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沈黙の星  作者: 森野
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また、あした

 何もない部屋で、天井を見つめる。見慣れた景色がそこにはあった。毎日、朝と夜に見上げた天井だ。なにも変わらない。いつも通りの。

 きっと僕がここからいなくなっても、この天井はこのまま変わらずに世界を見下ろすのだろう。僕のいない世界を。違う誰かが暮らす世界を。

 そっと、壁に触れる。ひんやりと、冷たい感触がした。まるで、ここを去る僕を責めるように。


 外に出ると、空気が痛いほどに冷たかった。

 見上げると、星のない夜空。

「この景色ともさようなら……か」

 どこにでもあるような住宅地の一角。滑り台しか遊具のない、小さな公園のベンチに腰掛け、僕は呟いた。

 公園の入り口で買ったコーヒーは、僕の冷えた手を温めて温くなる。そうして温くなったコーヒーはいつもより苦い味がした。

 まるで僕が触れたもの全てが冷たくなるような錯覚。

 見上げると、ちょうど月が雲に隠れるところだった。


 カン、カン、カンと、遠くで電車が過ぎる音がする。

 きっとあの電車は明日もこの時間にここを通るのだろう。その次の日も。そのまた次の日も。

 僕は寂しさのあまり、電車にまで嫉妬した。それを自覚して、溜息をつく。

「僕の故郷は、ここだよ……」

 次にまた生まれてくることがあったとしたら、またここがいい。


 そう思って、僕は夜空に叫んだ。

 それは僕の後悔の叫びだ。

 空は海よりも広く続いている。

 だからきっと、いつか流れて届くはずだ。

















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