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神様、どうか目をつぶってください!

作者: 山本 歩乃理

 それを目の当たりにしたとき、不謹慎にも『本当だあ』と軽く感動してしまった。

 壁があるわけでもない。

 林の中の何もない空間に、脈絡もなく浮かんでいる、紛うことなき穴──


 膝くらいの高さにぽっかり空いている。

 直径は確実に50センチもない。

 うーん……下手をすると40センチもないかも……

 屈んで覗き込んでみたが、穴の向こう側は真っ暗で何も見えない。


「あのう……本当に私がここに入らないといけないんですか?」


 自分の声がくぐもって聴こえた。

 それというのも、神に仕える聖女に全くもって相応しくない兜を被せられているから!


 私の真横に立つ神官長が耳打ちしてきた。


「瘴気が漏れ出ているでもないのだから、早く行きなさいっ」


 無駄とわかっていても、恐る恐る国王陛下を横目で見上げると、陛下は力強く頷いてきた。


「聖女ジョセフィーヌ、君にしかできないことだ。しっかり頼む!」


 何が『聖女』よ。

 つい1時間前までは、下っ端の聖女見習いだったのに。

 不運にも魔王との交渉役に任命されたせいで、急遽聖女に昇格させられた、というだけの話なのだ。


 絶望感でいっぱいになったそのとき、何かがシュッっと穴から抜け出てきた。


「あー……」


 咄嗟のことに一歩も動けない私。

 それとは対照的に、神官長の素早いこと!

 腰を曲げ、それを思いっきり掴むと、光速で穴の中へ投げ返してしまった。


「……お、おお!」

「……見事な……」


 陛下と近衛兵たちがパラパラと拍手した。

 一応は称賛しているものの、一様にドン引きしている。


「神官長、神官長が行ってくださいよ!」

「な、何を言っているんだ。第一、私は腰が悪いから、この穴を通ることなどできないっ」


 えっ、たった今素晴らしい身のこなしでしたよね?


 私は神官長の腰を細目でみた。


 あっ、でも確かに……

 腰というか、腰回りというか、そのお腹ではこの穴は通ることはできそうにありませんね……


 ああ、ですが神様! 本当に私が行かねばならないのでしょうか?

 このような試練、どう考えても乗り越えられる気がしないのですが!


 さきほどのあれはゴブリンである。

 最近街に出没して悪さをしては、善良な市民のみなさんを怖がらせている。

 そこで先日陛下の指示により大規模な調査がおこなわれ、ここ街道沿いの林でこの穴が発見されたという次第だ。


 陛下は、『直ちにゴブリンの侵入口となっている穴を塞ぐべき』だと判断された。

 と、それはいい。

 至極当然の流れだ。

 王国中が納得している。

 もちろん私だってそのひとり。

 しがない聖女見習いとはいえ、常々世界規模での平和を願っているもの!


 しかし、問題はここからなのだ。

 この穴を塞いでくれるよう魔王に頼みにいくのが、なぜゆえ私なの?

 なぜ? なぜ!?

 どうしても解せなーい!


 恨めしい気持ちで、再度神官長に視線をやった。


「ほら、魔王との交渉役として召喚されたのだから、胸を張って行きなさい」

「あれのどこが召喚ですか!」

「しっ! ジョセフィーヌよ、今さらどうにもできないのは理解できるだろう? とにかく行くだけ行ってきなさい。様子だけ確認したら、すぐに帰ってきてもいいから」


 神官長の言う通りだ。

 陛下と近衛兵に取り囲まれているこの状況では、逃亡することも到底できそうにない。


 ため息を吐き、頭から穴に入っていく覚悟を決めた私は、ゆっくりと膝をついた。

 のろのろしているのは、この期に及んでも往生際が悪いからでは決してない。

 無理やり着せられたこの鎧と兜が重いからだ!


 プルプル震えながら、どうにか頭を穴の高さに合わせたが、兜が重すぎて頭部ごと取れてしまいそう……

 こんなときに思い浮かぶのは、あの召喚の儀だった。

 今朝おこなわれた、魔王との交渉役を任せる勇者を異世界から呼ぶための──


 ゴブリンが出入りしているこの穴は、魔界へと通じている。

 そして、この穴を塞ぐことができるのは、魔界の王のみである──


 下っ端の私はその場にはいなかったが、伝え聞いたところでは、神官長は陛下にそう説明したそうだ。

 さらに、『その交渉役として勇者を召喚するべき』だと提案したとも。


 召喚の儀をおこなうのは、空気が澄んでいる早朝でなければならないだとかで、私はまだ空が暗いうちから神殿の掃除を命じられた。

 にも拘らず、文句は思うだけに留めて、心をこめて磨き上げた。

 この国を救ってくださる勇者をお迎えするためだもの!


