第13話:PMC同士の演習試合のお誘い
第13話:PMC同士の演習試合のお誘い
今日はアイリンさんからちょっとお話がしたいということで、また例の如く、深夜に抜け出そうとしたが、気配察知が鋭いラーヴェルトに見つかり、共にBARに行くことになった。
郊外のBARは夜間は盛り上がっており、いつものジャズ音楽や他の客の酒のグラスの氷が鳴らす音など、そしてフルーツ酒の香り、正直自分はこの雰囲気は好きだ。
「ラーヴェルト、本当に良かったのか?」
「私もアイリン様と色々お話したいので」
「そうか」
店の奥に進むとカウンター席で二人でウィスキーを飲むレイさんとアイリンさんがおり、すぐに手を振ってくれる。
「あらぁ?この前の彼女さん?」
「スリー!お前、こんな美少女と付き合うのか!……すみません!最高級のワイ……」
ボコっとレイさんは殴られ、未成年カップルに酒を飲ませるなと言ったでしょ。と言う。
「すみません、店員さん。アイスコーヒーとコーラ、それからモッツァレラピザを1枚」
かしこまりました〜という声が聞こえ、僕たちも席に座る。
「ごめんね、急に呼び出しちゃって」
「いえ、お構いなく。本当は僕1人で来るはずが、彼女に見つかりました……」
「ラーヌちゃんね、覚えてるわ。スカーレットコブラの最年少入隊記録保持者で、一人で一個小隊並の戦闘力があるとか」
ラーヴェルトは照れながら答える。
「噂に尾びれが着いただけですよ……確かに言われたことは出来ますが……」
レイさんはウィスキーを飲みながら、喋り出す。
「全く、スリーの下には優秀な美少女が多くて羨ましいよ……俺なんて、突然組まされるおっさんか、このおばさ……」
「もう二度とお金貸さないわよ?」
「とっても素敵なお姉さんがいるから幸せだ」
僕もラーヴェルトも笑っていると、ラーヴェルトにアイスコーヒー、僕にはコーラが置かれ、店員さんがピザはもう少しお待ちくださいと言ってくれる。
「それで、アイリンさん、話とは?」
少々長くなるんだけどねと言ってから伝えてくれる。
「私達の所属する世界規模の大手PMC(民間軍事会社)アークランド・セルディアが、戦争能力強化のために民間人や傭兵を無料で技術講習を受けさせる事になったのよ。もちろん、それだけだとメリットは無いから、予備社員枠にはなるけどね。ちなみにチーム対抗戦もあるんだけど優勝賞品はチーム全員分の高級ホテルのハワイ旅行よ。しかも2週間!」
ラーヴェルトの目が輝く。
「スリザイア様、受けましょう。チームの良いリフレッシュになるはずです!」
「本音は?」
「最高級ホテルのベッドでゴロゴロしながら、フルーツジュースを飲みたいですね」
「素直でよろしい」
すると、焼き立てのチーズの香りがする、少し焦げ目の着いたピザが出される。
「さぁ、二人で食べて。育ち盛りなのに夜間に呼び出しちゃって悪いから、お姉さんの奢りよ」
僕が申し訳ないと言う前にラーヴェルトはいただきます!と言い、食し始める。
「とても美味しいです!ありがとうございます!アイリンさん!」
「じゃあ僕もいただきます」
想像以上に濃厚なチーズの味が口いっぱいに広がり、自分が嫌いな焼けたトマトが入っていたが、全く嫌にならず、むしろピザの美味しさを引き立ててくれてるようだった。
「それでどう?スリー君」
「ぜひ、受けさせていただきます。開催地は?」
「アメリカのフォートブラックよ」
グリーンペレー(米陸軍特殊部隊:敵地に潜入し、反抗勢力を育てるのを得意とする)の本拠点で、一説にはデルタ(デルタ分遣隊とも呼ばれ、対テロ戦争戦の世界最強とも言われている。他国の特殊部隊との軍事演習も多い)も訓練に使ってるとか。流石アメリカの資本が注入された巨大PMCなだけはあるな。
「武器の輸送はどうしますか?」
するとレイさんが酒でのどか酒焼けした声で話す。
「あー、それについては俺から話すよ。俺は一応PMC所属だが、国際軍事協定サミットの監察官でもあるんだ。だからそこに話を通しておくよ。やらないとは思うがよ、飛行機の中で銃乱射するなよ?」
やりませんよ。と僕は笑いながら答えて、国際軍事協定サミットの監察官だったとは……正直驚きが隠せなかった。
「レイ様、国際軍事協定サミットと言いますとやはり、PMC監査ですか?」
「それも大きな仕事だが、国際軍事協定における、違反の監査もある。俺が拳銃しか愛用しない理由は、目立ちにくく、使い勝手がいい。そういう事だ、海外を飛び回るからな。そこのお姉さんと一緒に。本当ならラーヌちゃんみたいな可愛くて、優秀な美少女と……」
するとアイリンさんのまたもや、イタズラ心が出る。
「そう、なら私は必要ないから今まで貸した5万8000ドル返してもらおうかしら」
「俺はこの最強のお姉さんと旅をするのが好きだ」
相変わらず、レイさんらしいな。と思い、時刻を確認すると既に午前二時に迫っていた。
「開催日はいつですか?」
「2週間後よ。飛行機は前日に手配して、ここの国際空港の第4特別ターミナルから入れるようにしておく。銃器や爆弾も自由よ。スリー君なら誤射や誤爆はしないと思うから安心してるけどね」
「信頼していただき感謝します。それでは、僕達はこの辺で」
「えぇ、2週間後楽しみにしてるわ」
「スリーもラーヌも風邪引くなよ〜」
2人の少年兵を見送ると私達は少し暗い雰囲気になる。
「子供を戦争に使う時代……来て欲しくなかったわ」
「同意だ。国際軍事協定サミットでも議論されてるが少年兵の削減は少年兵の生活に直結するから安易に行えないのが悩みらしい」
「あら、ちゃんと仕事するのね」
「当たり前だろ?俺とお前もデルタ時代仲良くやって、それ以降もこうやってお前を守ってるんだからよ。店員さん!ウィスキー1つ!」
ほんとよく飲む人。でも実は優しくて、ムードメーカー。そして真面目、良いパートナーね。
第13話終
こんばんは!黒井冥斗です!本日もご拝読感謝します!早い時間になって申しないです…実は第14回ネット小説大賞に出す為の作品を手掛けており、キリのいいタイミングで投稿したくて、させて頂きました。この少女、僕が買いますシリーズが終わり、前述の大賞の作品が完成するまで少々集中期間として投稿をお休みするかもしれないです。と言っても長くて3週間から1ヶ月弱くらいですかね。元々執筆速度は早いので体調を壊さない程度で頑張りたいと思います。もしよろしければ感想や高評価を頂けるとモチベーションが上がるのでよろしくお願いします!それではいい夜を!




