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そっちじゃない。そっちでもない。

こんばんは!いつもありがとうございます。

これにてお化け屋敷編は終わり、次話より塾編シリアスとなります。

来年の夏(3年)の祖父母の家編のように全編シリアスではありませんが…

それはボブヘアの少女とロングヘアのサングラスをかけた二人の少女だった。

その二人を私は知っているが彼女達同士の接点が全く結び付かず。そのため、私はつい叫ぶように彼女達の名を口にしてしまうことに。


「佐藤さんと島田さん!」

ボブヘアの少女は、私の声に人懐っこそうな笑みを浮かべながら片手を上げた。

彼女は――クラスメイトの佐藤充希さとうみつきさん。

見慣れた制服と違って今日はポロシャツにショートパンツ姿という実に夏らしい恰好。


そしてその隣にいるのは、サングラスをかけた腰元まで長い髪の少女――同じ塾の島田樹里しまだじゅりさん。

彼女は軽くこちらに会釈するような仕草をした。そのため、艶々の漆黒の髪が肩から流れ落ちていく。

島田さんは大きめのダメージ加工がされているブラックの英字Tシャツのため、肩からシャツがずれ落ちてしまって中に着ているボーダーのタンクトップがちらっと窺える。下は細身のホワイトデニムでモノトーンコーデだ。


「久しぶりだねー! 露木さん」

「私は塾で平日毎日会っているわ」

「うん。佐藤さんは久しぶりだね。島田さんは塾で。もしかして、二人共お化け屋敷?」

「そうなの~。お化け屋敷とイベント。しかし、偶然だね。さっきちらっと樹里に聞いたんだけれども、樹里と露木さんって塾が一緒なんだって?」

「うん。私もびっくりしたよ。二人が一緒に居たから。もしかして、中学が同じだったの? 確か、佐藤さん四中だったっけ……?」

「そう。四中。でも、私と樹里は中高どっちも別だよ。他校生同士だけど部活で知り合ったんだ。ソフトテニス部。それで練習試合とかでちょくちょく顔合わせて、お互い昴のファンクラブ入っているのを知っていつの間にか友達に」

「そうなんだ」

その接点を知らなかったので、私はちょっとだけ二人を見た時に驚いてしまった。


「露木さんもお化け屋敷?」

「うん。お友達と……」

そう言って私が匠君達の方へと顔を向ければ、佐藤さん達は、「あっ」という声を上げ眉と肩を下げ始めてしまう。

もしかして話に夢中で気づいていなかったのかもしれない。


「ごめん、邪魔しちゃって……友達と一緒だったのに声かけちゃって……」

それには匠君達は首を左右に振って穏やかな笑みを浮かべながら「俺達の事は気にせず」と言ってくれた。


「しかし、イケメンと美少女のカップルですねー!」

「「え」」

「えぇ、本当に。モデルみたい。凄く絵になってお似合いだわ」

「「え」」

佐藤さん達にかけられた言葉に、美智さんと匠君はお互い顔を見合わせると、今まで見たことがないぐらいに顔を歪ませ合った。空は青天なのに、美智さん達には日の光が一切差し込んでいないかのように深く暗い雰囲気を纏っている。

確かに佐藤さんの言うとおりだなぁって思う。イケメンと美女だ。


「ちょっと待ってくれ。俺と美智は兄妹だ! それに俺には朱音が……っ!」

「え? 私?」

「あー。なるほど。小梁こはり君のライバルなのかな?」

微笑みながら告げた島田さんに対して、私は首を傾げてしまう。

どうしてそこで塾が一緒の小梁君の名前が出たのかがわからなかったからだ。


――小梁君……? どうして急に彼の話が?


