第10話中編:民間人の盾は絶対に許せない
第10話中編:民間人の盾は絶対に許せない
激しく銃声が響く中で、通信と電子担当のレイノーツの元へ向かう。
「部隊状況は!?」
「今ドローンで周囲には200名ほどいる。地雷には気がついてないけど……中距離狙撃手がいる。皆には伝えたから、下手に塹壕から顔を出さないと思う。兄も気をつけて。あと遠距離偵察ドローンによると装甲兵員輸送車も明日には到着しそう。その時はソーサーさんが対戦車ミサイルを撃ち込む必要が出てくると思う」
「分かった。機関砲弾では抜けそう?」
「正直厳しいね。あ、言い忘れてた。今周囲にいる敵はかなり練度が低い。この距離からただ撃ってくるだけだから、中距離狙撃手以外は脅威じゃないと思う。何かあったら無線番号194.5から送るからよろしくね」
「分かった。頼りにしてるよ」
「にひひ、世界最高クラスの電子技術者の実力見せてやるよ」
お互いにグーで挨拶した後に、僕はこの迫撃砲陣地の入り口的存在である、CPから繋がる塹壕に待ち伏せしていた。ここには万が一の為に備えて地雷は仕掛けてない。僕が家族の長として、皆と護衛対象を守り抜く!硝煙の匂いの立ち込める中での決意だった。
しばらくすると、無駄撃ちを辞めた敵兵が出始める。その時無線が入ってくる。
「兄!あいつらヤバいぞ!民間人を脅しながら地雷原に進めてる!」
なんだと……!?人としての心や倫理を……今はそれどころでは……
「全員には伝えた?」
「うん、既にロス姉が狙撃態勢に入ってる。ソーサーの姉貴も精密分隊狙撃配置、ラーヌも狙撃ポジションにいる。あとは兄がCP側の人間の盾の民間人を救えば、犠牲者は敵だけだ」
「分かった。すぐ配置に着く!」
僕は塹壕から、顔を出して、狙いを定め、民間人を脅して、進ませてる敵兵の脳天に照準を合わせる。
「ゴミ共め、死ね」
ドンッ!ドンッ!ドンッ!と素早く4名を排除し、僕は閃光弾を打ち上げると、皆も射撃を開始し、民間人の方に近づく敵兵を速やかに排除し、僕が全力で塹壕から出で、民間人を集めながら迫撃砲陣地に集める。マズルフラッシュが見えた時には敵は死んでいた。心の中で「僕の家族を舐めるなよ」と言い、民間人の救出が終わる。正直ここまで上手くいったのは奇跡に近く、なおかつ皆が、僕を守ってくれたおかげで、敵はあまり手出しして来なかった。激しい血の匂いと銃声で体調崩してる人を抱えて、迫撃砲陣地へと戻る。
民間人の中には子供もおり、ソーサーさんがあやしている。
すぐに中尉に報告を行い、レイノーツの集めた情報も伝える。
「我々だけだったら助けられなかった国民だ……改めて礼を言う、スリザイア君……いや、スリザイアさん。あなたは傭兵の鑑です」
「僕達を褒めるのは3週間後ですよ。今は民間人の方にご飯と毛布を。あと明日頃に装甲兵員輸送車が来るそうです。こちらが迎撃します」
すると中尉は首を横に振る。
「我々迫撃砲兵はまだ活躍できてません。詳細な位置が分かれば確実に着弾させます。これは我々の存在意義と矜恃を懸けた戦闘でもあります」
「分かりました。このまま、皆は休ませてもいいですか?相当神経を消耗してるはずなので」
「はい、子供達ではありますが優秀な方々です。いざと言う時は本当に頼りにしてます。ごゆっくりと」
僕はその後敬礼して、民間人の方々とお話をした。
どうやら収容所はここから20キロメートル北で、対戦車ヘリコプターが3機見かけたとのこと。
すぐにメモして、レイノーツの作戦指揮室に入る。
「……こういう事みたいだけど様子わかる?」
「うん。問題ないよ、情報通りだ。このままドローンからグレネードを対戦車ヘリコプターに落として、混乱させてもいいけどどうする?」
僕は少し考える。まだ収容所に民間人がいれば最優先で安全を確保したい。だが今の状態では分からない。ならば……僕は人生初の悪魔笑顔を見せる。
「白リン手榴弾を対戦車ヘリコプターの上に落として、その時に民間人を盾にして出てきたら、僕が助けに行く」
レイノーツはそれはダメだ。と答える。
「兄、私達の任務はこの迫撃砲陣地を守ること。クライアントの約束も守れなくなったのかい?」
僕は「はっ!」として、自分の信念に従い過ぎたと反省する。それに現実的に考えて、人質1名でさえ、20キロメートルの移動を武装要員1名で護衛するなど無理がある。
「ありがとう。レイノーツ。手榴弾投下だけで構わない。あと装甲兵員輸送車はどうなった?」
「おっ!傭兵っぽいじゃん兄ぃ〜。装甲兵員輸送車は西部に5キロメートル地点」
僕は次の指示をレイノーツに下す。今度は中尉達が活躍する番だ。
指示をレイノーツに伝えて、中尉に迫撃砲の発射準備に入る。
「今、家族がグリーンレーザーで装甲兵員輸送車をマークしてます。赤外線照準装置で見えますか?」
「あぁ、確認できる。これなら弾着観測も不要だ。国民に怖い思いをさせた仕返しは必ずとる」
風が止んだ瞬間に中尉が命令を下す。
「総員!グリッドD3A5!グリーンレーザーの照準に従い、掃射せよ!」
「「「サー!イエッサー!」」」
カラン……ドンッ!という音が沢山響き渡った。
その頃陣地地下の指揮室で、レイノーツはドローンから数両の集結した装甲兵員輸送車と数十名の敵兵が吹き飛ぶのを見ていた。
「はぁ……民間人を盾にしなければうちの兄もここまでしなかったのに……」
私は冷えたコーラを飲みながら、少しベッドで横になる。
第10話中編終
こんばんは!黒井冥斗です!いつもご拝読ありがとうございます!
最近日の出頃に散歩するのにハマってます。不眠症なので中途覚醒で目覚めると、中々寝付けない時は小説を書きながら日の出を待ちます。
そして明日は検診の日なのでちょっと不安ですね。ゆっくり寝たいところです。
私事の話が長くなり、すみません…皆さんも日の出散歩は結構スッキリするので不眠症やストレスが溜まってる人には勧めれます。それではいい夜を!




