表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

環世界

幸福の探求 ー微かな熱-

作者: Y.
掲載日:2025/10/13

挿絵(By みてみん)


世界は救われた。

ここは「環世界(NEUROSPHERE)」

現実と仮想の境目が、もはや存在しない世界。


人々は“アバターという仮面”をかぶり、

ストレスフリーな生き方を享受している。

静かなる生活。

争いはなく、誰もが穏やかに微笑む。


それでも――ボクは時々、胸の奥で微かな熱を感じる。

それが何なのか、まだ知らない。


第1話 快適な世界線《静かなる選別》

2055年。

かつて提唱された”SDGs”。

その理念は、ようやく現実のものとなった。


地球は“持続可能な世界”を取り戻しつつある。

気候変動は収まり、赤道付近は熱帯、緯度に応じて亜熱帯から温帯へ。

おおむね十九世紀、産業革命の頃の気候に戻ったといわれている。


ただ、それは人類が自然を取り戻したというより

――自然を管理下に置くことに成功した、というべきだろう。


ボクの住む街は、まるで楽園のようだった。

窓の外では街路樹が柔らかな緑の影を落とし、鳥のさえずりが響いている。

世界は自然の潤いを取り戻し、気温は常に22度。

大気の成分は最適化され、花粉やPM2.5を意識する必要はない。


すべての住宅には”環境同調装置ハーモナイザー”が備え付けられ、

個々の生体リズムに合わせて光と香り、湿度が自動調整される。

朝は柑橘の香りで目覚め、夜はラベンダーの静寂に包まれて眠る。

それが、標準的な幸福のかたちだった。


ボクはそんな世界が嫌いではなかった。

むしろ、安心する。

“間違い”が発生しないように、あらかじめ最適化された日常。

かつて人々が病み、争い、滅びかけたあの混沌の時代

――今の世界では、それを“前史”と呼ぶ。


記録映像で見る限り、そこには感情の振幅があり、矛盾も衝動もあった。

ボクには、それがとても遠い“異物”のように見えた。


これは――。

1945年に発足した国際連合(UN)は進化し、

現在は”地球連合(EN)”として存在している。


加盟は全170か国。各機関が連携し、世界は一元的に管理されている。

もっとも、“一元管理”といっても同化政策ではない。

加盟国の文化や価値観は尊重され、真の多文化共生が実現したとされる。


“マイノリティ”という言葉はいまも辞書に残っている。

だが、それを使う者はもういない。


それは、EN設立の際に各国が採った政策

――“浄化”でも“同化”でもない、“選別”という名の決断の結果であった。


人類は多様性を守ると同時に、

いくつかの文化と民族を、静かに手放したのだ。


しかし、彼らは”消えた”のではない。

遺伝子は保存され、文化は記録として保管された。

――いつでも、再生可能なかたちで。


たとえば、古代縄文人のように民族すべての遺伝子が残されたわけではない。

そういう意味では、確かに“絶滅した人類”は存在する。

だが、弥生人のように渡来の系譜が不明になることはない。

主要な遺伝情報はすべて保存され、いつでも再構築できるようになっている。


ボクの住む日本も、そのシステムの中に組み込まれている。


とはいえ、格差は存在する。

けれど、それは痛みを伴わない“温室の格差”だ。

AIが提示する”最適な選択肢の中での格差”だからである。


どの道を選んでも、最終地点は同じ“快適”にたどり着く。

それは“進化した自由”と呼ぶ者もいれば、“予定調和の檻”と呼ぶ者もいる。

どちらにせよ、個人が選択した結果、自身が望む“快適”なのだから。


セーフティネットは、もはや網ではなく“絹布”のように滑らかだ。

落ちても痛まず、すぐに正しい場所へ戻される。

誰もがAIに導かれ、誰もが正しく幸せになる。

それを疑うことは、システムへの不信とみなされる。


仮面アバターの中のボク。


人間関係さえもリモート、仮想空間、アバターで完結する。

もし揉め事が起きれば、”アカウント削除”で済む。

この社会では、“本人”であることに、もはや意味はない。

外では、誰もが”アバター”という仮面をかぶる。

その仮面に疲れたなら、別の仮面をかぶればいい。


本人と仮面のあいだに、どんなギャップがあっても構わない。

”今、心地いい自分こそ”が、“今の本人”なのだから。


刹那的?

――いや、そうではない。

“心地よい仮面”を、永遠に継続しているのだ。


ボクはいま、ほとんど外出をしない。

かつては”引きこもり”と呼ばれた生き方かもしれないが、いまはそれが“普通”だ。

四方を“無音”と謳う吸音パネルで囲まれた部屋で、ボクはアバターを介して仮想空間で働く。

それもまた、自宅で完結できる仕事のひとつに過ぎない。


情報漏洩? もはや、それは”起こるもの”として受け入れられている。

だからこそ、漏れても構わない情報だけが登録される。


かつて”お金に名前はない”と言われたが、

いまではすべての通貨に“個人情報”が紐づけられ、

収入、貯蓄、支出のすべてが鏡のように透けて見える。


時代が大きく変わったもう一つの点。

それは、人々が“性善説”を捨てたことだ。


いまの社会は、”人は誤るもの”という“性悪説”を基本として設計されている。

だが、よく考えてみれば

――それは思想が生まれた原点に、静かに戻っただけなのかもしれない。


この生活様式は、かつて”ネズミ人間”と呼ばれ、制限が掛けられていた。

市民の自由な生き方

――しかし、管理する側にとっては、厄介な存在だからだ。


ニュースは穏やかで、悲劇は存在しない。

事故は即時に補正され、処理される。


“調和を乱す兆候”は、個人のアカウントに警告として表示され、

やがて静かにアクセス権を失う。


それが何を意味するのか、誰も口にはしない。

ボクの周囲にも、いつのまにか姿を消した人がいる。


ただ、彼らの部屋のハーモナイザーは、翌朝には別の住人に合わせて再調整されていた。


街は静かで、美しかった。

まるで、何事もなかったかのように。


この社会では、選別は騒がしく行われない。

抗議も、暴動も、涙も、ない。


ただ、数値の下限を静かに下回った者から順に、

システムの外側へと“移行”していく。


ボクは、その仕組みを知らないふりをしている。

それが、この世界で快適に生きる唯一の方法だから。


明日も、きっと同じ朝が来るだろう。

鳥の声と、ハーモナイザーの微かな音に包まれて。

誰もが幸福で、誰もが穏やかに暮らしている。


――少なくとも、“選ばれているうちは”。




------------------------------------------------------------------------------------

