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想いは現実に
街のアリーナから聞こえる歓声が、遠くでこだまする。トノは路地裏の影に身を隠しながら、静かにその音を聞いていた。刻印保持者たちの戦いは、まるで別世界の光景のように思える。――俺は、ここにいても関係ない人間。
視線を街の建物に移す。壁面には、刻印を持つ者たちの痕跡が無数に残っていた。壁の亀裂、粉々になったガラス、落書きのように残る力の跡。「みんな……すごいな」
だが、羨望でも嫉妬でもない。それよりも、漠然とした違和感が、胸の奥に芽生えていた。「俺だけ……普通なんだな」
手のひらを開いて見つめる。刻印はない。でも、何かがずっと自分を見ているような感覚――気配のようなものが、微かに肌をなぞった。
トノは小さく息を吐き、石畳に座り込む。「……俺、本当に何もできないのか?」
そのとき、風が通り抜けた。落ち葉がひとひら、ゆっくりと宙を舞った。目を凝らすと、風の流れがわずかに歪んでいる――ような気がした。
トノはその感覚に手を伸ばすことも、言葉にすることもできなかった。ただ、胸の奥で、知らない力が目覚めかけている予感だけが、静かに波打っていた。
「……いや、きっと気のせいだ」そう呟いて立ち上がる。しかし、知らず知らずのうちに、次の何か――自分の力に関わる出来事へと歩を進めていた。




