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前編

乙女ゲームのような世界ですが悪役令嬢やざまぁ要素は少なめです

突然だが私は転生者だ。

マリアナ・シャフツベリーという長ったらしい名前を公爵をしている親からもらったときから、つまり生まれたときからなぜか前世の記憶があった。日本という国で生まれ、女子高生というものをやって、その途中で車に轢かれて死んだという記憶が。

はっきり言って車に轢かれて死んだというのは確かではないんだが、目の前に迫ってくる車の映像が最後の記憶なのでそう思っていてほぼ間違いないと思う。


そんな私だが前世の記憶によって頭が痛くなったり、人格が変わってしまったりなんてことはなく16歳になるまで普通に生きてきた。前世の記憶なんてものは私を年齢の割に大人びた少女にしただけで、勉強でもこっちの世界のものとは違うため特に天才的な頭脳にしてくれたりなんかもしなかった。

前世の記憶があるなんてよくある小説のような設定なのになぁと思いつつも特に何事もなく私は16歳まで普通に過ごしてきたのだ。

つい最近までは。


「...ぉ願いだからアルヴィン様を解放してあげてください!」


遠くに飛ばしてしまっていた思考をゆっくりと戻して、目の前で先程から私に懇願している少女へと意識を向ける。


ピンクブロンドのふわふわとした髪に蜂蜜色の瞳をウルウルさせながら必死にこちらを睨みつけているその姿はなんとも庇護欲をそそらせるものなのだろう。

先程からちらちらとこちらを見ている生徒が少し離れた場所に集まっている。


「お願いします!お願いしますからこれ以上アルヴィン様を縛り付けないで!解放してあげて!」


何度も何度も繰り返す彼女に何か言葉を返さなければ、と思うのだがなんと言っていいのか残念なことにわからない。

彼女...確かアイナ・マットンだったか。興奮して敬語さえも崩れてきているが、そもそも彼女は男爵の娘であって公爵の娘である私に意見など本来許されない。しかし彼女は止まらないし止める人もいないらしい。


「アルヴィン様は本当は自由な筈です!それを...それを、いくら拾ってあげたからって奴隷のように扱うなんて!酷い!酷すぎるわ!」


「...奴隷のように?」


「っそうです!私、私!絶対に許せません!」


アイナさんから出てきた思いがけない言葉につい反応してしまった私にビクッと怯えながらも、アイナさんは気丈に発言を続ける。周りに集まっていた方々も奴隷発言には驚いたのか少しざわざわとし始めた。

先程から会話に出てきているアルヴィンとは私の従者をしている男だ。銀の短髪に深い蒼の瞳をもつ、少し強面ではあるがそれを差し引いてもかなりの美男子と言えるだろう男。

確かにボロボロだった彼を私が拾ったの事実だが、奴隷のように扱っていたつもりなんて無い。しかしここまで言われるということは傍から見た私の扱いは奴隷を相手にするようなものだったのだろうか。


「アル...アルヴィンがあなたに言ったのかしら。私から解放されたいって。」


「あなたへ無理矢理従わされているアルヴィン様はそんなこと言えません!でも...いつも辛い、苦しいと仰られて!私、私...!」


「アルヴィンは私の傍にいるのが辛いのかしら。」


「っ当然です!」


「...私といてもあの子は幸せになれないのかしら。」


「マリアナ様といたらアルヴィン様はずっと不幸なままです!」


「あなたといれば...アルヴィンは幸せになれるのかしら。」


「もちろんです!私が彼を幸せにしてみせます!それにっ...それにアルヴィン様はいつも私といる時は私が愛しいと言って微笑んでらっしゃいます。」


アルヴィンが愛しいと微笑んでいる...?にわかには信じ難い話だが頬を染めて照れたようにしているアイナさんをみると本当のようにも思える。








「...分かったわ。それがあの子の為ならば私のそばに居る必要はないわ。あなたにあげる。」






続きます

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