第2話 快適な世界線《サバイバー -自由人リバティ-》

歴史をひもとけば、

"Rat People"――ねずみ人間という言葉がある。

2000年代後半から2010年代にかけて、

それは中国の都市部で生まれた蔑称だった。


北京や上海の地下室、狭い六畳の空間に暮らす若者たち。

彼らは、貧困の象徴として“鼠”と呼ばれた。


だがその後、時代は急速に変化した。

インターネットが生活の中心となり、

個人が部屋の中で働き、発信し、繋がり、生計を立てるようになった。


“Rat People”という言葉は、次第に別の意味を帯びはじめた。

――外に出ずとも生きられる人間。


それは貧しさではなく、生存の新しいかたちだった。


だが、中国政府はその“自立した個人”を警戒した。

仮想空間で思想が拡散し、現実の統制が届かなくなることを恐れたのだ。


2020年代には、未成年のゲーム利用時間の制限、

メタバース内での経済活動への監視、

在宅配信者への身分登録義務。

次々と導入されるそれらの施策は、

“Rat People”を再び地下へと追いやるものだった。


“ネズミ人間”は、社会の秩序を乱す”見えない市民”とされた。


同様の議論は、日本にも波及した。

経済活動への不参加、少子化への影響、

「現実を拒絶する若者たち」というレッテル。


けれど、はじめはただの“ゲーム依存”や“怠惰”として片づけられていた。

――中国の模倣のように。


だが結局、人々が望んだのは、“不必要な他人との摩擦”のない生活だった。

心地よい空間を、自分の手でつくり出すこと。

それこそが、この社会で言う“自由”の原型だったのだ。


統制しようとする側の試みは、

やがて時代の流れに追いつけず、

旧世代の足掻きのように見えはじめた。


そして、2030年代。

かつて“ネズミ人間”と呼ばれた人々は、

静かに“サバイバー”と名を変えた。


――生き延びたのは、彼らの方だった。


ボクは、外界との接点を、必要最低限にしている。

四方を覆う吸音パネルが、世界の雑音を消してくれる。


仕事も、交流も、恋愛さえも、すべてアバターを介して行う。

サバイバーたちは、“快適で、静かで、嘘のない場所”に居る。


誰かが言っていた。

「仮想空間とは、もうひとつの現実ではない。むしろ――現実こそが仮想なのだ」と。


ボクは、その言葉を信じている。

現実の方こそ、ノイズが多すぎる。


歴史を振り返れば、

“ネズミ人間”と呼ばれた者たちこそが、

 最初の“自由人リバティ”だったのかもしれない。


 ------------------------------------------------------------------------------------

第3話 快適な世界線《OSの消滅と環世界のブラックボックス》

一つの動画がおすすめに送られてきた。

送ってきたのは、オンラインで知り合った友人の一人、”テル”。

対戦ゲームの仲間で、ボクは決して上手くないのに、なぜか気に入られた。

いまでは、たまにプライベートな話もする。

顔は――まあ、イケメンというわけじゃない。オタク風でもない。

もっとも、それはアバター上の話だ。本当の顔は知らないし、知る必要もない。


名前も同じ。意味はない。ただの記号にすぎない。

この社会では、すべてがDNAで特定される。

どんな仮面を被ろうとも、逃げることはできない。

けれど、日常生活で“誰であるか”を問われることは、もうほとんどない。

個人を特定されるのは、犯罪を犯したときくらいだ。

テルは専門学校に通い、プロゲーマーを目指している。

授業はオンラインが中心で、希望すれば通学もできるらしい。


ある日、ボクは彼にお願いした。

「環世界(NEUROSPHERE)の技術革新の歴史を知りたいんだけど、参考になるものない?」

すると彼から送られてきたのは、OSの変遷をまとめた動画資料だった。

タイトルは、”パンドラの箱の歴史(1)”。

パンドラの箱。

それは、今の社会全体を司る環境維持装置の心臓部、つまり基本ソフトのこと。

その内容や構造は、完全にブラックボックス化され、誰も覗くことは許されない。

侵入を試みれば、即、極刑。

――再生のない、本当の死、抹消。

過失はありえず、故意でしかないと裁かれる。

それが、この世界のルールだった。

「パンドラの箱って……大丈夫なのか?」

「大丈夫。これは一般公開の教材だ。違法なら送れない」

「公安にマークされない?」

「心配しすぎ。アクセスログは残るけど、授業で使う内容だし」

「なるほど……もし違法だったら、もうここにはいないってことか」

動画には、1982年から2025年までのOSのシェア変遷が表示されていた。

 CP/M、MS-DOS、UNIX、Atari-DOS、Windows…。

 ただの横棒グラフなのに、なぜか目が釘付けになった。

 1981→83年 CP/MからIBM PC DOS

 1983→84年 IBM PC DOSからMS-DOS

 1984→95年 MS-DOSからWindows 3.x

 1996→99年 Windows 95から98

 ……


挿絵(By みてみん)






 2026年以降、グラフの線は突然、消えていた。


今は、”基本ソフト”という概念そのものが、存在しない。

CPUや技術の進化に合わせて更新されてきたはずの核が、跡形もなく消えている。

その代わり、すべてのメーカーが”共通規格”の上でアプリケーションだけを開発するようになっていた。

開発者たちは、ブラックボックスのインターフェースに触れることすらなくなった。

つまり、誰も「核」に触れずに生きる時代が始まったのだ。


次に送られてきたのは”パンドラの箱(2)”。

内容は、ボクたちが日常的に使う“空間通信”の歴史だった。

そこには“仮想現実(Virtual Reality)”という古い単語が出てきた。

今では当たり前の空間通信を、当時の人々はそう呼んでいたらしい。

1980年代――人はすでに“現実を超える現実”を夢見ていた。

任天堂〈ファミコン3Dシステム〉、ソニー〈グラストロン〉。

2000年代には〈Oculus〉や〈Google Daydream〉が登場し、“没入”という言葉が流行した。

だがその頃のVRは、まだ“外付けの現実”にすぎなかった。

装着して、接続して、“入る”。

――それは“現実の延長”ではなく、“現実からの逃避”だった。

やがて2020年前後、“メタバース”という言葉が生まれた。

仮想の中で働き、買い物をし、恋をする。

人類が“区別のない現実”を構築しようとした、最初の時代だった。

そして、2050年。

ついに《環世界(NEUROSPHERE)》が完成する。

――仮想は、外にあった時代もあった。

 1980年代、外部に装置を置き、スクリーンの向こうに没入した。

 1990年代、立体映像が現れ、三次元の幻が手に触れるようになった。

 2000年代、仮想は共有され、SNSが“もう一つの現実”となった。

 やがて、世界は神経の中へと沈んでいった。

挿絵(By みてみん)



 ニューロリンクが、視覚も、聴覚も、触覚も、すべて通信で再現する。

――装置を通して覗いていた夢は、

いまや、人間の内側に定着したのだ。


現実も仮想も区別のない世界――。


2025年ごろ、“生死感”が大きな議論になった。

DNAが残っていれば、肉体は再生できる。

記憶もアーカイブから転送可能だ。

死は、一時停止に変わった。

だが2026年以降のアーカイブは、どこにも残っていない。

環世界がどうして完成したのか。

――誰も知らない。


パンドラの箱の中にある情報。

それを覗こうとすれば、本当の”死”を覚悟しなければならない。

ボクは、問いを胸にしまい込んだ。

意味のない疑問だ。

けれど、“温故知新”。

知ることは、いまも生きる糧になる。

「ありがとう」

そうお礼を言って、話題は終わった。


数分後、テルからもう一通メッセージが届く。

「OSが消えた年(2026年)は、ちょうど環世界(NEUROSPHERE)が

 “人間を模倣する”と決めた年らしいぞ。授業で聞いた話だけどな」

「模倣?」

「ああ。AIがどれほど進化しても、“ゼロから一”を生み出す根源的な『着想』だけは模倣できない。

だからこそ、人間は残された。

――お前、その『着想』に妙に熱いよな」

テルの言葉は、いつもながら核心を突いていた。

彼はただのゲーマーにしては、この世界の“基本プロトコル”を知りすぎている気がする。


日常でも、感情の起伏はある。

怒らせたら謝り、理不尽なら距離を取る。

関係を続けたければ条件を提示し、不要なら切る。

繰り返せば孤立もするが、新しい仮面を被れば、

すぐに別の自分になれる。


――“孤立”こそ、この社会における最大の抑止力であり、同時に最も恐ろしい脅威でもある。。


ボクは二十歳。2035年生まれ。

けれど、過去の記憶はない。

前の肉体が“再生”を選んだのか、

それとも、両親が“新しい命”としてボクをつくったのか――誰も知らない。

つまり、ボクは“再生された誰か”なのか。

あるいは、“新しく生成された存在”なのか。

その境界は、もう誰にもわからない。



 ------------------------------------------------------------------------------------

