第14話中編2:信頼できるライフル
第14話中編2:信頼できるライフル
フォートブラックに着いてから、1夜明け、まずは1km狙撃から行われる運びとなった。
狙撃担当のロスタリアはバレッドM82を眺めながら悩んでいた。理由はおそらく、12.7mm弾という本来狙撃用ではない弾で、どこまで精度を高められるか、不安なのだろう。
「ロスタリア、これ。元々提案しようと思ってたけど、時間が無くて、言えなかったけどバレッドMRADだ。これなら338ラプアマグナム弾を使うから命中精度は高いはずだが、射程はやや劣る。諸刃の剣かもしれないけどどうする?」
ロスタリアは長考する。使い慣れてる方が、命中精度が高い方か……そんな表情が顔に出ていた。
「スリー様、使い慣れてるM82を使います。ですがたった1発の勝負です。失敗したらすみません……」
「気にしないで、CQBと人質奪還で挽回するからさ」
「ありがとうございます……では、少し弾頭を磨いておきますね」
「分かった。外しても僕たちがフォローするから気軽にね」
ロスタリアを後ろから見ていたが、真剣にホコリを取り除き、拡大鏡で傷すら確認する。
すると準備が整い、砂塵が舞う中で5チーム、各1名が狙撃体勢に入る。しかもスポッター無しだ。ロスタリアのスコープはレイノーツに頼み込み風速や地軸の傾きなど、あらゆる弾道学的要素が表示されるスコープで、着弾位置も概ね分かる。
レースガンが鳴ってから2秒以内に撃たなくてはならない。
静かな荒野で、冷たい風が指を震えさせ、ハワイ旅行を遠のかせる。
ビィィィ!!レースガンの音が鳴ると即座に全員がズドンっ!と轟音と砂煙をあげる。ターゲットシートは1センチ間隔で点数差があるため、僅かなミスも許されない。
そして……
「1位!スリザイア傭兵所属ロスタリア!100点!」
審判の声と共に、次は僕たちの番だと心に言い聞かせる。だがその前に……
「ロスタリア、お疲れ様」
彼女を抱きしめて、頭を撫でる。
「ありがとう……ございます……スリー様」
少し涙声になりつつも、休憩所まで肩で支えながら、連れていく。
次はCQB戦闘だった。事前の作戦通り希とエミレーナが後方奇襲班、ただロスタリアは休憩でレイノーツも射撃が苦手なので、他メンバーは前面から敵を狩る。広いホテルを想定しており、5チームでも狭いとは感じなかった。
そのまますぐに作戦開始され、他のチームが激しくブリーチングでドアを吹き飛ばしていたが、こっちはレイメスの混合液爆薬で、金属反応で僅かな音で、ドアノブを破壊する。一応説明するがもちろん実弾では撃ち合わない。空砲と共にレーザーが放たれ、当れば死亡という感じだ。僕たちのチームが足音を立てずにゆっくりと進む。
すると近くから笑い声が聞こえる。罠だ。
演習専用ののグレネードを起爆の瞬間まで待ち、投げてドンッ!と爆発音すると、ピィーという戦死判定が鳴り響く。
それと同時に囮に釣られて、銃撃戦にしようとしていた連中が、こんな状況にも関わらず、作戦面で喧嘩している。
インカムで希に指示を送る。
「希、やれ」
「かしこまりました」
しゅっ!しゅっ!と風を切る音がここまで聞こえ、希たちと合流する。
「他に狩った敵は?」
「2チームに奇襲をしかけて、殲滅しました」
やはり、希は化け物クラスの戦闘力がある。特殊部隊の為の訓練も受けさせたいと、頭の片隅に入れておく。
僕は分かった。と言った後にエミレーナに聞く。
「通信機の反応は?」
「ちょっとずるい手段とは思うけど……無線の位置は……後ろ!!」
「全員壁を盾に!!」
その瞬間、ズダダダダーーンと激しい銃声とグレネードが投げ込まれるが、ラーヴェルトがグレネードを蹴り返して、敵に損害を与える。
「被害甚大!撤退!撤退!」
これを待っていた……!