 掃除が終わると同時に、神官長が点検に現れた。


「うむ。ジョセフィーヌ、よくやったな。これならば、必ずや勇者様もやってきてくださるであろう」


 神官長から直接お褒めいただけるなんて!

 あのときの私は、無邪気に感激していた。


 だけど、なーにが『勇者様もやってきてくださるであろう』よ! ふーんだ。

 ……あっ! 神様、今の悪態はどうか聞かなかったことに……


 とにかく、そうこうするうちに陛下もお見えになって、いよいよ召喚の儀が始まった。

 隅っこで見学させてもらえることになった私は、ドキドキしながら、神官長が勇者様を召喚するのを待っていた。

 そして、ついにその瞬間はやってきた──


 ……はずが、まさにそのとき、私は神殿の柱の陰から、神官長の前に瞬間移動させられていた。


「えっ、何? どういうこと?」


 神官長の顔は引きつっていた。

 しかし、声を張り上げた。


「召喚は成功した! この者こそが神のお連れし勇者である!!」


 私は周りを見回した。

 けれども勇者なんてどこにもいない。

 私がいるだけ。


「よもや、我らの仲間ジョセフィーヌが召喚されようとは! しかし彼女こそが勇者である!」

「な、そんなはず……」

「しっ!」


 神官長は怖い顔で睨んできた。


「この場は黙っていなさい」

「そんな……」


 今さら何を言おうと、かき消されてしまうほどの大歓声が上がっていた。

 どうにもできなかった。

 そうして、『勇者』ではなく『聖女』の肩書をもらうことになり、穴の前に連れてこられたのだった。


 ああ、神官長がどれだけ言い張ったところで、あれは絶対に召喚ではなく単なる転移だったのに!

 それもほんの数十メートルの──


 それでも魔王との交渉役として転移されてしまった以上、恨み言はこれくらいにして、そろそろ行かなくては。


 流石の神官長も固唾を飲んだ。

 これで私が戻ってこなかったら、召喚の儀で失敗したことを悔やんでくれるかしら?


 でも、ご心配なく。

 私なんて、本当は勇者でも聖女でもなく、ただの聖女見習いなんですもの。

 魔界に一瞬だけお邪魔して、瞬きしている間に帰ってきますからね。ふふっ。

 さあ、参りましょうか!


 ……ガッ!!

 あら? もう一度……ぐうっ!


 兜が大きすぎて穴に入らなかった。

 近衛兵たちは堪えきれず失笑し始めた。


 私は、首の骨がぽっきり折れてしまいそうなほど重い兜を脱ぎ捨ててやった。

 ついでに鎧も。


 考えてもみれば、こんな格好する必要なんてない。

 戦いを挑みに行くわけではないんだから。


 ガチャガチャという金属音が、笑い声をかき消してくれた。

 身軽になって清々した気分だ。

 空気がおいしい。


「それでは、ほんのちょっとだけ魔界に行ってまいります!」

 

 私はこうして魔界へ入っていったのだった。



 あっ、おしりが引っかかって……

 両手を地面につき、どうにかおしりを引っぱる。


「ぐぬぬぬぬ……」


 このままでは、私のおしりが穴を塞ぐことになってしまう。

 ゴブリンがやってこなくて街が平和になるのはいいことだけれど、人々は街道を通る度に私のおしりを指差して笑っていくだろう。

 ひょっとしたら、私のおしりが観光地になってしまうかもしれない。

 それは何があっても回避しなくては!


 聖女見習いとして、どんなに過酷な修行にも耐えてきたじゃないの。

 がんばるのよ、私!


「ふんぬっ! ……はあ、はあ、抜けたー」


 パチパチと小さな拍手が起こった。

 また陛下と近衛兵たちに違いない。


 けれど、それに応えるような余力はなく、私はしばらく地面に突っ伏していた。

 明日は二の腕が筋肉痛なんだろうな、とぼんやり考えた。


 呼吸が整ってきたあたりで、ゆっくりと上体を起こした。


「きゃっ!」


 地面に座った体勢のまま、飛び上がった。

 だって、20体ほどのゴブリンが『ギィギィ』と声を立てながら、手を叩いていたから!

