第六話 次郎からの依頼 その二
次郎は招き猫家から戻った虎吉と向き合いもう一度名前と学年を告げるとチラシをテーブルに置いて助けてくださいと頭を下げていた。
「とりあえず何があったんか話してくれるか?」
「はい・・・実は学校で僕の友達の山内優君が行方不明になってしまったんです。」
あまりにも久しぶりに探偵社に相応しい内容を次郎の口から聞かされて虎吉もニャンゴローも一瞬背中の毛が逆立っていた。
「ちょっと待ってや!行方不明?!ということは警察もすでにかかわってるんやな?」
「あ!はい!ユウ君がいなくなったのは一昨日のお昼休みにクラスの男子全員でかくれんぼしてた時で五時間目になってもユウ君だけが教室に戻らんかったから先生達が慌てて探して家にも連絡してそれでも見つからんかったから警察も来てました。」
次郎は一息ついてオレンジジュースを一口飲んでまた話を続けた。
「実は・・・ユウ君が消えたのは花子さんのせいかも知れないって皆が言ってるんです。」
「花子さんって?あのトイレの花子さんか?」
虎吉に聞かれて次郎は大きく二度頷いていた。
「ユウ君が消える前に花子さんのいる女子トイレからユウ君の声を聞いた女子がいたんです・・・」
「それで?確かめたんか?その・・・女子トイレ?」
次郎は首を横に降ってすがるような目で虎吉を見つめていた。
「確かめようとクラス全員でその女子トイレの前までは行ったけど・・・やっぱり怖くて足がすくんでしもて花子さんがおるトイレまでは誰も近付くことが出来ませんでした・・・。」
「それでここまで来たということか?警察には話さんかったんか?」
すると次郎は立ち上がって少し感情的に話し出した。
「警察なんて僕らの話なんか全く聞いてくれへんし!花子さんのことも笑って信じてくれへんかったんや!・・・お願いします!僕と学校に来て本当に花子さんがユウ君を消してしまったのかどうか確かめてください!」
「わかった!わかった!調べたる!今日はもう日が暮れるから明日の放課後にしよか?なっ?」
虎吉は次郎からの依頼を受けることを承諾して日も暮れて来たので次郎を宥めすかしてなんとか家へ帰らせた。
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翌日、次郎と約束した通り虎吉はニャンゴローと人の姿になった政宗を連れて学校の女子トイレの前で誰かを待っていた。
「すみません!遅くなりましたー!鬼岩さんに捕まっちゃってなかなか抜け出せなかったんですよー!」
「大丈夫や!俺らも今さっき来たばっかりやで!急に呼び出して悪かったなぁー!ボン!」
息を切らしてやって来たのは虎吉の知り合いの新米刑事の上川遼太郎だった。
昨日、次郎が帰った後で虎吉は警察の関係者にも同行してもらう方が良いと判断して呼んでいたのだ。
「悪いなぁー!なんや行方不明の生徒がこの学校で出たんやろ?それでこの次郎が俺らの探偵社へ依頼に来たからな!一応事件やし、ボンの事を呼んだんや!」
「ありがとうございます!こんな僕を頼ってもらえて光栄です。それで?何かわかったんですか?」
虎吉は黙って頷くと手招きしながら女子トイレへ入って行った。
「次郎・・・とりあえず花子さん呼んでみろ!大丈夫やから!」
「は・・・はい!・・・」
次郎は虎吉に言われてトイレのドアをノックして「花子さんいらっしゃいますか?」と花子さんに声をかけて同じ事を次郎は3回続けた。
『はーーーーーーーい!』
3回目の呼びかけにトイレの中から花子さんからの返事が女子トイレに響き渡っていた。
次郎は震えて固まってしまっていたので仕方なくニャンゴローがトイレのドアを開けてみた。
中には白いブラウスに赤い吊りスカートを着たオカッパ頭の確かに皆が知ってる花子さんに違いは無いが良く目を凝らして見てみると明らかに二十歳はとっくに過ぎたであろう三十路一歩手前の年増女が足を組んで洋式トイレに座ってタバコを咥えてガラの悪い目つきをしてこちらを見ていた。
「あのーーー?・・・は・・・花子さんですか?」
「んあ?見たらわかるやろ?お前もしかして冷やかしか?なめとったらいてまうで!」
ニャンゴローはそうっとトイレのドアを閉めると振り返って虎吉に助けを求めていた。
「虎吉さん!花子さんて小学生じゃないんですか?どう見ても三十路一歩手前の若作りしたおばさんですよ!」
「あーーー?・・・・なんか色々と事情があるんちゃうかなぁー(苦笑)ええわ!俺が話聞くわ!」
虎吉に小声でニャンゴローが中の様子を伝えると虎吉は顔を引きつらせながら前へ出てトイレのドアを開けた。
「へへへ♪忙しいとこ悪いなぁー・・・俺は虎吉言うんやけどな・・・これでも一応探偵なんやけど・・・この学校の生徒が行方不明になったらしくてな!その友達が探して欲しいって昨日依頼に来たんや・・・それでな!もしかしたら花子さんやったら何か知ってるかなぁー思って聞きに来たんや!」
ニャンゴローの言う通り確かに若作りした年増女が花子さんスタイルを崩さずいることに虎吉は半ば感心しながら腹の底から込み上げてくる笑いを必死にこらえて行方不明の生徒のことを花子さんに尋ねていた。
「笑いたかったら我慢せんでええよ!もう慣れたし・・・ずっと後ろ姿でごまかして来てんけど最近私も開き直ることにしたんよ!ただ・・・このスタイルは変えてしまったら誰も私がトイレの花子さんってわからんやろ?結構それなりに私も苦労してるんよ・・・この前も昼休みに男の子が入って来て私を見て笑いながら逃げていったし・・・最近の子供はほんま・・・」
「ちょっと待って!この前?・・・男の子?それやそれ!三日位前の話やろ?」
凄い勢いで喋りまくる花子さんを虎吉は静止すると笑いながら逃げていったという男の子の事を詳しく花子さんに質問していた。
「確かに・・・三日位前やったわ・・・あの後、先生がここに誰か探しに来てたし・・・しばらくして警察が来たりして学校中が騒がしかったから・・・」
「それや!その花子さんを笑った子が行方不明になってるんや!何でもええからおぼえてること教えてもらえるやろか?」
虎吉に質問されて花子さんはしばらく黙って目を閉じて考えていたが何かを思い出したらしく立ち上がってトイレの中から出て入口の方を指差していた。
おおきに~六話目読了ありがとうございますm(__)m♪
やさぐれ年増の花子さん・・・この後活躍してくれるのでしょうか?(笑)
挿絵はもちろん!マダラ画伯さまの力作です(〃∇〃)ノ
今後の展開を楽しみにお待ち下さいませ~♡