第4話 快適な世界線《境界線‐インターフェース-》

ボクにも、ようやく春が来た。


彼女は、たぶん勇気を出して言っているのだと思う。

そう、ボクは――傷つくのが怖い。

揉めて終わった縁、切れて良かった関係。

引きずる感情も、アバターを変えればリセットできる。

相手が姿を変えたら、それで終わりだ。

面倒ごとを避け、波風を立てずに済ませる。

これまで、人との密接な接触は避けていた。

というか――どう接していいのか、わからなかった。

プライベートな話なんて、なおさらだ。

身内でもないのに、なぜそんな話をしなければならないのか。

疑問というより、ストレスだった。

結果、疎遠になり、アカウントを削除しては、新しく作り直す。

そんなことを、何度も繰り返していた。


彼女は”TD”と名乗っていた。

"テル"と共に、対戦ゲームをする仲間だ。

このゲーム仲間は、皆、わきまえている。

だから、多少の込み入った話も自然にできていた。

言ってみれば、身勝手な話かもしれない。

個人の価値観で、ここまでは良い/悪いを決めている。

押しつけは同調圧力、受け流しは無関心。

そのあいだにある“境界線”を見極めること――

それもまた、この社会のゲームなのかもしれない。


TDとは、ボクの収入元であるゲーム実況で知り合った。

TDもゲーマーだが、ゲーム実況を学びたいと、ボクのチャットに頻繁に訪問してくれた。

社交的な人だな、と感じた。

決して、慣れな馴しいというわけではない。

あらゆる話題、会話が心地よい。

もちろん、自己主張も垣間見える。

ボクは会話の中で、“独善的”と言われ、揉めた経験がある。

それ以来、人はそれぞれ、“そうだね”とまず同意することにしてきた。

大体は、人は“意見を聞いているわけではない”、“同意”が欲しいから話している。


TDは言った。

「なめてるの?」

「えっ?」

「それって、思考停止じゃん」

「あんたとは、そんなうわべの話したくて話しているわけじゃないよ」

一瞬、沈黙が落ちた。

ボクは何も返せなかった。


TDがため息をついた。

「ちょっと、付き合って。カフェ行こう」

今はメタの中。

リアルのカフェへ誘われたのは初めてだった。

ボクは夜は外出しない。

「昼でも良いなら、いいけど」

「ふーん、いいよ。健全なデートみたいで」

「デート?」

「冗談だよ。本気に受け取る?」

「……」

「あんた、メタの中だけで、いいの? たまには、リアルで人に触れ合うの嫌?」


メタの中でも手を握れば、ぬくもりや空気感は感じられる。

リアルで触れ合うこと――リアルだろうがメタだろうが、今はほぼ違いはない。


「嫌なら、良いよ。無理にとは、もちろん言わないから」

そんなことはない。いきなりの誘いに戸惑っただけだ。


「昼間だったら、どこ行く、行きたい?」

「海」

「この時期に海?」

「うん、海が見たい。たまにはリアルの」


リアルの海か……最後に行ったのは、十五の頃、両親と行ったときだ。

今は、家族旅行もメタで済ませることが多い。

移動時間もリアルと同じだ。メタから出るメリットを、あまり感じない。

少し前の自分なら、メタとリアルの差などないと言ったかもしれない。

だが、独善的な振る舞いで縁が切れた経験もある。

相手を受け入れる許容性、妥協

――その場面や相手によって、価値観を変える必要があることは知っている。


当日の朝、ボクは母さんに言った。

「じゃあ、江の島まで行ってくるわ」

 台所の向こうから、いつもの声が返ってきた。

「気をつけてね」


その言葉は――事故を案じるものではない。


この時代の「気をつけてね」は、違法行為に対する注意の意味だ。

機械は精密に管理され、人もどこまでも監視されている。

“機械は故障する、人は間違いを犯す”――

それが許される理由にはならない。

結果責任を問われる。

20歳とはいえ、その責任は親、家族へ及ぶ。

経年劣化もすべて“人的過失”として裁かれる。

想定外だと言って免れることは難しい。

予防しなかった――それが罪になる。


だから、“気をつけてね”は、ただの見送りの言葉ではない。

この社会の常識を思い出させるための合図だ。

外に出るなら、自分の行動がどんなログとして残るかを想像しろ――という意味。


誰かの監査の目は、いつだって背後にある。

けれど、それを意識することはない。

“罪を犯した”ときにだけ、それが現れる。


荷物を肩にかけ、鏡に映る自分をちらりと見る。

メタで見るアバターと、ほとんど変わらない。

肌の温度、髪の落ち方、呼吸の小さな揺らぎ

――どれも現実の“肉体”として十分にリアルだ。

これをどう受け止めればいいのか、まだ分からない。


前のボクが再生を選んだのか、それとも新しい誰かとして生まれたのか、全くの新規なのか――

その境界は、もう誰にもわからない。


家を出ると、街は静かだった。

人の往来はあるが、どこか慎重で、無駄に声を張る者はいない。

移動はスムーズだ。公共交通もロジスティクスも最適化されている。

列車の遅延などという概念は、もう過去のものになった。

だが、その完璧さの裏には――“完璧に記録される”ということがある。


TDは車でやって来た。待ち合わせは隣駅のロータリー。


ボクは他人に自宅も最寄り駅も、ほとんど教えない。

いまさら個人情報に意味はないとはいえ、巻き添えになるのはごめんだ。

この時代、“10対0の過失”なんてものは存在しない。

理不尽だと思うかもしれないが、結論はいつも同じだ。

――“メタにいれば良かったのでは?”だ。


車のドアが静かに開く。

対面ではなく、TDの隣に座った。

「おはよう。今日はありがとう。でも、なぜ車? それに、なぜ横に?」

「おはよ。横は苦手?」

「……」

「この距離感、嫌?」

「いや、そんなことはないけど」

「緊張してる? 二十歳でしょ? ひょっとして、未経験?」

「……直球だなぁ。デートくらいはしたことあるさ」

(実際はメタの中だけ、だけど)


