くさりきった友情
――俺は木下誠。とある文系大学で物書きを目指して入学した大学1年生だ。俺はいわゆる"陰キャ"というやつでいつも一人で本を読んでいたから、友達なんていなかった。そんな俺は大学デビューを果たそうと文芸サークルに入った。そこには、佐々木秋彦という俺と小・中・高・大とずっと同じだった"腐れ縁"の友達がいた。
「…はぁ、またあいつと一緒か。」
俺はサークルに入ってすぐに秋彦の存在を知ってガックリと肩を落とした。正直言って、あいつとはあまり良い思い出がない。秋彦はものすごい陽キャで事あるごとにパーティーを開くのだ。彼にとって俺は"親友"らしい。一人の時間を好む俺にとってはまぶしすぎる存在だ。そんなことを考えていると秋彦が大きく手を振ってやってきた。高校までは黒髪だったが、短髪はそのままで赤く染めていて完全にチャラ男だ。肩ぐらいまで伸びた黒髪を一本に束ねて左肩に流した黒縁メガネの俺とはかなり違う。
「よぉ!誠!お前もこの大学でしかも同じサークルだったんだな!流石俺の親友!」
「…そう言うと思った。」
俺は一番会いたくない奴と会ってしまったが、その感情を表に出さないようにしていた。その後、秋彦は俺の肩に勝手に腕を回した。
「…でよー、栗原のことどう思う?…ほら、ミスキャンパスの2年生の『栗原愛衣』だよ。」
「…まっ、普通に可愛いんじゃね?」
俺は早く本の世界に飛び込みたくて適当に話を切ろうとした。その後、秋彦が思いがけない――わけでもないが、予想外なことを話した。
「このあと、歓迎会を開こうと思っているんだ。だから、幹事頼むよ。」
今までパーティーは多かったが、幹事は今回が初めてだ。でも、断ると他に危害が加わりそうだったので、俺は引き受けた。
――だが、このあと恐ろしいことが起こる。
――その日の夜、8時頃
一本の電話が俺にかかってきた。相手は予想通り、秋彦だ。
「もしもし?秋彦どうした?」
俺が電話を取ると秋彦は怒りのメッセージを送ってきた。
「…お前、なんてことしてくれたんだ!」
俺はその言葉にキョトンと動じずに話した。
「何が?」
「何がじゃねぇーよ!なんで予約してないんだ!」
「ふーん、今回は本当だったの?…あっ、この電話も嘘か、じゃ切るね。」
そう言って俺は電話を切ったが、すぐにまたかかってきた。全くしつこさだけは変わんねぇな…。
実は佐々木秋彦は"ドタキャン常習犯"で大ウソつきだ。高校時代、パーティーの幹事を任された奴が騙されて24時間バイトだらけの人生を送ったという恐ろしい話を聞いたから、今回も噓だと思って予約しなかったのだ。しぶしぶ電話を手に取りもう一度秋彦と会話した。
「だから、なんだよ…お前噓がわかりやすいんだよ。だいたい大学のサークルで新入生が勝手に企画出してパーティーできるわけねぇだろ…。」
――そう今回の件を噓だと思ったのは普通に考えてあり得ないことだったからだ。
「何言ってんだ!栗原もここにいるぞ!」
この言葉に俺は深いため息をついた。これは流石にないと思った。だって――
「そのセリフお前にそっくりそのまま返すよ。だって今目の前に彼女がいるから。」
「…はぁ⁉」
すぐさま俺はビデオ通話に切り替えて愛衣の方に向けた。
「なんで一緒にいるんだよ!」
「そりゃあ、彼女は高校時代から付き合っているからね。」
実は栗原愛衣は高校時代の一つ年上の先輩で俺が2年生のときに恋人関係となった。きっかけは当時太っていた彼女が秋彦に告白したところ、あっけなくふられてそのときに俺が彼女と親友になったことだ。
「…お前、本当に腐ってんな。愛衣が高校卒業したとき、親の再婚で名字が『森』から『栗原』に変わったんだ。俺ももうお前と形だけの親友はやめる。これが最後の電話になるからな。…じゃあな。」
俺はすぐさま電話を切って秋彦の電話番号も削除した。これで鎖のように硬かった"友情"という呪縛は断ち切られたのであった。
後日、秋彦がパーティーを持ち出すことはなく周りから白い目で見られていた。どうやら今回の幹事は本当だったらしい。俺の後ろで愛衣が声をかけてきた。
「おーい、誠くーん!この前書いた童話の脚本読ませてよ!」
俺の腐りきった硬い鎖は今ここで切られた。しかし、今ここに"友情"から始まる別の新しい何かが始まっていた。
――俺は青空の下で大切な人と素晴らしいキャンパスライフを送っている。
※この物語はフィクションです。




