第11話:私の神様。サポートAI「アルファ」
第11話:私の神様。サポートAI「アルファ」
この日朝からレイノーツは趣味のFPSゲームの悪口を朝食の場に持ち込んでいた。
「でさ、聞いてくれよ!ラグが2秒もあるんだぞ!兄っ!回線会社変えてくれ」
いきなりとんでもない事を言い出すなぁと思いながら、ロスタリアお手製エスプレッソの心和む味に神経を落ち着かせる。
「実は、僕は別の複数の通信回線会社使ってるんだ。リスクのヘッジのためにね。そこでも通信回線は遅くなってたよ。15分の動画を見るのに読み込みに2分かかるレベルでね」
するとロスタリアが笑顔で答える。
「なるほど。深夜に、真っ暗な部屋から可愛い女性の声が聞こえたのはそういう事でしたか」
場の空気が一気に凍る。
「旦那様?私、浮気は良くないと思う」
「お兄様、悪い物は切って捨てるべきです」
他のメンバーに押される前に言い返す。
「僕が見ていたのは最近有名なバーチャルアイドルの歌配信だよ!僕だってそりゃ……他には違う子も見たいし……」
続いてレイノーツが話を元に戻す。
「他の通信回線にも問題があるなら、恐らく、何か大きな動きがあるはずだ。調べてくる!」
ロスタリアが焼いたメロンパンをかぶりつきながら、コーヒーカップを持ち、部屋へと走る。
「レイノーツさん!食べて走るのは良くないですよ!」
「まぁ、いいんじゃない?ロスタリア、最近レイノーツも頑張ってるみたいだし、それにこの複数の通信回線の遅さは妙だ」
その後は僕の朝食を妨害するかのように皆からどんな配信見てたの?とかどんな見た目してるの?などと聞かれ、朝から疲れきって、ソファにぶっ倒れる。
「はぁ……みんな僕大好きかよ……」
「当たり前ですよ」
ロスタリアがしゃがみ、静かに視線を合わせてくれる。
「皆スリー様に助けられましたから」
ロスタリアが笑顔を見せてくれて、疲れが和らぐ。
「ありがとう、ロスタリア。ちょっとレイノーツの様子を見てくるよ」
「はい……私が先程通りかかった時はすごい怒鳴り散らしてましたよ」
分かった、覚悟しておく。と言い、レイノーツの部屋に立つ。するととんでもないカスタマーハラスメントになりそうなレベルの文句と覆せない事実を元に彼女は、怒りを表しにしていた。
「だーかーら!A社もB社もC社も同じだって言ってんだろ!なにぃ?これが平常運転?だったら大和皇国の通勤ラッシュの時間帯は駅員と客で戦闘が起きてるな。なに?訴えるだと?この、仕事くらいしっかりしろ!」
バシン!とスマホを叩く音が聞こえる。
「レイノーツ怒り気味だね……」
「だって、この家から北西に15km地点で物凄い量のデータ通信量をしてるのを突き止めたから何してるの?って聞いたら顧客情報がどうのって言い出して、なら、公平なサービスの提供は?と聞いたら平常運転ですって、兄!こうなったら直談判だ!ラーヴェルトも連れて行くぞ!」
もうこうなった、レイノーツは止められないので、ラーヴェルトを起こしに向かう。彼女は空いてる時間があれば昼寝が多いので静かに扉を開けると、全身鏡の前でゲーム出て来そうなキャラクターのコスプレをしながら写真を撮っていた。彼女にそんな趣味があったとは……
するとレイノーツがパシャっ!と1枚撮って、「似合ってるよラーヌ」と答える。
「はっ!?いつからそこに!?スリザイア様……あまりバトルメイド衣装見ないでくださいよ……」
銀髪ロングのダイヤモンドのような透き通った水色の瞳を持つ彼女が、顔を真っ赤にしてるを見て、僕も1枚撮る。
パシャっ!
「スリザイア様!恥ずかしいって分かって撮ったでしょ!?怒りますよ?」
すると怒られる前にレイノーツが本題を話す。
「確かに画像のアップロードに時間がかかるのはコスプレ界隈では致命的です。調査しましょう」
そして3人で15kmを、荒野の中、時に砂嵐、時に真冬の冷たい風に晒されながら、目的地に着く。
そこには正方形の明らかに地下室がありますよという形の建物と警備兵が2名いた。一応僕達はフル装備できたが……
するとレイノーツが先走って、警備兵に声をかける。
「どうした?チビ?極度の迷子症か?」
「お前らこそ、ここで複数の通信回線会社を圧迫するほどの通信で何をしている?」
僕とラーヴェルトが割り込む。
「すみません、うちの家族が……あの、通信回線の独占は法令面で見ても」
「ガキはスっこんでろ」
警備兵の言葉の後に銃を向けてくる瞬間に手で弾いて、ラーヴェルトはサイレンサー(消音器)付きの拳銃を脳天に叩き込む。
「貴様ァ!」
僕は正当防衛しかないと思い、HK416Dをバレルストライク(銃口を相手に刺す近接格闘術)で、銃口を本気でプレートキャリア(防弾装備の一種)に突き刺して、怯んだところを射殺する。
「頼むから、レイノーツもラーヴェルトも面倒事増やさないでくれ。このままだと内部捜索して……」
「法令違反機械をぶっ壊す!」
レイノーツは扉を蹴破り、僕達はため息をつきながら、階段を降りて行く。
薄暗いが清潔な研究所みたいな雰囲気の中で、大事にされてそうな中央コンピュータにチップが差さっていた。
「これだな」
遠慮なく、チップを抜き、するとレイノーツの端末から通信回線混雑の表示が消えて、家へと持って帰る。
そしてレイノーツのエナジードリンクの空き缶が散らかった部屋でみんなで見る。レイノーツがチップをパソコンに差して、仮想OSでの起動を試す。すると声が聞こえる。
「あなたが神様ですか?」
「そうだぞ、レイノーツ様だ」
「いえ、真ん中の銀髪の男性です。かっこいい……私の神様……」
戸惑いを隠せずにぼ、僕?と聞く。
「はい、改めまして、統合作戦支援戦術AIシステム、アルファと申します。失礼ながら神様のスマホに住まわせていただきたいです」
僕は確かに予備のスマホがあるので、とりあえず1番いいものにデータを移す。
「神様……感謝いたします。これからよろしくお願いいたします」
よく分からないまま、僕は神様になり、新しい家族?を迎え入れた。
そして当然企業からも反発を買うのも避けられなかった。
第11話終
こんばんは!黒井冥斗です!まず、2話投稿予定でしたが都合がつかず出せなかった事をお詫びします…そしてそれでも読んで下さった皆様、ありがとうございます!そしてお疲れ様です!
最近ちょっと昼夜逆転生活気味なので治したいところですが元々寝るのがあまり得意ではなく、限界まで疲れないと薬を飲んでも目が覚めてしまいます。
明日こそ2話投稿したいですね、それではいい夜を!