「レイメス!バックにしかけた!演習爆薬を!」
「りょーかい」
彼女はウキウキしながら、スイッチを押す。そして、残り1チームとなる。
残りは例の社長らしき人物がいるチームのはずだが……
僅かに、サブマシンガンが見えた瞬間だった。僕は希、ラーヴェルトはソーサーさんとエミレーナを引っ張り、壁に隠れる。
その瞬間サブマシンガンの割には重い銃声、恐らくは増強弾だろう。レイメスが戦死判定が下り、自分の無力さに嘆く。
「スリザイア様、敵はおそらく精鋭PMCワールドアタックかと。そしてそこには……」
「あぁ、社長候補の1人がいる……」
「ソーサーさん!軽機関銃はフル装填ですか?」
「えぇ、100発を数秒なら持たせられるわ」
これは賭けだ。失敗すればハワイ行きが遠のく。だが、このままでは、技術力で負ける可能性がある。だからゲーム盤をひっくり返す。
「ソーサーさんが全力射撃をしてる内に希が敵に突っ込んで、ナイフとかで切って、ヒット判定取れそう?無理なら2人とも断ってもらって構わないよ」
「私は旦那様の言う通りに♡」
「私はお兄様の為なら……10秒時間を稼いでください」
希は真剣な瞑想を初め、呼吸回数も恐ろしく減る。その間にエミレーナと僕とラーヴェルトで牽制射撃を続ける。グレネードを投げてこないのは、恐らく僕達がそれに慣れてると判断したからだろう。
10秒経つと希の瞳は普段の凛々しさ優しさではなく、人を狩る眼をしていた。
「我が名は希。武家の血を引くものとして主の命令に従う」
「ソーサーさん!」
「任せて!旦那様!!」
ソーサーさんが軽機関銃を連射してる間に明らかに匍匐前進に近い高さで、希は壁から滑るように相手の前に出る。さすがに想定外だったのか。次々と戦死判定が鳴るが希が軽傷判定を受けて撤退してきた。
「すみません、小太りの男性を逃しました……」
「彼は僕とラーヴェルトで狩る。ラーヴェルト、今から少年少女の特殊部隊の意地を見せるよ!」
「命令通りにこなす。そしてそれ以上の意図の深さも知る。特殊部隊の基本です」
そして僕達はこのフィールドの全体図を覚えてるため、挟撃を仕掛ける。僕の後ろにはエミレーナ、ラーヴェルトは軽傷の希を前衛にする。残酷かもしれないがこれが実戦なら最適解だろう。そんな擬似戦死体験ができる限りなくリアルに近い戦闘も終幕だ。
第14話中編2終
こんばんは!黒井冥斗です!いつもご拝読ありがとうございます!そしてもうすぐ週末、社会人や学生の皆様、寒い中本当にお疲れ様です。黒井は現在療養中の身ですが幼女戦記を読んだ際に小説を書きたくなって、何を書こうか悩んでる時に大好きな吸血鬼さんの抱き枕が目に入り、前作の吸血鬼の執事シリーズを執筆致しました。
さて、このレーザーでの撃ち合いはバトラー演習とも呼ばれており世界各国の軍や警察特殊部隊が行っているそうです。もちろん自衛隊でも行われてるそうですが、あくまでもネットで聞きかじった情報によると弾無限になったり、無敵判定になったりと電子機器特有の問題もあるとか。今では無いと信じたいですね。
そして第14回ネット小説大賞へ投稿する作品も少しずつですが進んでおります。ちなみに脳を使いすぎて眠る事も出来ない時はドラクエで福引きしてるかプラモデル作ってますね。話が長くなりましまた、お付き合い頂き、ありがとうございます!それではいい夜を!