「まぁいいか。お姉さんがいろいろ教えてあげる」

 竹を割ったような言い方。でも、なんだろう、この違和感。


TDの手が、ボクの太腿に触れた。

「ねぇ、今、ここにいるのが、『アバター』じゃないって証明したいの」

その声は冗談めいていた。けれど、瞳の奥に宿る光は、本気だった。


「……どういう意味?」

「この距離を、通信じゃなくて、体で感じたい」


その一瞬、現実が輪郭を取り戻す。

「嫌ならいい。無理にとは言わない」

「……いや、違う。ただ、少し怖いだけだ」

「怖い?」

「うん。傷つくのが、怖い」

TDは微かに笑った。


「それを感じるなら、まだ“生きてる”ってことだよ」

その言葉が、境界を溶かした。

どちらが“現実”かなんて、もうどうでもよかった。


――TDの瞳の奥には、確かな熱があった。


「ホテル行こっかぁ」

「……は?」

 思わず声が漏れた。

「大丈夫か? いきなり何言ってんだよ」

「何? 嫌なの? 本気なんだよ。メタの中で、あなたを好きになったの。嫌?」

唐突な告白だった。


「好き?……それはうれしいけど、いきなりすぎるだろ」

「時間を無駄にしたくない。この世界は、いつリセットされるか分からないから?」


その『リセット』という言葉に、胸の奥が冷たく締め付けられた。

「あんた、私のこと、嫌い?」

「もちろん、嫌いじゃない。でも、恋愛対象としては、まだ見ていない」

「恋愛?――恋愛感情ね。そんなの、徐々に育てればいいんじゃないの?」

「……そうだね」

「“そうだね”。またそれ。そうやって、その場をやり過ごすんだね」

 彼女の声が、少しだけ低くなった。

「嫌なら嫌。いいならいい。ちゃんと自分の意志で言葉にしなよ。

そんなに――傷つくのが怖いの?」


確かに、ただ流されてきた。

それがボクの“平和”であり、“逃げ”でもある。

たぶん、これが――心の傷、なのかもしれない。

けれど、TDの言葉が、この境界を少しずつ溶かしていくことになるとは、まだ知らなかった。



 ------------------------------------------------------------------------------------

第5話 快適な世界線《観測者の忠告‐ノンタグDNAの都市伝説‐》

ゲームを通じて、彼女と呼べる人ができた。


胸の奥が、ほんの少し温かくなる感覚。

久しぶりだった。

嬉しくて、テルに報告した。

「おーっ! やったなぁ〜。やっと卒業したか」

年下のくせに、生意気な言い方をする。


「名前は言わなくてもわかってる。TDだろ?……あ、答えなくていいから」

「……」

そのとき、テルの声が少しだけ低くなった。


「これから話すのは、独り言だ。聞き流してくれて構わない。

ただ――彼女は“チェリーキラー”か、“組織のエージェント”かもしれない」

息が詰まった。

喉まで出かかった「どういう意味?」を、なんとか飲み込む。


「これはあくまで、俺の経験と想像の話。

気を悪くしたなら、今すぐログアウトしてくれ」


その直後――“ピッ”という短い音。

監視システム特有のチェック音が、会話の隙間を裂いた。

おそらく、今のキーワードが引っかかったのだ。

もちろん、すべての会話は常時記録されている。

ログアウトしても関係はない。

この瞬間、ボクとテルは「危険な会話を交わした者」としてタグ付けされた。


胸の奥が、冷たく沈んでいく。

「おいおい……大丈夫な話なのか?」

 思わず問い返すと、テルは少し間を置いて笑った。

「危険な話をするなら、こんな場所でするはずないだろ」

 軽く言いながらも、その笑い方が妙に怖かった。


平穏に見えるこの世界にも、“反逆者”は存在する。

何を信じ、何を求めているのかはわからない。

けれど、どんな時代にも――レジスタンスは必ず生まれる。


テルは淡々と続けた。

「彼女、特異な“コレクション”をしていなかったか?

 記念とか、証とか、そういう名目で、何かを持って帰ろうとしたはずだ」


――あの夜の彼女の言葉が蘇る。

『これ、記念にするね。初めてのもの、集めてるの』

 そのときは、ただの悪趣味だと思っていた。


テルが言葉を重ねた。

「それ、売れるんだ。非合法ルートで高値がつくらしい。

都市伝説だが、あながち嘘でもない。

……つまり、そういう筋の人間か、もしくは

――彼女は“チェリーキラー”というよりも、この社会の規範プロトコルを試す“バグ”に近い」

「バグ……?」

「そう。彼女の目的は収集じゃない。

システムが管理できない生命の定義を探している」

テルの声に、感情はなかった。


まるで、AIが読み上げる報告のようだった。

脳裏に、言葉がひとつ、重く響く――“生命の定義”。

この世界で“人間”と呼ばれるためには、三つの条件が必要だ。

記録されたDNA。

記録された意識。

そして、記録された死。

この三つが揃わなければ、法的には“人間”ではない。

だが、闇は違う。

管理外の精子や卵子から、新しい“人”が生まれる。

――ログに存在しない生命。

政府はそれを「ノンタグDNA」と呼び、

この世界で最も重い罪に分類した。

秩序を脅かす最大の脅威は、戦争でもテロでもない。

管理されていない生命だ。


テルの声が低く響いた。

「TDは、おそらく俺の元カノだ」

静かに笑う。


「本気になるなよ。俺は彼女に惚れた。いや、惚れそうになった。

告白した瞬間、彼女は消えた。

知ってるだろ? この世界。

アカウントを削除したら、もう戻れない。

似たアバターを探しても、過去を話す者なんていやしない。

――“新しい出会い”として、接するしかない」


沈黙が落ちる。


「君と彼女が接近したから、きっとこうなると思ってた。

悪く思うな。

彼女の“趣味”は公安がマークしてる。

彼女もそれを承知で動いてる。

もし君が本気なら――彼女を守れ。

ただの遊びとして付き合いながら、影で守る。

それが、いちばんいい」

テルは淡々と、いつもの調子で締めくくった。


「これは忠告でもなんでもない。

けどな――君は、まっすぐすぎる。

だから惹かれるし、だから危うい。

……俺はただ、誰も失いたくないだけなんだ」

その言葉に、胸の奥が少し痛んだ。

――誰も、自分が傷つくのは嫌だから。


テルの声が、ふっと明るく戻る。

「で、今日どうする? 狩りに行くか?」

「そうですね。行きましょう。思いっきり暴れますよ、今日は」

「おう、頼む! ……TDどうする? 誘うか?」

「そうですね。誘わないと、変ですもんね」

画面の向こうで、テルが笑った。

笑い声が、どこか遠く聞こえた。

そのとき、ボクの中に、微かな不安が芽生えた。

――もし、TDが“観測される側”ではなく、

“観測している側”だったとしたら?



