第七話 次郎からの依頼 その三
トイレの入り口を指差して立った花子さんにその場に居た一同が視線を向けて緊張した面持ちで息を呑んで耳を傾けていた。
「そう言えば思い出したわ!トイレの入口からチラッと見えたやつ・・・確か狐やったわ・・・この校舎をしばらくウロウロしてたんよ!学校の近くにある稲荷神社の狐やと思うんやけど・・・」
「稲荷神社?・・・・その狐は白い狐だったか?人の姿なら銀髪なんだが・・・」
花子さんがあの日に狐が学校内にいた事を思い出して話していると政宗が珍しく重い口を開いた。
「そうそう!銀髪や!そんな悪意を感じるような妖気は放ってなかってんけどなぁー・・・その狐!アンタと同じ作務衣着てたわ!色はド派手な赤やったけど・・・知り合いなんか?」
「ああ・・・知り合いと言えば知り合いだな・・・」
政宗に聞かれて花子さんが容姿を説明すると政宗は確信したようで少し険しい顔付きをしていた。
「なんや?政宗知ってるんか?」
「はい!そこの稲荷の狐で・・・ハクと言う名の妖狐です。一応昔からの知り合いの弟なんですけど・・・」
花子さんが見たという狐は政宗のよく知っているこの近くの稲荷神社に住んでいるハクと呼ばれている白狐の妖狐のようだった。
「確かに・・・ハクならユウ君を連れ去るかも知れない・・・」
「なんでや?何か思い当たることでもあるんか?」
政宗が壁に手をついて思いつめた様子だったので虎吉が側へ行って顔をのぞき込んで聞いていた。
「あいつ・・・ショタ・・・小学生位の人間の可愛い男の子が好きなんで・・・」
「あー!確かになんか危ない目つきしてたわー!あの狐・・・」
政宗の話を聞いて花子さんが後押しするようにその時の狐の様子を話していた。
「それはもう間違い無さそうやなぁー・・・(苦笑)」
「そうですね・・・容疑者は狐に決まりですかぁー・・・(汗)」
顔を引きつらせながら虎吉と新米刑事の遼太郎が顔を見合わせて苦笑いをしていた。
「俺が行って確かめてきます。」
「ええがな!そこの稲荷やろ?一緒に行こ!」
政宗が一人で先に神社へ向かおうとするのを虎吉は静止して皆で稲荷神社へ向かうことになった。
「花子さん・・・疑ってしまってごめんなさい!僕・・・ちゃんと皆に花子さんじゃ無いって明日クラスの皆に話しますから!ほんまにごめんなさい!ごめんなさい!」
「別にそんなに謝らんでええよ!妖怪なんか怖がられてなんぼなんやからなぁー(笑)そやから!こんな風にフレンドリーな会話をしたことは絶対に内緒にしといてな!」
次郎が犯人が花子さんじゃなかったとわかって必死に頭を何度も何度も下げて誤ると花子さんは嬉しそうに笑って次郎に手を振るとまたトイレの中へ戻ってスゥっと消えてしまった。
そして一同は学校を出てハクが住み着いているという稲荷神社へ向かった。
*****
稲荷神社へ着くと微かに社の奥の方から人間の男の子の声が聞こえて来た。
「誰かぁーーー!出して!助けてーーー!」
「あ!!ユウ君や!!ユウ君の声がします!」
社の奥に進んで行くと突き当りの壁にあの世とこの世の狭間へ通じる引き戸を見つけて政宗が勢い良く開けると男の子が手足を縛られて床に転がって泣いていた。
泣いているユウ君の元へ次郎はすぐに駆け寄って縛られている縄を解いてユウ君と抱き合って無事を喜んでいた。
「ユウ君!!良かったぁー!無事で良かったぁー!」
「ジロちゃん!来てくれたんや!ありがとう~ありがとう~!」
そこに居たのはユウ君だけでハクはユウ君の話では食料を調達しに出掛けていたようだった。
