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風にのって


烈しい日の中、昼間の下り列車は緩やかな時間の中をゆく。河津桜を見て、こんな年になったかと思う。少ししなびた学ランが物悲しかった。この時期は桜ばかりだから、正直もう僕は少し飽きつつある。特に今年は綺麗さや美しさよりも、陰を孕んだ醜穢な所が目立って仕方ない。桜というものが本当に美しいのか、僕の中では疑念が湧きたっていた。しかし僕は時の儚さに感化された訳では無い。ただ視覚として、美しさを見失ったのである。


各停の列車は人気(ひとけ)の少ない駅に止まった。ドアからぬるい微風が入ってくる。いつの日か、何度も知った匂いだった。

普遍を、無常を知る。別に、何らかなしいことも無い。ただ、時の流れを感じていた。ちょうど最近、日本史を勉強してるから、その論理性や連関を面白く思っていた。過ぎし時も、今に何ら変わらない。繋がった時の中を、僕らはただ過ぎてゆく。永遠と思っていたことはついに僕の心にのみ残る。当たり前のことが、大きく感じられる。大袈裟だと言って、恥じることでもないだろう。


I'll hold on to my old days, takin' them as little things……


しばらくして、最寄りに着いた。列車の過ぎたあと、線路脇の青草たちが波のように揺れていた。眩しい日の下であった。

僕は思い出を、見えないところで抱きしめる。膨張しすぎた幸の酔いも、鬱結した広漠な暗がりも全て縮めてしまおう。みんな、ささやかなものとしてしまおう。

慣れ親しんだ近所の路地で、影はただ静かに横たわっていた。


As time goes by……

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