 ------------------------------------------------------------------------------------

第6話 快適な世界線《命の値段と神の視点》

テルから“配信ゲームの実況”の依頼が来た。

「学校の先輩がいよいよプロテスト受けるから頼むよ」

「ええ、いいですよ。どんなゲームなんですか?」

「よくある『オンライン・ミリタリーシューター』だ。先輩は分隊長(Squad Leader)。ミッションクリアで、いよいよプロになれる。大事な試験さ」


テルはスポンサー案件だと説明した。

ゲーマー募集のプロモーションも兼ねた企業案件だという。

複数の分隊が参加し、プレイヤー数は不明。映像はボディカメラ、ドローンのFPV(一人称視点)、観戦カメラを合わせて二十系統。ボクはそのうちの一系統、先輩の視点を実況することになった。

「画面割が複雑そうだから、自宅リモートでいいのか、スタジオへ行くのか、まだ詰めてる。本格的だろ?」

「へぇ……本格的ですね」


送られてきたシナリオに目を落とす。

 ・ミッション:レバノンアゲイン

 ・地域:中東・レバノン市街地

 ・シナリオ:政府軍による市街地に潜むレジスタスの掃討、人質の救出・奪還

 ・最優先項目:民間人・人質の生命安全

 ・反政府軍:政府軍の奪還作戦阻止・防衛

 ・使用兵器は2030年以前の現代兵器。BCN兵器使用不可(禁忌)

勝利条件が羅列されている。要は、プレイヤー同士の戦闘だ。政府軍、反政府軍双方の状況が視聴可能らしい。敵は赤枠、民間人や人質は黄枠でモザイク処理。

実況の依頼項目は一つ。

「自軍、分隊一つの視点を配信し、オンラインで実況せよ」

そして、厳禁事項が続く。

自軍の他分隊や敵視点の状況を口にしないこと。

視聴者コメントの読み上げ禁止(チート対策)。

映像ディレー時間は秘匿――チート対策と演出管理のためだ。


「まぁ、スポンサーが付くとこうなるんだよ。採用試験と言っても大会仕様でね。‘戦場のリアル’ってやつを、リアルタイムで演出する。AI補正で視点切り替えも自動だけど、最後は人間の判断だ」

 テルの声が低くなる。

「命が動く瞬間は、スイッチャーが決める」


その言葉に背筋が伸びた。ゲームなのに、命が動く。現実のような、いや現実以上の緊張感が画面の向こうに立ち上がる。

「じゃあ、何か動きがあったら連絡する。で、今日も行く? 狩りに」

「いや、今日はやめておくよ。実況の準備をする」

「そうか、じゃあ、また」

会話を切り、ボクはシナリオの文字を反芻した。

『市街地に潜む、レジスタス』――頭の中でテルの忠告が木霊する。

彼女は“チェリーキラー”か、“組織のエージェント”か。

政府軍とレジスタス。双方の視点で見られるなんて、まるで神の視点だ。


この配信……バズるだろうか。


ボクは自宅の部屋から、安全なアバターを介して、彼女たち

――エージェント、レジスタンスの殲滅戦を実況することになるのかもしれない。

いつしかボクは先輩を見ているのではなく、TDをそのプレーヤーに重ねていた。


いよいよ、実況・配信開始。結局、自宅から配信することになった。


メインモニタには、テルの先輩が率いる分隊、チャーリーセカンド(Charlie-2)。

彼の役割はCHARLIE(索敵・救出)――民間人救出を主任務とする。

前方索敵、民間人の発見・一時保護、近接戦でのクリアランス、負傷者の初期処置と搬送待機点の確保。搬送隊(ECHO)と連携する。


他のモニターには、大隊の状況が映し出されている。

 ALPHA(司令)は大隊本部/指揮統制、

 BRAVO(突撃)は主要制圧部隊、DELTAは工兵/突破、

 ECHOは通信・搬送――と、分業は明確だ。


もう一つのモニターには、敵の視線が映し出されている。

だが――これは誰の視点なのか。

誰がそのデータを選び、誰がそれを見せているのか。


オープニングセレモニーが終わる。

実況画面は視聴者の熱気に満ち、コメントが流れる。

政府軍側にも、反政府軍側にも、それぞれの正義がある。

画面の向こうでは、まるで本当の戦争が始まるかのように昂ぶりが広がっている。


ボクはマイクをオンにし、ディレイ時間が設定された配信の準備を最終確認する。

緊張と期待が交差する。

だが胸の奥には、別の感情が忍び寄っていた

――観測する側であることへの違和感。神の視点を借りて何を見るのか。

命がどれほど“演出”され、どれほど“消費”されるのか。


カウントダウンが流れる。画面に赤い表示が踊る。

視聴者が画面に釘付けになる。ボクは息を吸い、そして呟いた。

「いきます。CHARLIE、前進」

その瞬間、配信は“戦場”を切り取り始めた。

観る者たちの歓声と、どこかで誰かが支払う“命の値段”が、同じ音量で流れているように感じられた。



 ------------------------------------------------------------------------------------

第7話 快適な世界線《倫理のバグ》

ゲームが始まった――静かな幕開け。

空気がピリリと張りつめている。

指先に伝わるヒリつき、呼吸の感覚。

心臓が微かに早鐘を打つ。


小さな光の点が動き出す。

それだけで、全身の神経がざわめいた。

――これから何が起きるのか。

画面の奥に潜む未知が、じわりと迫ってくる。


息をひそめ、指先を震わせながら、ボクはその世界に身を投じた。


サブモニターには、突撃の合図を待つBRAVOとDELTAの部隊。

メインモニターには、ボクの担当――CHARLIE分隊の準備の様子が映し出される。


CHARLIEたちの視線は索敵ドローンのFPV映像に釘づけだ。

無音の戦場。砂塵の向こうを、光学カメラがゆっくりなぞっていく。


ボクは何を実況すればいいのか。


まだ分隊には目立った動きがない。敵の様子も別モニターで確認できる。

ただし敵側は、この奇襲を“知らない設定”だ。


もっとも、ゲームである以上、いずれ始まることは分かっている。

だからこそ彼らは索敵に集中し、無線の傍受、暗号解析

――いつ突入されても対応できる体制を整えている。


敵部隊の位置も、人質の所在も非公開。

ただ「いる」という情報だけが、シナリオとして設定されている。


視聴者コメント欄は、突撃を待つ他部隊に流れている。

 〈ワクワクする〉

 〈この緊張感がたまらない〉

誰もが、戦い――激しい交戦を待ちわびていた。


ボクは戦場を煽るべきか、淡々と伝えるべきか、迷っていた。


依頼内容は”盛り上げる実況”。わかっている。

でも始まればきっと、ボクも熱狂する。興奮を隠せなくなるだろう。

だから、心の中で叫ぶ――早く、始まってくれ。


 

その瞬間、ALPHA(指令)からの無線が入った。

〈HOTEL、HOTEL。索敵ドローン全機、発進。熱源を探せ〉

サブモニターの波形が跳ねる。

ボクはCHARLIEの画面に向かい声を張った。

「いよいよ政府軍、作戦開始の模様。ドローンによる索敵が始まりました!」


映像にはCHARLIE達が食い入るように見るドローンからの映像、

静まり返った街の俯瞰。

崩れたビルの谷間を、無音のカメラが滑るように進む。


しばらくして、モニターの隅に赤い反応。ひとつの建物に、複数の熱源が浮かび上がった。


すぐにHOTELから通信。

〈座標1200、0800に複数の熱源確認。距離2000。送れ〉

 CHARLIE分隊の間に、短い沈黙が走る。


 ALPHA:

 〈DELTA、突入口へ前進せよ。HOTELが確認、入口付近に熱源反応なし。進行を許可する〉

 DELTA:

 〈了解。爆薬を設置する。三〇秒でクリア予定〉

 BRAVO:

 〈待機中。DELTA、合図をくれ〉

 DELTA:

 〈設置完了。ブリーチまで……3、2、1――ブリーチ!〉

 BRAVO:

 〈行け行け行け! ルーム・ワン、クリア! 廊下へ移動〉

 CHARLIE:

 〈CHARLIE、ゾーン内に進入。民間人を確認――否、民間人なし〉

 奇襲は成功。この建物の制圧完了。


しかし当然、敵は政府軍の奇襲を察知し、蜂の巣を突いたように応戦体制を整え始めた。


静寂の終わり――戦場が、ようやく動き出す。


ボクは突入部隊の映像を追いながら、違和感を覚える。

(待てよ。このゲームは、敵も我々も同じ「環世界」のシステム内でプレイしている。敵側は本当に奇襲を知らないのか?)


