表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モノカタリ  作者: タイワ
4/5

ときよっつ

身長が伸びた時、どう思った?

嬉しい? そりゃそうか。普通はそう思うもんだよね。

え? 僕? 僕はそうは思わない。

全然、逆張りとかじゃなくてね。まあ逆張りだと思ってくれても別にいいけど……

なんでかっていうと、僕のベッド、2段ベッドなんだけど、そりゃあ、小学生の頃とかは、2段ベッドの上は床に立ちながらだと見れないわけじゃん?

でも、身長が伸びたら、上が見えるようになった。景色が、変わったんだ。

「見える世界が変わったってことじゃん」って言うと、なんだかポジティブに聞こえちゃうけど、僕にとってはそうじゃない。

「見える世界が変わった」ってことは、もう二度と、昔の景色を見れないということ。いつだったか忘れたけど……中2か、中3か、まあ、そんくらいの時期に、それを悟った。時期はそんな重要じゃないけどね。こんなに早くそれに気づいた自分を知らしめたいだけ。愚かだね。

笑ってよ。それくらいの方が話しやすいでしょ?

なんで嫌なのか? 決まってるよ。

だって、寂しい、じゃん。昔に見た旅行中の景色が頭に戻ってくるたびに、それが、楽しかった思い出としてじゃなくて、もう二度と帰れない景色として流れるのが。

そんなことを感じてしまう自分を、連れて行ってくれた親に対して失礼だと思うし、薄情だと思う。でも、その感性っていうのは人それぞれにあるものだし、言い訳はできる。

かと言って、それで戻れるのかって言ったら、そうじゃない。

無駄な、過去への固執なんだよ。どうしても、昔から未来に対して前向きになれない。

どうしてみんな未来に向かって頑張れるんだろう。未来のことをずっと頭の片隅に置いておけるんだろう。

よくいうじゃん、将来のことを考えたら勉強頑張らなきゃって気持ちになるって。それで行動できる人って、きっといるんだろうけど、どういう脳の構造してるんだろう。僕が異端なのかな?

ああ、ごめん、話が逸れたね。

まぁ結局、何が言いたいのかっていうと、僕はきっと変化が嫌いなんだろう……と。それだけ。

いつから変化を恐れ始めたのか、自覚し始めたのか。もう、わかんないけど。

君は怖くないの? 僕は怖いよ。


僕は、小説を書いてるから、書きたいことがなくなることが怖い。

僕は、自分の中にある世界が、いつか壊れてしまうんじゃないかなって、怖い。

大人になって環境が変わったら、自然とそうなっていくんだろう。変化は避けられない。

昔だったら、ずっと死にたいって感情をもててた。その感情をどうにか押し殺しながらも、誰かに訴えたいと願っていた自分に対して酔いしれていた。

でも、この先、そんな感性もなくなってしまったら、僕は一体何を頼りにして生きていけばいいんだろう。何も成せない人生なんて、嫌なのに。

君たちには、自分で思い浮かべた空想とか理想なんてものは、ないのかな。

あるとしたら、どうして変化を受け入れられるのかな。

テセウスの船って、こういうことを言うのかなって、今ちょうど思ったよ。そして、はっきり言える。別物だよ。

僕は産まれるために、前の自分を殺して殺して殺し続けて、あげく前の自分の夢を奪って握り潰そうとしてる。

気づきたくなかったよ、こんな事実。


でも、一つ言える。

僕は、今ここにいる。

「過去の自分」という、屍の上に立っている。

そう考えたら、なんだか、報いたくなってきたかもしれないな。

……ま、行動には移せないんだろうな。僕のことだし。

こういうところに対しては変化を望むようになったくせに、いまだに変化を嫌うのは、ほんと、なんなんだろうな。人って、おもしろい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