 穴を抜けるのに力を使い果たしていたせいで、拍手のする方向にまるで気づいていなかったが、なんと後方からではなく前方からしていたのだ。


 なるほど、ゴブリンたちは穴の通り抜けがスムーズにできそうなサイズだ。

 どれも7、8歳の子どもくらいの背丈で、おしりも小さい。


 このままバックして人間界へ戻りたいところだけれど、今すぐ襲ってきそうな雰囲気もないことだし、ひと言お願いするだけしておこう。

 立ち上がって、おへその前で手を組み、最大限感じよく映るようにお辞儀した。


「私、人間界から参りました聖女ジョセフィーヌと申します。突然訪問いたしましたのは、この穴を塞いでもらいたくて……って、ち、ちょっと、どこに連れていくつもりですか?」


 ゴブリンは『ギイッ! ギギィー!』と叫びながら、一斉に私を担いだ。


「いやっ、離してください!」


 身を捩って脱出しようとしたけれど、無駄な抵抗でしかなかった。

 身動きがとれない私は、禍々しくそびえ立つ建物へと簡単に運びこまれてしまったのだった。



「痛っ……!」


 気だるそうにカウチに寝そべる男性の前に投げ出された私は、思わず目を見開いた。

 石の床に投げ出された痛さなど、あっさりと吹き飛んでしまった。


 ああ、神様!

 このような不浄な場所でお会いできるとは!


 ひと目見ただけで、心を搔っさらわれてしまった。

 世界が一変する。

 出会う前の私にはもう戻れないだろう。

 でも、それでいい。


 人外の美しさ!

 これぞ、私が思い描いていた通りのおすが……

 あらら? その角は? えっ、尻尾まで!?


 まじまじと見ると、その顔色は悪く、とても不健康そう。

 思い描いていたお姿とは、少しばかりでなく違って見えた。


「君……は……? 誰?」

「あっ、私は聖女ジョセフィーヌと申します!」


 神様も目を瞠っている。

 人間が唐突にお邪魔したことに驚いているのだろう。


「聖女? それで、ジョゼは何しに魔王城に? 魔王と聖女って、まさかそういう展開……」

「ま、魔王城なのですか、ここは?」


 つまり、目の前にいるのは神様ではなく魔王様!?


 一番星よりも眩しかったはずの感動は、真っ暗な恐怖にすり替わった。

 歯がカチカチ鳴り始める。


「魔王城だけど? で? で? 君は遥々こんなところまで何しに来たの?」


 そうだ、私は魔王様に用があるんだった。

 怯えているだけではいけない。

 話を聞いてもらえるなら、しっかりしないと!


 震えてしまってはいたけれど、どうにか聞き取ってもらえるであろう声を発することはできた。


「あ……な……が、空いておりまして! 人間界……と魔界の間に……」

「へえ、穴が。それで観光しに?」

「い、いいえ、とんでもありません! 観光に来られているのは、そちらの……ゴブ、ゴブリンです」

「えー、いいなー」

「ちっともよくなんか、ありません……揚げパン屋のおかみが、揚げたてのパンに砂糖をまぶし終えたタイミングで、その……盗んで試食したりとか……」

「おいしそう」

「おいしいです。ですが……無銭飲食はいけません」


 話しているうちに、不思議と魔王様と話すことに対する恐怖心は薄れていった。

 魔王様が機嫌よさそうに、微笑みながら聞いてくれるのが大きかったのかもしれない。


「それから、子どもたちが読み書きを習っている教室に乱入し、子どもたちの席を奪い、代わりに授業を受けようとしたことも……」

「感心じゃないか」

「向上心があるのはいいことですが、子どもたちの学ぶ機会を横取りしてはいけません」


 魔王様はぷくっと頬を膨らませた。


「そんな顔をしても駄目です。穴を塞いで、ゴブリンが人間界に来られないようにしてください」

「えー」

「お互いの平和を保つために、魔界と人間界を分けると決めて、実際に分けたのは魔王様なんですよね?」

「そうだけど……」


 今から100年ほど前のことだと伝えられている。

 人間のほうはイタズラを繰り返す魔族たちに困っていたし、魔族のほうは魔族のほうで、魔族の子どもをお菓子でつって重労働させる人間に不満を抱いていた。

 そこで両者は話し合いをおこない、世界を真っ二つに分断することを決めた──

 誰もが知る歴史だ。


「僕、ここんとこ体調不良が続いてるんだよね。だから結界に穴が空いたんだな。魔法使うのには関係ないけど、ギックリ腰にもなっちゃってるし。この通り、満身創痍なわけ。わかってもらえるかな?」