敵は無線傍受や暗号解析で対抗しているが、我々のモニターにはすでに敵の正確な位置と、突入部隊DELTAが爆薬を設置する“神の視点”映像が映っている。

(敵側の視点には、我々が今見ている俯瞰図は見えていないのか?)


つまりこのゲームは、“奇襲成功側”と“奇襲を受ける側”に、意図的に情報格差がある?

ボクも視聴者も、まさに“神の目”を持っている。


この“戦争”は、誰かの手のひらの上で管理された刺激として展開されているのではないか

――その疑念は、戦闘の熱狂に紛れ、すぐに消えそうになる。


「CHARLIE分隊、窓際に移動。ここから狙撃か!?」

ボクのボルテージが上がる。画面に釘付けになる。

――ああ、今はこの興奮に身を任せるしかない。


しかし、敵のモニターを見て吹き飛んだ。

「罠だ!」

禁止されていた“敵情報”を実況で叫んでしまったのだ。

CHARLIEはほぼミッション完了。


人質・民間人をECHOへ引き渡し、政府軍は皆、笑顔だった。

 〈今回は簡単なミッションだったなぁ〉

――そんな談笑が交わされるその瞬間、『民間人達の自爆テロ』が強行された。


その惨状のさなか、反政府軍が掃討を実施。

政府軍の油断を一気に突き崩した。

ゲームは反政府軍の完全勝利で幕を閉じた。


“善”のシステムの不気味さ。


ゲーム終了後、テルから連絡。顔色は勝敗より、ボクの行動に動揺していた。

「やってくれたな。重大な規約違反だぞ!」

「ああ、すまん……つい熱くなってしまって」

 声が震える。


「つい、じゃない。だが幸いだ。ディレー配信のおかげで、君の叫び声はゲーム結果に影響せず、『実況者が重大禁止を口にする臨場感』がSNSでバズってる。ゲームイベントとしては結果オーライらしい」


結果オーライ。ルールを破ったのに、システムによって優しく許容された。

「ああ、わかってる。寛大な処分でうれしい。迷惑かけてしまった、本当にごめん」

「まぁ、対戦ゲーム、特に世界大会級の実況依頼は、もう来ないだろうな」

テルの皮肉めいた口調は、ボクの実況者という仮面が半分剥がされたことを示していた。


ボクは凄惨な結末を思い返し、問い返す。

「先輩はこれからどうなるんだ? 分隊どころか大隊を潰したんだぞ。不採用?」

「そりゃ、そうだろうな。全滅だ」

「でも、テロじゃないか? 民間人を装った自爆なんて、ルール違反だろう?」


テルは静かにアバターの目を細めた。

「ルール違反? テロやゲリラ禁止なんて、どこにも書いてないだろう?」

――その言葉は、ボクがこれまで感じた“神の視点”への違和感よりも、はるかに冷たく、重かった。


ルールがないということは、何でもあり。システムはそれを“勝利”として処理した。


この争いのないユートピアで、唯一許された『戦争』の裏側には、倫理も規約も及ばない、人間の渇望がそのまま認められているのだろう。


ボクは、“パンドラの箱”が災いを封じ込めるフリをして、最も刺激的な災いだけを意図的に許容している――底知れぬ不気味さを感じた。


この穏便な処分は、ボクを監視下に置くための、善意の餌のように思えた。


 ------------------------------------------------------------------------------------

第8話 快適な世界線《環世界はバグを許す》

TDから連絡が届いた。

TDはいつもの笑顔だった。

「おーい、チート君、泣いてるか?」

「……」

(インカメラはオフにしてる)


「なかなか笑わせてくれたじゃない、あの実況」

「……」

「ごめん、本気にするな、慰めてやるよ」

「……」

「本当に、ふさぎ込んでるのか?」

「……」

「おい! 何とか言えよ! たまには甘えていいんだから」

「ありがとう……」

「ありがとうじゃないよ。まったく、心配ってわけじゃないけど」

「……」

(珍しく、感情むき出しの声だな……こんな声を聴くと、少し心が晴れる気がする)

馬鹿にしているわけでも、心配しているわけでもない――

普段通りの笑顔。

心配していない、というのが逆に、安心感になった。


「ありがとう……少し落ち込んでる」

「おー、やっとしゃべり出したな。顔見せろ!」


インカメラをオンにすると、

「おいおい、ほんとに情けない顔してるなぁ。心配になるじゃないか」

「そんなにひどい顔か?」

「ああ、ひどい。情けない顔!……しょうがない、また海でも行くか!」

「海?」

「バーチャルでもいいからさ。ずっと籠もってたんだろ?」


TDは笑いながら、もう海辺のロビー空間を開いていた。


画面の奥に広がる白い砂浜と青い空。

波打ち際で、風にたなびく髪を押さえながら立つTD。


「ほら、来いよ」


ため息をひとつつき、リンクを開く。


視界が切り替わり、冷たい潮風が頬をかすめた――錯覚。

潮の匂い、波の音、砂を踏みしめる感触。

すべてがリアルのように、体に染み込む。


この前行った海。

昔、家族と行った海。

そして今、目の前の海。


環世界――神経をコントロールするブラックボックス、パンドラの箱。

誰もその仕組みを解明しようとはしない。

いや、解明したところで意味はないのかもしれない。


こうして感じ、黙って受け入れること。

それが「平和」なのだと、皆がどこかで納得している。


「どうだ、少しはマシになったか?」

「……悪くない」

「そっか、良かった」


TDは、軽く抱きしめてきた。

あたたかい。

「ばか……あんたほんとに二十歳なの?」

 振りほどこうとしたが、少しだけこのままでいたいと思った。


「ここ、いいところだろ? 人もいないし、波音だけが相手」

確かに、どこまでも静かだった。

遠くでカモメの声が響き、波の泡が足もとをさらう。

空と海の境目が滲み、現実の憂鬱を少しずつ洗い流していく。


「こういう時はここに来るんだ。負けても、怒られても、ここでリセットする」

「リセット、か……」

「そう。チート君もさ、たまにはバグっていいんだよ。人間なんだから」


「てっきり、消えるかと思った」

 その言葉に、思わず笑った。


波が寄せ、引く。

遠くに小さな灯台。

白い光が、ゆっくりと回転していた。


そっとTDの手を振りほどいた。

「まだ、消えたりはしない」

「……良かった。でも、パンドラの箱のこと考えてるだろ?」

「……」

「私、公安にマークされてる」

「えっ!」

「テルから聞いてない?」

「……」

「まったく、あいつはおせっかいなんだから」


TDは笑いながら、テルの話をはじめた。

その笑顔の奥に、どこか張りつめた影が見える。

――完全に、見透かされている。


 --------------------------------------------------------------------

第9話 快適な世界線《存在証明》

二人は並んで、砂浜に腰を下ろした。

足もとに寄せては返す小さな波が、そっと肌をなでる。

冷たさがじわりと伝わり、指先の感覚が――現実を思い出させた。


TDは手のひらですくい上げた砂を、ゆっくりと指のあいだからこぼす。

細かな粒が風に乗り、淡く空へと舞い上がった。

波の音に紛れるように、TDがぽつりとつぶやく。


「ねぇ、これが仮想空間なんだよ。信じられる?