小梁君とは塾のクラスが一緒でよく休憩時間などに声をかけて貰っている。

けれども、私が塾にまだ慣れていないのでぎこちない反応に……

それでも彼は何度も声をかけてくれていた。


「ねぇー、樹里。小梁君って誰?」

「私と露木さんと塾が同じ子。確か、四中って聞いているけど知らない? すっげーイケメンで騒がれているんだけど」

「はぁ? 私と同中? ……あぁ、もしかしてサッカー部の小梁唯翔こはりゆいと?」

「そう! 部活は知らないけどそんな名前。休憩時間とか、よく露木さんに話かけているの」

「へー……――」

という佐藤さんの声をかき消すかのように、「ちょっと待ってくれっ!」という匠君の声が地を割るように響き渡ったため、全員が動きを止め彼へと視線を注ぐ。

それを受け止めている匠君の顔からは、つい先ほど浮かべていた笑みはどこかに消えてしまっている。


「君って事は男なのかっ!?? というか、ライバルっ!?」

「男子だよ。でも、ライバルじゃないと思う。小梁君は六条院の大学に進学はしないから」

「朱音、違うそっちじゃない。あー……男か……マジかよ……そりゃあそうだよな。塾だもんなぁ……ただでさえ学校共学で心配なのに……」

「あ、ごめん。さっきライバルって言ったけど私の勘違いの可能性もあるわ」

「その理由を尋ねてもいいかっ!?」

前のめりになって尋ねる匠君に、美智さんが肩に手を添え「お兄様。少し落ち着いて下さい」と告げている。


「えぇ。だって、小梁君って矢飼やがいさんと付き合っているから。……ただ、私はそう感じないのよね」

「え? なに矢飼も塾が同じなの?」

「あら、充希は彼女を知っているの?」

「まぁ、あの二人かなり有名だったから。小梁と矢飼って幼稚園からずっと幼馴染で部活もずっと一緒なんだってさ。だから、よく二人でいるのを見かけていたよ。っつうか、あの二人付き合ったんだー。矢飼が小梁の事を好きだっていうのは、周りにだだ漏れしていたからわかるけどさ。小梁はそんな感じではなかったんだけどなぁ」

「本人から直接聞いたわけではないわ。ただ、友達から聞いただけよ。小梁君モテるから、結構アピールする子が多いの。それを矢飼さんが牽制しているみたい。私の彼氏ゆいとに手を出すなって。でも、矢飼さんから熱烈な恋愛感情は感じられるけど小梁君はそんな雰囲気ではないのよね。だから、私は付き合ってないんじゃないかって思ったの」

「あー、でも矢飼って昔からそんな感じなんだよね。小梁に近づく女は全て牽制。だから、樹里の言う通り付き合っていないかも。今度知ってそうな子に聞いてみるよ」

そう口を開き、苦笑いを浮かべた佐藤さん。


「なんかごめんなさい。信憑性のない話をしてしまって」

「いや、大丈夫。仮に本当だとしても俺がなんとかしなきゃならない問題だからさ。こっちはこっちで頑張るよ」

「さすがイケメン! 私も昴にそんな風に……――」

佐藤さんの言葉に被るように鐘の音が広場に時間を告げた。カランカランと11回。

それを耳に入れ、佐藤さん達の動きが一瞬止まってしまう。彼女達は鞄から急いでスマホを取り出すと、ディスプレイを眺めてぐっと眉を寄せ始めてしまう。


「……樹里、もしかしてやばい?」

「……そうね。11時って事はそろそろお化け屋敷の列に並ばないと。午後からのイベントに間に合わなくなるわ」

「だよねー。混み過ぎだもん。じゃあ、名残惜しいけどそろそろ行こうか」

「えぇ」

「じゃあ、露木さん。私達、もう行くね」

「うん。イベント楽しんできてね。また」

「またね!」

佐藤さん達は匠君達に会釈をした後、手を上げて左右に振ると私達に背を向けこの場を立ち去りお化け屋敷のある方向へと向かって行く。そんな彼女達を見送っていると、「朱音」と名を呼ばれてしまったので匠君の方へと顔を向ける。

すると、彼は複雑そうな表情をしていた。


――どうしたんだろう?


「……後で塾の話を聞かせて。ランチの時でもいから」

「塾? うん、いいよ。でも、基本的には勉強しているだけだから、特に何か面白い話があるとか珍しい話とかはないよ?」

「俺が教えて欲しいのはそっちじゃない」

「もしかして、先生の教え方?」

「そっちでもない。……塾で朱音がどんな風に過ごしているかが知りたいんだ。……あぁ。ごめん、やっぱりいいや。聞いても聞かなくても俺はどっちにしろ気になって仕方がなくなるだろうから」

「気になるって何を……?」

「色々。それより物販の続きを見よう。ランチの時間があるし。何か欲しいものある?」

急に話題を変えるようにテーブル上へと匠君が集中したため私は口を閉ざす。

その様子に少し気にはなったが、あまり無理をして尋ねるのもどうかと思ったのでそのまま彼の問いに答えた。


「スマホケースを探しているの。だから、気になるものがあったら購入したいなぁって」

「スマホケース? あぁ、ちょうどここにあったぞ。でもこれは……」

と言って匠君が手に取ったのは、デフォルメされた日本人形を模ったスマホケース。

籠には他にも幽霊ナースや幽霊ドクターなどのキャラが見受けられるのだけれども、意外と売れているようで残り各3~5ずつぐらいしかないようだ。

みんなゆるキャラ感覚で購入していくのだろうか?


「……やっぱりなんか美智っぽいな」

「また私を呪いの日本人形扱いして! お兄様のコレクションをこの場でバラしますわよ?」

「はぁ? コレクション? 俺は別に何も……――」

と、匠君は言いかけたのだが、途中でその言葉をだんだんと弱めていってしまう。

何か心当たりがあったのだろうか?

彼が何かを集めているなんて聞いた事がなかったので、ちょっとだけ興味を惹かれた。


「匠君。何か収集しているの?」

「いや、その……まぁ……別にコレクションしているわけではなく、色々あれこれ選んでいたら集まってしまったというか…なんというか……その……」

「近い未来に朱音さんはそれをご覧になる日が来るかもしれませんわ。まぁ、お兄様次第ですが」

そう言って美智さんは私に向かって微笑んだ。






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