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短い時
西の空はなんの痛みもなく柔らかく染まっている。ぼやけた山の輪郭は遠く届かないまま、夢中の霧のような薄いピンクに覆われていた。
美しい星に訪れた夕暮れ時の瞬間……そんな歌を口ずさんだ。何も悲しさなんてなく、冬の名残を少し感じた。静かに眠りへと向かう町。または退廃のようにも見えた。天球にはまだ楽観的な明るさが漂う。そんな凪った遠浅の海を、僕はしばらく見上げていた。
雀だろうか、小鳥の何羽かが屋根の上から飛び立つ。徐々に暗がりが増えてきて、すっかり雲の形も変わってしまった。僕もそろそろ部屋に戻るとするか。