鍛冶師にして最強と呼ばれた老人はこの世を去った。









  あるところに1人の少年と少女がいた。その少年はとても正義感が強く、いじめられている人を見つけたら積極的に助けたりした。

そんなある日少年は少女と出会った。初めはいじめられているのを発見して助けた、という関係だったが少年は少女の美しさに惚れてしまった。少女も少年に惚れ、2人は付き合うことになった。

  やがて成長した少年はとある本に出会う。その本は騎士達の勇敢な姿が描かれていた。それを見た少年はこれだ!と思った。彼女にも何度も聞かせたり、なりたいと夢を語ったりした。その後も何度もなんども読み返し、自分が目指したい理想、大切な人を守る騎士に憧れを抱き、やがてなりたいと思うようになった。


  15を過ぎ、少年は入団試験を受けに大きな街に向かった。初めての試験だったが少年は入団する事が出来た。泣きながら見送る家族、彼女に別れを告げて少年は1人、街で暮らすことになった。

  入団が決まってから1週間。いよいよ訓練が始まった。騎士団の訓練はとても厳しいものだったが憧れた騎士団に入れた嬉しさから、少年にとっては苦では無かった。


 月日がたちやがて少年は青年へとなっていた。青年は毎日頑張り続けた。規定の訓練をこなしてなお夜中まで頑張り続けた。しかし、努力が実る事は無かった。青年には才能が無かったのだ。しかし諦めず青年は努力を続けた。

 ある時、青年のところに一通の手紙が届いた。次の戦に参加して欲しい、という物だった。青年は絶望した。これは事実上の死刑宣告だからだ。自分は才能が無い、という事は分かりきっていたため、戦場では生き残る事が出来ない。実際にこれは隊長からの首切りの手紙だった。青年は騎士に憧れを抱いていたため不正を許す事が出来ず度々上司に当たる体調などに歯向かっていた。そのため、上から邪魔だ、と切り捨てられたのだ。


 青年は次の戦までの時間で泣く泣く実家に帰った。家で青年と彼女は泣き続けた。そんな青年の様子を哀れに思った曾祖父は夜中にこっそりととある情報を教えた。青年はその夜、とある蔵に向かった。


 色々と積み重なっている道具を左右に退けながら奥に進む。最奥には曾祖父の言った通り一振りの刀が置いてあった。青年は刀に触れながら教えて貰った解呪の言葉をつぶやく。

 ふわり、と浮き上がった刀が青年の手に収まる。その瞬間、頭の中に言葉が入ってきた。

 大切な物を切れ、と。それが大切であればあるほど力を得られる、と。青年は翌日から部屋に閉じこもった。まず最初に何を切ろうか悩み続けた。そこにはかつて正義に燃え、騎士団に憧れた少年の姿は無かった。


 深夜、青年は部屋から出てきた。目は赤く充血し手に持った刀もどこか黒々とした色を強めている。青年は実家を離れ、街にある自分の家に向かった。青年の部屋にはなんども読み返した騎士の本が半分に切られていた。少年は一言、ごめんと呟き人知れず家を離れた。


 戦争が起きた。結果は…青年がいた軍が勝利を収めた。この結果に各国は驚きを隠せなかった。今まで最弱と思っていた国が凌ぎきったからだ。その戦果には1人の青年が深く関わっていた。単身で敵の真ん中に突っ込み、敵軍全体の1割を削り、将を落とした。これには敵ばかりではなく味方も恐怖したという。

 青年は王に呼び出され、大いに喜ばれた。表彰も国民の前で堂々と行われ、国民のスターとまで呼ばれた。しかし、青年は感じていた。これが自分の力では無いということを。それと同時に敵を蹴散らす快感を忘れられなくなっていた。


 大戦果を上げてから半年、少年は自分の刀に宿る力が弱くなっているのを感じていた。力が無くなったときのみんなの失望の視線が怖くなり少年はまた力を求めて実家に帰った。そして、彼女から貰ったペンダントや誕生日に貰って大切にしまっていた玩具を切り裂いた。溢れ出る力、思わず青年は笑い声を上げていた。


 次の戦場、その次の戦場。青年は次々と戦果を上げていった。気付けば才能が無く嘆いていた少年は近衛騎士団の団長という立場にまで登り詰めていた。しかし、青年にあるのは王への忠誠などでは無く、新たな力だった。そして青年は禁忌を犯す。


 ○月△日。集団惨殺事件。この事件は王によって闇に葬られた事件。この頃には既に青年としての面影は残っていなかった。いや、姿は当時の青年のままだった。しかしその記憶は9割が残っておらず、破壊衝動に蝕まれたケモノのようだった。王はそんな青年を持て余しながらも利用し各国を次々に支配していった。しかし王も壊れた青年を扱うのを恐れたようである時、北方の遠く離れた異郷の地に数人の奴隷兵士に連れさせて青年を解放する作戦を立てた。周りは一も二もなく同意。即座に作戦は実行された。

 異郷の地。兵士は首元に黒々とした痣が付いていて、怯えた表情をした数人と檻に入った1人の、いや一匹のケモノ。檻を放つと同時にケモノは周りの兵士の首を引きちぎり、体を咀嚼しながら多くのエモノを求めて走り続ける。ケモノの目にはもう全ての人間が餌に見えていた。どんどんとエモノを食い続けるケモノ。その進路は何故か真っ直ぐに南へ向かっていった。


「…コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス…オレヲステタヤツモオレヲコンナスガタニシタヤツモカノジョヲコロシタヤツモ!」


 そのケモノはやがて南のとある大国に辿り着いた。記憶を無くし理性も無くしたケモノは、ただ暴れ続け、しかし、その大国から出る事は無かった。最後は崩れ去ったとある屋敷の上に座り命を絶ったという。

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