虎吉達がまずはユウ君を家へ連れて帰ろうと社の外へ出ると鳥居の下をコンビニ袋を下げてスキップして鼻歌を歌いながらハクが戻って来た。
「ちょっと!ちょっと!その子を何処へ連れて行くねん!返してくれ!俺の獲物やで!」
「おい!ハク!人間の男の子をさらって来てただで済むと思ってるんか?」
ユウ君をかばうように政宗が前に立って物凄く怖い顔をしてハクを睨んで叫んでいた。
「あ・・・・・政宗さん・・・・あああああ・・・・あの・・・あの・・・」
「このまま大人しくこの子を家に帰すなら今回だけは見逃してやる!その代わりまた人間を困らせるような事をしたら九尾の姉さんにキツくお灸を据えてもらうからな!わかったか?」
ハクは政宗の顔を見て口をパクパクさせて慌てていたが今回だけは見逃してやるという政宗の寛大な言葉に何度も何度も頷いてから頭を深く下げて詫びるとすぐにその場から姿を消してしまった。
その後、遼太郎は鬼岩と言うベテラン刑事に相談してユウ君は何者かに連れ去られて稲荷神社の社の奥に手足を縛られて監禁されていたが次郎がたまたま通り掛かってユウ君を見つけて遼太郎に連絡して無事に保護されたということにしてもらってこの事件はひとまず解決ということになった。
*****
「ユウ君を助けてくれてありがとうございました!これ・・・依頼料です。これだけしか無いけど・・・」
「子供から金は受け取れん!依頼料はサービスや!そや!その代わり今度の日曜に部屋の大掃除するんやけど手伝いに来てくれるか?」
翌日、探偵社へ再び訪れた次郎は今まで貯めていたお小遣いを貯金箱ごと持って来たのだが虎吉は笑ってその貯金箱を次郎に返すと依頼料の代わりに部屋の大掃除を手伝うことを次郎に頼んでいた。
「そんなんで良いんですか?今度の日曜なら何も予定が無いので手伝いに来ます!ありがとう~!」
「来てくれるんか?良かったわー!おおきに~助かるわー!」
次郎が喜んで申し出を受け入れるとニャンゴローは嬉しそうに次郎に抱きついてゴロゴロ言っていた。
そして虎吉達は次郎が帰った後でいつものように『招き猫家』でご褒美の珈琲をち~ち爺に入れて貰ってのんびりと寛いでいた。
政宗は普段からその重い口を開くことはあまり無いのだが、今回は必要に迫られてかなり頑張って喋っていたので疲れ果てて床に伏せてグッタリと伸びていた。
「今回も依頼解決ご苦労様でした。本日の珈琲は温泉パカマラと言って招き猫家自慢の珈琲ですよ!香りも良くコクが他の珈琲よりもしっかりと味わえて優しい丸い苦味を楽しめる珈琲です。珈琲にうるさい方にもとても親しまれているんですよ。フフフ♪」
「うんうん!言われんでもわかるわー!めっちゃこれええで~♪最高やわ~癖になりそうやで(笑)」
ご褒美の珈琲の説明を聞きながら虎吉達はすでにこの温泉パカマラの虜になっているようだった。
もちろんそのご褒美の珈琲をマグボトルに入れてもらってニャンゴローは花子さんの所へ届けて今回協力してもらったことのお礼も兼ねて隅々までピカピカに女子トイレを次郎と一緒に掃除して花子さんにすごく喜んでもらったそうです。
おおきに~七話目読了ありがとうございますm(__)m♪
今回も無事に依頼解決!!
マダラ画伯の挿絵はお楽しみ頂けたでしょうか?
柳乃はこのとっても可愛い挿絵に随分支えられております。
今回登場したショタコンの妖狐のハクはまた別のお話で登場しますよー!
もちろん!花子さんにもまた機会があれば登場して頂きたいです。
招き猫家の「温泉パカマラ」これ!マジで美味しいです(〃∇〃)ノ