中編
「マリアナ様!今日もアルヴィン様はアイナさんといらっしゃいましたわ!よろしいんですの!?」
「構わないわ。」
「アイナさんはまるでアルヴィン様が自分のものであるように振る舞うんですのよ!」
「今のアルヴィンは誰のものでもないわ。」
いや、もしかすると既にアイナさんのものになってしまったのだろうか。アイナさんの口ぶりから思うに二人は想い合っているようだったから。
私とアルヴィンが離れてからもう1週間がたった。主人とその従者としてずっと一緒に過ごしていた私たちが離れ、アルヴィンがアイナさんと共にいるようになり、学園内でも噂として飛び交っているようだ。そして私たちが離れるようになってから今のように私に抗議してくる令嬢が後を絶たない。アルヴィンのような顔の整った男が貴族の中でも身分の低い男爵令嬢とともにいるのが気に食わないのかもしれない。...私にアルヴィンを取り戻せとでもいうのだろうか。
「何故ですかマリアナ様!お2人はあんなに仲睦まじかったではありませんか!」
仲睦まじかった...?でもアイナさんは私がまるでアルヴィンを奴隷のように扱っていると言った。私といることがアルヴィンを、あの子を苦しめているのだと。だから私はアルヴィンを手放したというのに。
「アルヴィンはアイナさんと一緒だと幸せになれるのよ。」
「っ!マリアナ様。本当に、...本当にそう思われていらっしゃるのですか...?」
「ええ。」
だって私といるのが辛いと、苦しいと言っていたはずなんだから。
「...恐れながらマリアナ様。わたくしの意見を述べてもよろしいでしょうか?」
「いいわ。」
「マリアナ様。わたくしから見て、いえ誰の目から見ても今のアルヴィン様は。アイナさんと過ごすアルヴィン様は...
まったく幸せそうでなんかありませんわ。」
□□□□□□□□□□□□□
「っはぁ、はっ!...はぁ!」
無駄に広い学園の廊下を必死に走る。ほんの少し、小走り程度にはしっているだけだというのにもう息切れして脇腹もいたくてしょうがない。公爵令嬢として生きてきたこの体は前世で女子高生として生きた私の体のように上手く走ってはくれないのだ。それが今はただただもどかしい。
...お世辞にも優雅とはいえないような様子で脇目もふらず走り続ける私を見て生徒たちが驚き注目しているのが分かる。分かっている分かっているのだ。ここは前世とは違う。公爵令嬢である私がこんな風に走ったりしていいわけが無い。生徒の手本となるべき振る舞いをしないといけないのは嫌というほど分かっているのだ。
でも、でも!止まることなどできない。止まれるはずがない。だってかわいい私のアルヴィンが、私のアルが、幸せになるべきであるかわいい私のあの子がっ!
今幸せじゃないかもしれない。
「マリアナ様!待ってくださいませ!」
「っ待てるわけなんか...ッは、ない!」
終わると思っていましたが終わりませんでした...汗
続きます。よろしくお願いします。