「……ということは体調さえよくなれば?」

「まあ、簡単に塞げると思うけどさー」


 それなら私の得意分野だ。

 聖女……というか、つい先ほどまで聖女見習いだったけれど、医療分野ならお任せあれ。


「触診させてもらいますね」


 『えっ? えっ?』と戸惑う魔王様の背中から腰に、ペタペタと手を当てた。


「体調不良の原因は、病ではなさそうですね。不摂生やメンタルからきているのかもしれません……」

「あー」


 気だるげな返事。

 心あたりがありそう。


「そちらはすぐに治せるものでもないので、とりあえずギックリ腰からいきますね」

「それって、ジョゼがギックリ腰を治してくれるってこと?」


 魔界からでも、神様に声が届くかしら……

 一瞬悩んだが、すぐにかぶりを振った。

 大丈夫に決まっているじゃない。

 たとえどこにいようとも神様はきっと聞いていてくださるはず。


 私は跪き、両手を組み、天を仰いだ。


「神様、結界に開いた穴を塞ぐためとはいえ、邪悪な者に神聖な治癒魔法を施すこと、どうぞお許し……」

「……酷い」

「何か言いました?」

「失礼すぎじゃない?」

「えっ?」


 魔王様が白目をむいた。


「もういいや。何でもいいから、この邪悪なギックリ腰を神聖な治癒魔法で治してよ」

「お任せください。神様は魔王様であっても見捨てたりはしませんから」

「はい、はい」


 魔王様はとても渋い顔をしていたけれど、治癒魔法が効いてくるとその表情を柔らかくした。


「どうですか? 起き上がれそうですか?」


 魔王様はカウチに座り、どさっと背もたれに倒れかかった。


「体はダルいけど、腰は全然痛くないよ」

「そうでしょう、そうでしょう」


 私は、『うん、うん』と大きく頷いた。


 これで魔王様にも神様の偉大さが伝わったはず……

 あら? ということは、もしかして魔界で布教活動ができてしまったのでは?

 そうだとしたら、神官長の召喚失敗で聖女になってしまった私だけど、正真正銘の聖女になれるかも。

 だったら、この調子でがんばらないと!


「ジョゼ、素晴らしいよ。ねえ、よかったら僕の……」

「さあ、次はその体調不良をどうにかしましょうか!」

「……あー、そうだねー。頼むよー」

「ご自分のことなのに、投げやりな言い方ですね。そんなことでは駄目ですよ」


 そうは言ってみたけれど、それもこれも体調不良が原因に違いなかった。

 神様の力をお借りして、活力が湧いてくるようにしてあげなくては。

 そうして、その暁にはちゃちゃっと穴を塞いでもらいましょう。


「さーて……」


 私は腰に手を当てて、魔王様と自分のいる部屋を見回した。


 この部屋に担ぎ込まれてから、ずっと気になっていた。


「掃除、していますか?」


 四方には埃が堆積しているし、空気も澱んでいて、呼吸するだけで肺が汚染されそうだ。


「してない」

「どのくらいですか?」

「魔界と人間界を分断してからだから、ざっと100年くらいかな」

「ひいぃ、不潔!」


 思わず身震いした。


「それでは心身ともに病気になって当然ですよー!」

「以前は人間も雇用してたから、彼らが掃除してくれてたんだけど……」


 私は自分の胸をパンッ! と叩いた。


「お任せください」


 場を清めるための掃除は、それこそ聖女見習いとして必須の技術だ。

 ただ……


「……私ひとりでお城中を掃除するには何ヶ月かかるかわかりませんけど」


 何部屋あるのだろう……

 最後の部屋を掃除し終えた頃には、最初の部屋にまた埃が積もり始めていそう……

 途方もなくて目眩がする。


「なら、ゴブリンたちに手伝わせてやってよ」


 私をここに連れてきたゴブリンたちが『ギィギィ』と手を叩いた。

 飛び跳ねている者もいる。


「いいんですか?」

「僕がこの通りで構ってやれないから、退屈して人間界で悪さしてるんだ。掃除の仕方を教えてやってくれない?」

「やってみます! 言葉が一方通行なのが若干心配ではありますが……」


 ゴブリンの反応を見る限り、ゴブリンには私の言葉が通じているみたいだ。

 けれど、私にはゴブリンの話していることはわからない。


「そっかー」

「な、何……」


 突如視界が暗くなった。

 魔王様の腕が伸びてきたのだ。

 ガシッ! と、その大きな手が私の前頭部を掴んだ。

 長く鋭い爪が頭皮に食い込む。


 卑怯だわ!

