伊豆循吏伝
常磐林蔵様が連載されている「宗盛記」の二次創SSです。
お楽しみいただくには「宗盛記」の知識が必須となります。
「読んでおいてほしい本編の話数」は下記となります。チェックいただければ幸いです。
第3章 伊豆守、受領
宗盛記0068 平治二年改永暦元年一月 から
宗盛記0105 応保元年十二月 帰京 まで
本作は、元原稿をAIで漢文読み下し調にしています。
また、史伝の部分はほぼAIに書かせました。
応保元年十二月十日 国衙付近
夜明け未だ至らず、寒風烈し。
国衙の前に、民、三々五々として集まる。
これ、誰かの号令にあらず。
また、約したる集まりにもあらず。
ただ、何かせずにはおれぬとの思い、各々をして足を運ばしめしなり。
民、国衙の門前より街道に沿い列を成す。
道行を妨げぬよう、自然と間を置く。
乱るる者、一人もなし。
やがて朝日昇り、四方、白む。
国衙の門、開く。
護衛の武者、旗を捧げて出づ。
赤地に、白の半円。
赤は平家の色、半円は宗盛が紋なり。
続いて、軽装の若武者、馬上に現る。
これを見て、列より嗚咽、洩る。
「宗盛様」
誰ともなく声、上がる。
堰を切りしがごとく、呼ぶ声、泣く声、叫ぶ声、交じる。
地に蹲る者あり。
手を合わせ、拝む者あり。
されど、列を乱す者なし。
道に出づる者、またなし。
後方に、車列、続く。
常に宗盛と共にあり、資材を載せ、施しを運びし馬車なり。
行列、国衙の門を出でしとき、河津祐泰、声を張り上ぐ。
「平宗盛様の前途を祈願し、唱和す」
「曳、曳」
祐泰、拳を突き上げて叫ぶ。
「オオオオオオオウウウウウゥゥゥゥゥ!」
声、大地を揺るがす。
民、皆、これに和す。
宗盛、馬首を巡らせ、河津を顧みて深く一礼す。
民、これを見て、また哭す。
――飢ゆる民に食を与え、職を与う。
――荒れし地を、実り多き田畠となす。
――住処なき者に住居を与う。
――道を拓き、往来を易くす。
――灯台を設け、海路を安んず。
――薬師如来の導きにより、疫病を封じ、民を安んず。
これ、すべて宗盛が功績なり。
行列、すでに動き始む。
しかれども、民の声、やまず。
哭する声、呼ぶ声、道の彼方にまで満つ。
宗盛、これを聞き、馬を止め、
身を巡らして民衆を顧み、静かに曰く。
「吾、伊豆を去る。
されど、伊勢平氏ある限り、伊豆は、なお我らが庇護の下にあり」
これを聞き、民、声を失う。
老、地に伏して曰く。
「来年も生きて、作物を作ること、叶う」
女、子を抱きて曰く。
「この子、春を越え、健やかに育つこと、叶う」
また、言葉なき者、多し。
ただ頭を垂れ、地に伏すのみ。
誰も去るを止めず。
誰も道に出でず。
宗盛、馬を進む。
車列、従う。
民、終に追わず。
列、ついに乱れず。
――『平宗盛 伊豆循吏伝』より――
平宗盛、伊勢平氏の一門なり。
伊豆国司として在任すること、二年。
その治、苛ならず。
その法、煩わしからず。
しかれども、国は富み、民は安んず。
宗盛、農を勧め、工を興し、商を通ず。
山海の利を尽くし、余すことなし。
遊民・流民を集めてこれを用い、老幼に至るまで、その力に応じて役を与う。
また、疫病流行の折には、民を隔て、病者を養い、拡がるを防ぐ。
当時、これを怪しむ者あり。
されど、後に至りて死者少なく、国中安堵す。
宗盛、恩を施すに驕らず。
徳を示すに誇らず。
賞を語らず、功を記さず。
その去るの日、民、これを惜しむ。
しかれども、道を塞がず、車に縋らず。
これ、宗盛が民をして自立せしめたる証なり。
古より、良吏の去るに、民、号泣して道を遮ること多し。
然れども、伊豆の民は、ただ列を成し、静かに送るのみ。
史官、これを評して曰く。
「民、泣けども乱れず。
送れども、止めず。
これ、徳の極みにして、循吏の至りなり」
後年、天下乱れ、平氏盛衰、世の知るところとなる。
されど伊豆においては、今なお宗盛の名を呼ぶ者あり。
田を指して曰く。
「これは、宗盛様の田なり」
道を指して曰く。
「これは、宗盛様の道なり」
人、政を忘れず。
これぞ、真に治めし者の跡なり。
伊豆の民を振り返る宗盛くんのイメージ
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弓と甲冑は不要ですけれど、富士山と烏帽子がポイントが高いです。