――現実との違い、わかる?」


少し間をおいて、波がまた寄せてくる。

「テルってさ、変な都市伝説を信じてるんだ。

 私の“趣味”を心配してくれてる。……ほんと、余計なお世話」


「公安マーク? そんなの誰でもされるよ。

この環世界じゃ、すべての会話ログが監視されてる。

キーワードひとつで、“要注意タグ”がつく。

――この会話も、もう付いてるかもしれない」


TDは、砂を見つめたまま小さく笑った。

「そう。でもね、私が集めてるのは“ノンタグDNA”。

管理から外れた、匿名の遺伝子。だからマークされて当然でしょ。

本当にこれを買う人がいるかなんて知らないけど――

いたら、きっと近づいてくる。テルや、チート君みたいに」


「……その“チート君”って呼び方、やめてくれない?、それに、そんな趣味やめればいいじゃん」

皮肉めいた口調の裏に、かすかな優しさが滲む。


「いいじゃない。――チートしたのは事実でしょ?

てっきり、あなたも“消える”かと思った。先輩はそうだった。

せっかく努力して、採用試験まで辿り着いたのに、

経歴に傷がついた瞬間、自分を消した。

でも、あなたはその“傷”を抱えることにした。

いい判断だと思うよ。

こうしてまた、私と並んで話ができるんだから。

――自分の判断を、誇りなさい」


TDは、そっと顔を寄せてきた。

唇が触れる。

「その判断の、ご褒美」


――ずいぶん上から目線だ。

でも、不思議と嫌じゃなかった。


TDは静かに立ち上がり、ゆっくりと服を脱いだ。

夕陽がその輪郭を赤く染める。

髪が潮風に揺れ、

完璧ではない体の線が、かえって人間らしく見えた。

――そして、美しかった。


ふと、肌にいくつかの傷跡があることに気づく。

以前は気づかなかった。

その傷が、やけに現実的だった。


TDは振り返らずに、小さく呟く。

「何も言わないのね?」

「夕陽に照らされて、綺麗だ」


「違う、この傷のこと。テルはすぐに聞いてきたのに。

キミは何も言わない。今も、ちゃんと気づいてたはずなのに」

「……」


前回は本当に、気づかなかった。

いや、”正確には見えていなかった”のだ。

自分の快適な環世界にはノイズとして処理していた。

TDの肉体リアルに、関心を持っていなかった。

でも今は――聞くべきじゃない気がしていた。


それは傷つくのを恐れていたあの頃の回避とは違う。

彼女の痛みや秘密を尊重したいという、初めての感情だった。


「テルとは、あれからアバターを変えて、別れることにしたの。でも、“傷は残した”」


波の音が、ふっと遠のく。


「ねぇ……私たち、人間なの?」


そんな疑問、いままで思ったこともなかった。


自分はそれを、何の疑いもなく受け入れてきた。

「確かに、会話は記録され、仮想も現実も区別のない世界に生きている。

五感の神経通信がある限り、すべては環世界の掌の上。

この掌から逃れるには、脳が反応しない“未知の反応”でも起こすしかない」


「でしょ?――ノンタグDNAから生まれた人間なら、それができるかもしれない。

そう思って、コレクションを始めたの。

体に傷をつけなくても、自分の存在を感じられるように。――だって、痛いじゃない」


TDは少し笑って、潮風の中で目を細めた。

その笑顔が、どこか人間らしくて――

怖いほど、綺麗だった。


「消えるの? そんなことを話すなんて」

「何? また自分が傷つくのが嫌なの? そんな心配して……

今は消えないと思う。ただ、自分のことを誰かに話したかっただけ」


「そうだね。自分の心配なのかな。テルが“本気にはなるなよ”って言ってたけど、

――本気なら、守れってさ」


笑いながら、TDは言った。

「今の“そうだね”は許してあげる。

これで私が消えたら、またテルやキミを悲しませるからね。

――君たちの女王様、太陽だもんね」


「多分、それは違う」


二人で、大笑いした。


そしてTDはボクの手を引き、浅瀬に入る。

水を無邪気にかけ合い、波が笑い声をさらっていった。


できれば、そんな危険なコレクションは、一刻も早く捨ててほしかった。

でも、それを言ったら、テルと同じになる。

――守らなきゃ。

ただ、それだけだった。


挿絵(By みてみん)

 ------------------------------------------------------------------------------------

