表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

 イムハンでは、皇女が継承権を持ち、結婚せずとも帝位につける。それはまだミルヴァルに居た頃、学んだこの国の知識だった。現在陛下には、娘は美鈴皇女しかいない。当然本来の皇位継承者第一位は華亮だ。でも、あの皇后がそれを許すはずがない。鳳潔皇后の陰険そうな目つきを思い出しながら、華亮が女子と知ってしまったら・・・と私は戦慄した。

 しかし、こうしてもいられない。このままだと華亮の熱は上がってしまうだろう。

「湯にはまだ浸かっていないのね・・・」

 侍女に湯を持って来させると、私は華亮の身体をまず温めることにした。

「あったかい・・・おかあ、さん・・・?」

 華亮の言葉に目が覚めたのかと一瞬私はぎくりとした。さらに驚いたことに、華亮は髪まで染めていた。私たちの国のブライトカラーの髪から、イムハンのダークカラーへ。

 亜麻色の髪で眠る、華亮の顔に叔母の面影が重なり、これも母親の愛情だったのだと改めて思った。この子が、イムハンで恙無く生きていくための。

 それにしても、この幼い身体に、なんて秘密を抱えてきたのだろう。

 染料を探してもう一度髪を黒く染め直し、着替えさせた。途中でもし華亮の目が覚めても、私の心はとっくに決まっていた。

 これからは、私が華亮のお母さんになって、守ってあげる。

 私にとって、華亮もまた生きるよすがになった。もういつまでも、少女のままではいられない。華亮を守るためにも、イムハンの妃としての道を歩むしかない。

 私は華亮の看病のため、しばらく華亮の部屋で食事を取ることにした。あの玄峰という臣下が、気を利かせたのかよく果物などを送ってくれるようになった。公務で会った時、私は玄峰に声をかけてみた。

「いつもありがとう、華亮も喜んでいます」

「恐れ入ります。華亮さまのお加減は」

「良くなっています。いずれ彩露殿にも顔が出せるでしょう。ところで、あなたはミルヴァルの言葉を話せる?」

「いいえ、まさか」

「前にあなたとよく似た声の人に、ミルヴァル語で話しかけられたことがあるの。婚礼の旅の途中で」

「お人違いですね」

 玄峰は柔和に微笑んだ。「私は一度もミルヴァルに行ったこともなく、また淑陽様にお会いしたのは陛下の婚礼です」

 深々と礼をする姿を見て、三年前の記憶もおぼろげになり、私は自室に戻った。やはり、人違いだったのだろうか・・・?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