 逃げようなんて露ほども考えないほどに、すっかり油断させておいてから、こうして手を出してくるなんて。


 硬直してしまった私の体は、もはや悲鳴すらも出せない。

 恐怖で鼻の奥がツンとした。


 と、魔王様の腕がスルッと離れた。


「これでいい。ジョゼにも、全種族の言葉が理解できる魔法をかけたよ」


 頭を押さえていた力が緩んだ途端、私はその場にヘロヘロと座り込んでしまった。

 呼吸が苦しく、肩が上下する。


「……こ、怖かった」

「あっ、ごめんね」

「神様、この命を助けていただいたこと、心から感謝します」

「ええっ? そこって、僕に感謝するんじゃないの?」


 まだ動悸がおさまらず、へたり込んでいた私の周りをゴブリンたちが囲んだ。


「ジョゼ、俺の言葉わかる?」

「わかったら返事してよ」

「僕のは? ねえ、わかる?」

「それよりも早く立って掃除しようよ」


 ほんの数分前まで『ギィ』としか聞こえなかった声が、意味のある言葉に変わっていた。



 魔王様がよく使用する部屋から順番に掃除していくことにした。

 まずは魔王様がいた、この部屋から。


「それでは始めます。ゴブリンのみなさん、準備はいいですか?」


 魔王城にある掃除道具は1世紀を経て、使い物にならなくなっていた。

 ゴブリンたちが今手に持っているのは、雑巾サイズに切っただけの古布や、棒に古布を巻き付けただけの即席お掃除グッズだ。


「オッケー」

「高いところからやればいいんでしょ?」


 気合は十分だし、私の説明もきちんと聞いて理解してくれている。

 なんだ、いい子たちじゃないの。


 ちなみに魔王様は、ゴブリンに頼んでカウチごと庭園に運び出してもらった。

 新鮮な空気の中で、お昼寝してもらうことにしたのだ。


「ゆっくり、平行に持ち上げて……1、2、1,2……」

「やあ、ジョゼは立派なゴブリン・テイマーだな」


 魔王様はおかしそうに笑ったが、あのとき私は傷ついた。

 聖女らしくなりたかったのが、まさかの魔物使いだなんて……

 い、いいえ! ゴブリンと一緒に魔王城を掃除できたのなら、立派な聖女になれるはずだわ。


 しかし、気を取り直して見上げた天井は、とても高かった。


「どうしましょうか……」

「平気、平気」


 ゴブリンたちは『きゃっきゃ』と楽しそうに梯子を持ってきて、即席のはたきで掃除していく。


「貴方たち、掃除できるじゃないの。どうして今までしてこなかったの?」

「だって、掃除しないと魔王様が病気になるって知らなかったんだもん。洗濯はしてたし、お風呂にも入ってたし」

「それにしたって……」

「僕たちだけじゃつまんないんだもん」

「でも、ジョゼとなら楽しいよ! これからはやる」


 そこまで言ってもらえると、私も気分がいい。


「最後の仕上げは任せてちょうだい」


 床の雑巾がけまで終わって、部屋中の蜘蛛の巣や塵、埃を除去したところで、私はいよいよ浄化魔法を唱えた。

 どこもかしこも聖なる光でピカピカに輝く。


「ジョゼ、かっこいい!」

「これで魔王様は元気になる?」

「なるわ。あとはバランスのいい食事……って、魔王様の食事はいつもどうしているの?」


 訊きながら、嫌な予感がした。


「厨房があるよ。そこでお肉を焼いたり、野菜を煮たり……」

「ねえ、そこに連れていってくれる?」



 予感は的中しないでほしかったのに、見事なまでに的中した。

 床も壁も油汚れでベタベタしている。

 あちこちに散乱する生ゴミも目に入った。

 全身鳥肌が立つ。


「次は厨房を徹底的にお掃除しまーすっ!」


 金切り声になってしまった。

 けれど、踵を返して逃げなかっただけでも褒めてほしい。


「神様、聖水をこのようなことに使ってしまう私をどうかお許しください」

「ジョゼって、そればっかだね」

「毎回それ言わないといけないの?」


 『ぷぷっ』と笑うゴブリンたちを睨めつけ、それから高圧で聖水をぶちまけてやった。

 ゴブリンたちは悲鳴を上げながら、厨房から一時避難していく。

 でも相変わらず楽しそうだ。


 厨房全体を高圧洗浄した。

 出しっぱなしの鍋やフライパンもまとめて。

 聖水は汚れを含みながら、壁から床へと流れ落ちる。

 そうして、聖水が洗い流したあとは、全てがキラキラと光り輝く。


「これでいいわ。みんな、調理器具を清潔な布で拭いてくれる?」


 みんなは、『はーい』と素直に指示に従ってくれた。


「聖女ってすごいんだね」

「ふふん、そうでしょう?」


 『聖女』と呼ばれて、誇らしい気持ちになった。


「ねえ、魔王様の部屋もこうやって洗えばよかったんじゃないの?」


 ぐうっ!