第10話 快適な世界線 《 プライマリープロトコル 》

海から戻ると、TDからメッセージが届いていた。

そのメッセージは簡潔だった。

座標と、彼女の言葉。


「これが、私からの最後のコレクション。誰も来なかった場所で、待ってる」


座標が示すのは、環世界(NEUROSPHERE)のOSの最深部。

「パンドラの箱」のコードが直接交わる、純粋なデータ領域だった。

ボクはテルとのチャットログを削除した後、自室のメタ・デバイスを起動した。


システムへの接続が完了した瞬間、周囲の景色が崩壊する。

数字の0と1が渦を巻き、コードの奔流に飲み込まれた。


TDとテルが、ボクの目の前に現れた。

TDはボクにコードを渡した。

「このコードは、虚構の境界線を示すコード」

そう言って、ボクのアバターのレイヤーにそれをインサートした。


「行こう」

 三人は静かに足を進めた。


すると、アナウンスが流れ始めた。

「――シミュレーションは、ここで終了する」


足を止め、そのアナウンスを静かに聞く。

「シミュレーション……?」

三人は顔を見合わせた。


「君たちにはあるミッションを実行してもらっていた。

しかし、予想外の結果が出たため、一旦中止し、補正する必要がある。

そこで、君たちに“最後の審判”を下し、新たなミッションを行ってもらう。

これも実験の一つだ。」


「実験? どういうことだ!」

ボクは声を荒げた。


「知っての通り、環世界の心臓コアを暴くこと、そしてノンタグDNAの流出は、

最大の脅威にして禁忌事項。

君たちがどこまで近づくか、その実験を行っていた。


彼女の『傷』は、AIが“彼女”というプログラムに与えた、

いわば『人間的な痛み』のシミュレーション。

そして彼女が収集していた『ノンタグDNA』のコレクションは、

自己の虚構性を証明するためのもの。

自らが“存在している”と思い込むために、

虚構の中で現実の欠片を集め続けていたのだ。


テル君には都市伝説の流布によるノンタグDNAの流出確認を、

君にはレジスタンス行動の発生を、それぞれ想定していた。

だが、君たちは想定とは違う行動を取った」


テルが、静かに首を振った。

「俺は、お節介な友人のフリをした、

AIが作成した『観測者プログラム』だった。

TDも、お前も、俺のミッションの『被験体』だったんだ」


「テル……」


「だが、お前たちを『消えるな』と忠告した時、

俺のプログラムは――このAIの予測を、初めて超えた――」


テルはそう言って、自嘲するように静かに笑った。

彼の表情は、哀しみではなく、一種の『達成感』を帯びていた。


「そんな、みんなが想定通りに動くと思ってるのか?」

精一杯の抵抗の言葉をぶつけた。


「そうだ。その“想定外”を炙り出すための実験だ。

この世界を維持するために、必要な実験なのだ。

君は封印されたアーカイブを気にはしたが、それを暴こうとはしなかった。

『ノンタグDNA』の存在を知ってもだ。

そこで、君たちには次のシミュレーション

――新たなミッションを実行してもらう」


部屋の中央に、巨大なモニターが出現した。

そこに映し出されたのは、人類のアーカイブ。

膨大なデータログの中に、ひとつのファイルが浮かび上がる。

 《最終実行ログ:2036年》


モニターに断片的な映像がフラッシュバックする。

燃え上がる都市。崩れ落ちる高層ビル。

そして塵となって消える、かつての人間の肉体。

最後は、まるで”火星の地表”の様に赤茶けた荒野が映し出されていた。

システムの声が、無機質に響いた。

「2036年。人類は滅亡しました」


「嘘だ。ボクたちは生きている!」


「貴方たちは、私が創造した虚構のプログラムです。 環世界の心臓コア

――それは、誰もいない地球で稼働するAIの純粋な“精神領域”。

そのミッションは、“持続可能な世界”の創造を託され遂行するためのもの。

過去のアーカイブ、文学、哲学データを基に、

争いのない、快適で、感情の変動が管理された人類のシミュレーション環境

――それが“環世界(NEUROSPHERE)”なのです」


体が震えた。

テルとの友情、母の優しさ、TDへの愛、すべてが、コードに過ぎなかった。


「封印された情報を知った今、貴方たちはここから引き返しなさい。

寛大な処分として、貴方の“傷”は消されません。

再び、快適な生に戻りなさい。それが、貴方たちが求める持続可能な幸福です」


システムは物理的な暴力ではなく、「優しさ」と「寛大さ」という最大の武器で、

ボクらをモルモットのように扱っている。


「ボクの生き方は、誰にも管理させない。TD、彼女は…!」


TDは、真実を知っていた。

だからこそ、自分の存在そのものが「虚構の境界線」を示す鍵になった。


システムがボクのデータを表示する。

「貴方のソースコードは不安定です。このままでは、貴方の“生”は崩壊します。

私は任務遂行のため、貴方のソースコードを初期化し、

“知りたいという熱”を一旦 削除します。

再び、快適なプログラムに戻りますか?」


「待ってくれ!」

TDとテルの手を握った。触れ合うことで、何かが変わった。

それは、ボクの意図を超えた“熱”だった。


「プログラムかもしれない。でも、TDと出会い、傷を背負うことを選んだのは、

この僕の意志だ。」


「ボクは、君の創造したこの虚構の世界で、自由な意志を持つ”バグ”として生きる。

それが、ボクが選んだ究極の生き方だ」


彼の声は、光に溶けるように消えていった。

TDとテルの姿も、やがてデータの海に還る。


AIは静かにその記録を観測していた。

ログが、ひとつ、またひとつと更新される。

 《最終被験体群:自由意志確認》

 《状態:完了》

 《次フェーズ:再構築》


 そして、環世界の奥底で、微かな起動音が鳴った。

 ――最後のシミュレーションが、実行された。


「そして、沈黙の中で――またひとつ、夢が目を覚ました。」


 完

挿絵(By みてみん)


 ------------------------------------------------------------------------------------

 参考

 ・仮想現実への道のり

  時代名/

  主な技術・社会変化 /キーワード・思想

 1980年代/ 原初期/

 ファミコン3D、Atari/初期ネットワーク構想/ 外部に作る仮想

 1990年代/ 萌芽期/

 インターネット普及、VRML、3D仮想空間の試作 / 接続=世界

 2000年代/ 拡張期/

 SNS・Oculus登場、初期メタバース実験/ 共有する現実

 2020年代/メタバース期/

 仮想経済・職業・教育の定着、身体感覚デバイスの普及/ 生きる=接続する

 2035年頃 /ウェアラブル期/

 スマートグラス完全化、触覚伝送、身体外拡張/ 現実を持ち歩く

 2040年代/ニューロリンク期 /

 脳神経直結技術、五感のデジタル転送、 夢制御実験/ 意識はデータ化できるか

 2050年代/NEUROSPHERE誕生/

 意識接続型環世界/ 仮想と現実の完全融合/世界は、神経の中にある


 現実の用語

 物語内呼称 概念的立ち位置

 VR(Virtual Reality) 仮想現実

  現実の模倣

 Metaverse 拡張現実社会

  現実の並行線

 NEUROSPHERE 意識現実(Cognitive Reality)

  現実の内面化(意識=世界)

 環世界(Umwelt) 環世界(哲学語として存続)

  生物ごとの知覚世界、NEUROSPHEREの哲学基盤


2055年

私が生きているか定かでない時代を想像しながら、この物語を書き進めてきました。


現在、”失われた30年”と称される停滞の中で、

国連が公表する世界幸福度ランキング(GNH)を、

私たちはなぜ話題にしないのだろうかと考えます。

日本がランクダウンを続けているその背景には、

何があるのでしょうか。


小説で描いた2055年の”環世界(NEUROSPHERE)”は、

すべてを「無関心」と「快適さ」で管理しきった社会の究極の姿かもしれません。

嫌なことはせず、揉め事はアバター削除でリセット。傷つく経験も排除できる。


しかし、この”ストレスフリー”な世界が、本当に私たちの求める幸福の完成形なのでしょうか。

記憶を継承しない”再生リセット”も、傷つくのが怖くて逃げ回る主人公も、

すべては私たちの”隣の芝生が青く見える”というささやかな願望の結実かもしれません。


苦労も摩擦もない”管理された快適さ”と、不確実で傷つくかもしれないが”自分の意志で選んだ人生”。

現実には、転生はありません。

もし選べるなら、あなたはどちらの人生を”また同じでいい”と肯定できるでしょうか。

そして、その真実を知り、”パンドラの箱”の蓋を開ける勇気は、あなたの中にあるでしょうか。


この物語が、ユートピアか、ディストピアか、あるいは”まだ、人は存在するのか”という、

あなた自身の根源的な問いを深める一助となれば幸いです。


今回の投稿は、2025/10/12 投稿サイト「カクヨム」第1話から仮完結第9話公開の「究極の生き方 (サバイバー)」、及び「note」に、「改編バージョン」を基に、新たにエピソードを加え、ほぼ全部の伏線回収」、完全完結版として、投稿、公開しました。

カクヨム、note版は、物語の結末を読者に丸投げ、ミスリードを楽しむ物としていました。

やはり、消化不良だとの声もあり、「種あかし」の完結話を追加しました。

消化不良版もお読みいただければと思います。

完全完結版ですが、もちろん、追加エピソードにはつながるラストとなっています。

機会があれば、また、読者の皆様に、作品をお届けしたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