自己紹介
ディレクターが司会に向かって手で合図を出している。
「本番いきまーす!」
指を3本伸ばし、3、2、1。ランプが青く点灯する。時刻は午前二時を指した。
『おっはようございまーす! 今日も始まりました。1×1《ワンワン》TV! 本日も大人気動画サイトの生放送でお送りします。今日も私、司会のイエスノがお送りします!』
司会のイエスノ。顔によく分からない仮面をつけ、しっかりとした正装に身を包み、片手にはマイクが片手にはカンペが握られている。
『えー。今日の1×1TVも4人の男女に来ていただきました。とりあえず、番組の説明をさせていただきます』
イエスノはチラチラとカンペを見る。隠す気はないようだ。
『この番組は共通の願いを持った2人の男性と2人の女性が集まり、願いを叶えるという素晴らしい番組です。私たちはその願いのお手伝いをさせていただくということになっています! まあ、簡単に言うと合コン風なカタチを取り、楽しく過ごしてもらうということです。ですが、注意事項があります。私たちはあくまで手助けをするだけです。結果がどうなるかは知ったこっちゃないというスタンスでお送りしますので生放送を見られているお客様は不快な思いをするかもしれません。私の喋り方とかね。なので、それに耐えられるドМな方々はどうぞ最後までご鑑賞ください』
画面はさっきまでイエスノがいた部屋とは違う部屋に切り替わった。
『では、時間も迫っているので巻いていきましょう。本日の4人の参加者はこちらにいる方々! いやはや、今回はイケメンに可愛い子までなかなかそろっていますね。本当にただの合コンで終わりそうです。では、自己紹介をよろしくお願いします!』
イエスノが左奥に座る男性にマイクを渡した。
茶髪に整った顔。立ち上がると背が高いのが分かる。180センチぐらいはあるだろう。服装は派手すぎず、暗すぎず、爽やかなイメージ。
「アキラっていいます。今は大学4年です。就活はしていません。今はダチと遊んでばっかりいます。よろしく」
『へー。アキラさんは大学生かー。その容姿じゃあモテるでしょ?』
「まあ、そうですね。あんまり友達に困ったりはしていませんね。でも、今は彼女はいませんよ」
『言い方がムカつくなぁ。まあ、私も十分ムカつくと思いますけど……いいでしょう。逆にこれくらい余裕を持ってくれると私はやりやすいですね。では次はあなた』
アキラの向かいに座る女性にマイクを差し出した。
髪は茶色、少し丸顔でナチュラルボブのスタイルが可愛さを滲みだしている。背も小さく幼く見える。
「は、はい。えっと、ミヤコといいます。大学2年です」
『おやおや、今度は打って変わって挙動不審ですね。ウサギみたいで可愛いです。この感じだとミヤコさんもオモテになるでしょう?』
「いえ、そのよく分かりませんが声はかけられます。でも、付き合ったこととかはありません。ちゃんと喋れないし……」
『なるほど。でも、モテるか聞いたのに、そんだけ聞いてもいないこと答えてくれたら、喋れないとか説得力ないですけどね。まあいいでしょう。では、君』
黒髪で爽やかな感じの男性は眼鏡をしているせいか、頭がよさそうに見える。身長はアキラよりは高くないが低くもない。175センチ前後といったところだろう。癖なのか、メガネをよく触ってポジションを直している。
「はい。リューヘイといいます。現在は普通の会社員として働いています。歳は26。よろしくお願いします」
『面接か! いや、いいんですけどね。社会人ですから、むしろそれが正しいのに今までが緩かったからやりずらいな。まあ、一番印象はいいよね。うん、視聴者もそう思ってるはずだよ。でも、リューヘイさんの登場でこのメンバーの共通点が分からなくなってきたよ。最後の女性でわかるようになるかな? では、最後の方お願いします』
金髪。大人っぽい容姿に鋭い目つき。スタイルも悪くないが服装が酷い。黒いシャツに部屋着のようなモコモコとしたショートパンツ。バランスが悪いがそんなことより胸がデカい事にしか目がいかない。
「ユイです。よろしく」
『えっ!』
「なに?」
『それだけ? 困るなー。何もわからないよ。スタイルのいい綺麗な美少女ってことしか分からない!』
「それだけ分かったらいいでしょ。他に何か聞きたいことあるの? それと司会さん、胸見ないで、目を見て喋ってくれる?」
『おおう。意外としっかりしてる子だな。見た目はだらしないけど。いや、だらしない身体はしてないよ? うん。私はいいと思う』
「誰も聞いてない。もう、なんか絡みだるいし、早く次進んでくれない?」
先ほどの3人には5分とかからなかったがユイだけ10分いかない程度だが多少多く喋っている。
ユイは現在、ニートの19歳。引きこもり中らしい。
『さあ! ここまでで全員の自己紹介が簡単に終わりました。この後は4人で少しの間喋ってもらい、フィーリングが合ったもの同士で別々の部屋に入ってもらい、願いを叶えてもらいます。勿論、叶うかどうかは自分次第、選んだ相手次第。では皆さんに聞きます。あなた方の共通した願いとは何か、声を合わせていってください!』
4人は目を合わせ、アキラが合図を出し、合わせるようになったらしい。
『では、あなた達の願いはなんでしょーか?』
「俺たちの願いは……」
「「「「死ぬことです」」」」