 所詮は、付け焼き刃で『聖女』の称号をもらっただけの聖女見習いなのだ。

 厨房を清めるための聖水を出すだけで魔力切れ……

 あのだだっ広い部屋なんて、とてもではないけれど無理だ。


「ごめんなさい。これが私の精いっぱいなの。これ以上は聖魔法を使えないから、今日のところはおいとまするわ」


 退出しようとすると、ゴブリンたちが厨房の出入り口を立ち塞いだ。

 慌てていたせいで、拭いていた調理器具を握りしめたまま。


「聖魔法なんて使えなくてもいいから、まだ帰らないで」

「そうだよ、夕食も一緒に作って、一緒に食べよう?」

「魔王様だってジョゼが来たから楽しそうにしてるのに、帰っちゃったら哀しむよ」


 つぶらな瞳で懇願されて断れるはずがない。


「何を作る予定なの?」

「いつも適当に煮るか焼くかしてる。今日のメイン食材は一角兎で、ほかに野菜もいろいろあるよ」

「材料を見せてくれる?」

「これだよ」


 兎肉は氷漬けにされていて、野菜は無造作に木箱に放り込まれている。

 一角兎はともかくとして、野菜のほうは若干大きかったり色が濃かったりという違いはあるものの、見慣れたものが多い。

 ほんの100年前までは人間界と繋がっていたのだから、特段驚くようなことでもないだろう。


「魔王様のために消化にいいものにしたいわ。兎肉と野菜のスープ、それからマッシュポテトにしましょう。本当は、血行をよくする薬草もあれば完璧なんだけど……」

「血行をよくするかはわかんないけど、薬草ならいっぱいあるよ」

「そうなの? どこに?」

「今魔王様がいる庭園」

「それはぜひ案内してほしいわ!」


 私は手ごろな籠を見つけて拾い上げ、ゴブリンたちのあとをついていった。



「みんな、いい? 静かに行くわよ」


 私の小声での呼びかけに、ゴブリンたちは頷いた。

 けれど私たちが近づくと、魔王様はうっすらと目を開けてしまった。


「ごめんなさい。起こしてしまいましたね」

「いや。ずっと起きてて、目を閉じてただけなんだ。ジョゼはどうしてここに?」

「私は薬草を探しに……」

「ジョゼ、こっち! こっち!」

「すぐ行くわー。少し騒がしくしてしまいますが、魔王様は気にせず休んでいてくださいね。あっ、それともお部屋に戻りますか? またゴブリンたちに運んでもらいます?」

「いや、いいよ。ここは風が心地いいし、見学させてほしいな」

「わかりました。では、失礼しますね」


 ぺこりとお辞儀をして、ゴブリンたちの手招きするほうへ向かった。


「ジョゼが言ってた薬草ある?」


 自生している薬草は、茂みを作っていた。

 たくさんの種類の薬草が絡み合っている。

 私がそれを丁寧にほどいてひとつひとつ調べている間、ゴブリンたちは期待に満ちた眼差しで黙って待っていた。


「これと、これ。それとこれも。いっぱい集めてくれる?」

「それ全部血行をよくするの?」

「血行にいいのはこれ。こっちは消化を助けてくれて、そっちのは安眠効果があるの」

「聖女って薬草にも詳しいんだね」

「まあね」


 鼻を高くしたが、聖女見習いでもこの程度の薬草の知識はもっていて当然だ。

 神殿は病院も経営していて、聖女見習いも日常的にそこで奉仕している。

 聖魔法による治療だけでなく、入院患者の食事を用意するのも私たちの仕事なのだ。


 ゴブリンたちは、我先にと茂みに突撃していく。


「いいなー、楽しそうで」


 耳元で声がしたので、びっくりして振り向いた。


「ゆっくりしていてください」

「ジョゼが来てくれてから、少し休んだだけでもずいぶん体調がよくなったんだ」

「気のせいですよ」

「いや、本当に。魔王城に光が射したみたい。僕だけじゃなくて、ゴブリンたちもあんなに楽しそうだし……」


 そこまで言うと、魔王様は急に話すのを止めた。

 そして私の顔を覗き込んできた。


「あの……?」


 近すぎて、ドギマギしてしまう。

 魔王様の申告は正しいのかもしれない。

 顔色がよくなって、神々しい美しさもパワーアップしている。


「ジョゼがほしいな」


 な、な、な……!


「げ、元気になったのなら、もう穴も塞げるんではないでしょうか!?」

「穴? ああ、今すぐ塞いでしまえばいいのか……?」

「はいぃ? 何怖いこと考えているんですか!」


 それって、つまり私が人間界に戻れなくなるってこと!


「ほら、僕は魔王だから」

「それは知ってる、知ってます!」


 ひいぃー!!


「帰り道を封鎖なんてしなくても、魔王城の掃除が終わるまでは毎日通うって約束しますから!」


 まだ閉じないでー!


