第14話前編:PMC練習試合の賞品目指して
第14話前編:PMC練習試合の賞品目指して
帰ってきて、昨晩のことをみんなに伝えるとハワイ旅行の為に血眼になって、練習に励んでいた。するとレイメスが「兄様、ちょっといい?」と聞かれ、着いていくと、庭のCQB戦闘(近接戦闘)練習のドアの前だった。
「これ鍵が掛かってるか、確認してもらえる?」
「う、うん」
僕はドアノブを捻るが開かない。しっかり施錠されている。
するとレイメスは2本の注射器を取り出して、鍵穴に注射し、離れて!と言うとボフッ!くらいのほとんど気にならない音が鳴るとドアノブは溶けるように壊れていた。
「凄いよレイメス!どうやったの?」
「簡単だよ、爆発混合液と金属の化学反応。爆発は極力押えてるから誰も気がつかないよ、兄様に潤沢な研究資金を出してくれた産物かな。ありがとう!」
「お礼は僕の方だ。とても強い味方ができた。感謝する」
全体的に全員の練度が一段階上がった気がしながら、国際空港の金はかかるがほぼ無期限で停められる駐車場にソーサーさんの車を停めて、各自爆薬や銃火器、刃物などを厳重なケースに入れて、特別第4ターミナルへ向かう。
「スリザイア様ご一行ですね。問題ありません。国際軍事協定サミットのジェット機にお乗り下さい。武器は貨物室へ」
「ありがとうございます」
一応内部点検もされたが、問題無しという事で、飛行機を見るとB-747の改造型だった。
緊張しながら乗り込むと、アメリカ大統領政府専用機エア・フォースワンみたいな豪華な内装に改装されており、飛行機を間違えたと思ったが、CAさんが駆け寄る。
「スリザイア様、ご混乱でしょうがこの機体で合ってますよ。とりあえずお食事とお飲み物をご用意させて頂きました」
「ありがとうございます。ですがなぜこんな豪華な機体を?」
「国際軍事協定サミットには政府高官や軍企業のトップ、権威のある国際人権団体が乗る機体なのでこういうのが4機しかなくて……」
成金なのか、業務効率化、なのか微妙に疑問を思いつつ、食堂に案内されると、飛行機とは思えないロングテーブルに豪華な食事とぶどうジュースが並んでいた。そして金木犀のお香も焚かれており、自分達が大統領になったとすら思える。
食事は白身魚のソテーとコーンスープ、複数種のパン、そしてコピ・ルアクのコーヒーだった。ちゃんとメニュー表の紙が、一人一人に置かれており、僕達は早めの昼食を摂る。
そして僕以外はファーストクラスのシートでゆっくりして、僕は執務室に案内される。
そこにはレイさんとアイリンさん、眼帯を着けた初老の男性がいた。
「は、初めまして、スリザイアです」
「貴殿のことは聞いている。もはやPMC界隈で知らぬ者はいないだろう。アイリン、コーヒーを入れてくれ」
「分かったわ部長」
すると、レイさんが書類を渡してくる。そこそこ厚めだ。
「今回参加する5チームのデータだ。2チームは民間人、残りは小中規模のPMCからだが、スリー達のチームが勝つと部長や俺も思っている」
参加するチームデータを見終わると次に競技だった。1km狙撃、CQB戦闘、人質奪還の三種目で、レイメスの例の解錠爆薬が役立つと確信する。1km狙撃もロスタリアなら大したことはないだろう。
「スリザイア君に1つ問おう。傭兵の義務とは?」
僕は少し考え、すぐに答えを出す。これが僕の信条であり、役割だからだ。
「クライアントの依頼を完璧にこなした上で、無実の民間人を殺さないことだと考えます」
部長さんは驚いたようで、その義務感を大事にしなさいと言われ、僕もファーストクラスのシートで横になる。
少し緊張したのか、強い眠気で少し寝る。
夢の中でお父さんとお母さんに会った気がしたが、すぐに目が覚め、腕時計を確認するとちょうど夕食の時間だった。
CAさんがローストビーフとツナサラダとパエリアを用意してくれて、どれも香りも味も良く、食べ終わるのがもったいないとすら思えるくらい美味しかった。
あと五時間で着陸する予定のため、部長さんのご厚意で会議室を貸してもらい、全員で集まる。最初は軽い雑談で夕食の話とかだった。そのまま仕事の話へと移行する。
「ロスタリア、行けそう?」
「大丈夫です。スリー様。たった1発の勝負にハワイ旅行を賭けましょう」
「よし、その意気込みだ!」
次にCQB戦での立ち回りだった。すると普段大人しい希が挙手する。
「お兄様、裏口も使ってよければ皆さんが交戦してる間に私がインク付きナイフでヒットを取れると思います」
「よし、なら刃物は任せたよ」
「エミレーツ、君のメインは航空誘導なのは知ってるけど、CQB戦で希を後方から支援してもらえる?」
「りょーかい!雇ってもらってるのに働けないのは辛いからね。SOPMOD M4も近接戦仕様にしてあるから大丈夫だよ」
「ありがとう。助かるよ。他のメンバーは僕とラーヴェルトとでポイントマンして先行、CQB戦では、ロスタリアは拳銃で戦うんだよね?」
「はい、デザートイーグルを使います」
これまたパワー系な……
「2丁をフルオート改造してます」
本当にパワー系だな。
「ロングマガジンで20発装填してます」
「じゃあロスタリアは後方警戒。回り込まれる可能性もゼロじゃないからね。レイノーツは……今回電子戦がないからのんびり過ごしてもらえる?」
レイノーツは嬉しそうに休暇だァ!と喜ぶ。まぁ、最近頑張ってくれてたしいいかなと全員が思った。
「人質救出作戦はレイメスの混合液体爆薬でドアを静かに破壊後に僕とラーヴェルトが突入して、殲滅陣形で敵を片付ける。相手は生身の人間だが万が一の誤射そして、人質に当てて失格にならないように安全第一で。異論は?」
沈黙が肯定を意味する。
「それじゃあ、たっぷり英気を養おうか」
モニターの裏側では、2人の男女が話をしていた。
そしてその話を裏で聞いていたのはレイとアイリンこと私であり、初めての出会いから成長を感じながら、期待していた。
「ねぇ、レイ。あの子達優勝はほぼ確定かしらね」
「だなぁ……これがギャンブルなら全財産賭けるのに……」
「あなたは1度ギャンブルに対する価値観を見直した方がいいわよ」
その後二人でモニター後ろで喋りながら、大の大人が子供達に蹴散らされるのはそれはそれで見物だと楽しみにしていた。
第14話前編終
こんばんは!黒井冥斗です!いつもご拝読ありがとうございます!最近夕方頃に眠くなってしまい、昼夜逆転気味です…治したい反面無理をして、反動が強く出るのも怖いですね…
ショートスリーパーになったり、ロングスリーパーになったりと自分の体はワガママな様です。今も瞼が重たいので寝落ちしてしまう前に投稿させていただきます。それでは皆様、いい夜を!