 そのときタイミングよく、少し離れたところにいるゴブリンが、薬草のこんもり山盛りになった籠を高く掲げて見せてきた。


「ジョゼー、薬草はこのくらいでいい?」

「ち、ちょっと見せてー」


 そのお陰で私は不穏な会話から逃げ出すことができた。

 あ、危なかった……



「魔王様、今日はいっぱい食べるね」

「君らほどじゃないけど、ジョゼのごはんは美味しいからね」

「お口に合うならうれしいです。でも、魔王様の手際だってよかったですよ」


 『少し体を動かしたくなった』というので、魔王様まで夕食作りに参加したのだ。

 また体調を悪くしてしまわないか心配だったけれど、今のところは平気そう。


 何より、きちんと量を食べられている。

 これなら回復も早いはず。

 とてもいいことだ、うん。


「片付けまで済んだら、私は人間界に戻りますね。明日は朝から来てもいいですか?」

「えっ!?」


 魔王様もゴブリンも、みんなして同じ顔で私を凝視してきた。

 ううん、その中で魔王様はひときわ大きく目を見開いているかも。


「魔王城に泊まりなよ」

「僕ら、もうひと部屋くらい掃除するから」

「そうだよ、夜遅いし危ないよ」


 実際ゴブリンの言う通りだった。

 林の中に出たところで、そこから神殿が所有する共同住宅まで、徒歩で帰らないといけない。

 夜更けに着いて、ルームメイトを起こしてしまうであろうことにも気が引けた。

 そして、それ以上にあの穴に何度もおしりをつっかえさせたくなかった。


「なら、そうさせてもらおうかしら」


 みんなが、ぱあぁと顔を輝かせた。



 ゴブリンたちは、私と皿洗いをする部隊と部屋の掃除をする部隊との2班に分かれた。


「僕は何すればいい?」

「魔王様は拭き終わった食器をそっちの棚に片付けてください」

「了解。ジョゼは魔王・テイマーでもあるからね」

「ひいぃー! そんな称号は要りませーん」


 ちょうど片付けを終えた頃、掃除部隊が私を呼びにきた。


「この部屋だよ。ジョゼが気に入ってくれるといいな」

「えっ、こんな素敵な部屋を使わせてもらっていいの?」


 質素な暮らしをしてきた聖女見習いには、十分すぎる。

 今朝まで、平板を組み合わせただけの固いベッドと、小さなチェスト、それからもっと小さな本棚があるだけの部屋だったのだ。

 それが、ゴロゴロ転がれるだけの広さのある柔らかそうなベッドに、細かい装飾が彫られたアンティーク家具!


「とても気に入ったわ!」


 ゴブリンたちがうれしそうに引き上げていったところで、食事を採ってから回復し始めていた魔力を使い、浄化魔法を唱えた。


 神様、予想外に楽しく、充実した1日を過ごせました。

 今夜はぐっすり眠れそうです。


 日課にしている報告を済ませたとき、ドアをノックする音が聞こえてきた。


「ジョゼ、よかったら晩酌に付き合ってよ」

「それは、あまり感心しませんね」

「深酒はしないって約束するから」


 カチャッと音を立ててドアがほんの10数センチほど開き、その隙間からお酒のボトルが覗いた。

 それを見てしまったら、魔界のお酒はどんな味なのか、俄然興味が湧いてきてしまった。


「ちょっとだけですからね」

「さっすが、ジョゼ」



 『星空が明るいのと、久しぶりに出た外が気持ちよかったから』と魔王様が言うので、庭園で飲むことにした。


「改めて魔界へようこそ」


 魔王様はグラスを傾けて、私のグラスに軽く当てた。


「ありがとうございます。では、いただきます」


 これは……何のフルーツだろう……

 果汁を発酵させているのは間違いないんだけど……


 ゆっくりとひと口ずつ、けれど何度も何度もグラスに口をつけた。


「ジョゼ、飲むねえ」


 魔王様がうれしそうに、おかわりを注いでくれる。


「飲んだことのない味だったので、つい。私、お酒にはうるさいですよ」


 神殿では、薬草を使った聖女ビールを醸造している。

 何を隠そう。その聖女ビールを改良し、巡礼の際に飲むことを全国民の憧れにした立役者はこの私だ。

 聖女ビールを改良したのが実は聖女見習いということで、今まで言えなかったけれど。


「なら、このお酒も薬草入れて改良することできる?」

「やってみましょうか。発酵期間を考えると、完成までに少なくとも3週間はかかりますけど」


 それだけあれば、魔王城も綺麗にできるだろうし、魔王様の体調だって……


「そういえば今日半日だけでも、本当に元気になりましたね」

「うん、体が軽くなったよ。不調の主な原因は弱ったメンタルだったのかな」

「メンタル、弱ってたんですか?」

「この100年、もちろん魔族のみんながいてくれたんだけど、世界を閉ざしてしまったせいで閉塞感に潰されそうだったよ」


 なぜだか、魔王様の部屋に降り積もっていた埃が思い出された。


「そんな顔しないで」


 魔王様が手を伸ばして私の頬に触れた。


「ジョゼがやってきた瞬間、それまでかろうじて生きてただけだった心臓が、すごい速さで動き出したんだから」


 私の心臓はぎゅうっと絞られたみたいに苦しくなる。


「こんなふうにいつも1日の終わりに、ジョゼとゆっくり過ごせたら楽しいだろうな」


 どうやら魔王様に注がれるままに飲みすぎてしまったみたいだ。

 うれしいのか哀しいのか、自分の感情なのにさっぱりわからない。

 かろうじて泣きたい気分なことだけはわかった。


 けれど、泣きそうになったところで、思いっきり笑ってみせた。


「こんな私でよければ、これから3週間、毎日だって晩酌にお付き合いします」

「えっ、3週間? まあ、3週間あれば僕らも変わるかな……」

「色々なことが変わりますよ! もちろんいい方向に!」


 魔王様は私の言うことが信じられないのか、苦笑いしていた。



 あれから3週間が経ち、魔界は様変わりした。


「それでは魔王様の全快を、この出来立て聖女果実酒でお祝いしましょう!」

「ありがとう」


 今夜は、すっかり綺麗になった魔王城のテラスで乾杯することにした。


「わあ、おいしいな」

「よかったです。薬草の栄養もたっぷりですよ」


 『ふふんっ』と魔王様に笑顔を向けた。

 でも、心の中は最近ずっと晴れない。

 

「ジョゼと毎晩飲むのは楽しかったけど、今日で最後か……ねえ、本当に明日帰るの?」


 胸の奥がザワザワしてくる。


 魔王様は毎晩こうだ。

 ひと言だけ、こうやって訊いてくるのだ。


「か、帰ります! 神殿に戻って、神に仕える生活に戻ります」


 私がこう言ってしまえば、この話はお終い。

 魔王様は、決して引き留めようとはしてこない。


 しかし、今日だけは違った──


「ジョゼがいなくなったら、僕はまた病気になると思うよ」

「べ、別に私でなくても……明日までにお酒のレシピを書いて渡しますので、また晩酌仲間を見つけてください」

「それでもジョゼがいないと駄目だよ」

「淋しかったところに、偶々現れたのが私だっただけです」

「サキュバスに誘惑されたって、動じたことはなかったのに? ジョゼだけだよ、僕の心を動かすのは」


 もはや私の胸の内は大荒れだ。


「ジョゼが現れた瞬間、運命の出会いだと思ったよ」

「大袈裟です!」

「あのときの僕がどんな気持ちだったか想像できない?」


 私との出会いが運命?

 そんなことあるはずが……


「ジョゼにとっては運命の出会いではなかった?」

「まさか!」

「なら、どんな出会いなら運命?」

「どんなって……」


 そんなのわかりきっている。

 神様に会えるとしたら、それこそまさに運命の出会いだ。

 ひと目見ただけで、この方がそうだ! って気がつく。

 そして、出会えた感動に打ち震えて──


 って、あら? あらら?

 神様との出会いのシーンを想像したはずなのに、私の想像の中には、カウチに横たわる魔王様がいた。

 あの瞬間、確かに私の世界は一変した。


 まさか、まさか……

 あれが、私にとっても運命の出会いだったの!?



 魔王様とゴブリンたちが、私を見送りに集まってくれていた。

 ゴブリンがすすり泣く中で、魔王様だけは淋しそうに微笑んでいる。


「あの……私が人間界に戻るまで、背を向けていてくれませんか? 穴を通り抜けたら向こう側から声をかけますので、そうしたら塞いでください」


 こうお願いしたのは、見られていると別れ難くなるから、というばかりではない。

 おしりを必死に引っ張る姿を見られたくない、という気持ちも多分にあった。


「わかったよ」


 魔王様はもう、『今すぐ塞いでしまえば』なんて冗談は言わなかった。

 私のお願いした通りに背中を向けてくれた。

 あとは私が魔王様とゴブリンたちに背を向けて、人間界に帰るだけ。


 大きく息を吸いこんでから、穴の正面に立ち、足を踏み出した……

 はずが、私はくるりと180度回転して、魔王様の背中目掛けて駆け寄っていた。


「ええっ? どうしたの?」

「魔王様! 今すぐ穴を塞いでください!」

「いいの?」

「お願いします!」


 魔王様の背中にしがみついて目をぎゅっと閉じていたけれど、結界が完全に閉じたのを感じた。


 ひょいっと魔王様が私を抱き上げた。


「ジョゼ! これからもずっと一緒だ!」

「はい!」


 ゴブリンたちが、私と魔王様を取り囲む。


「魔王様、いつの間に?」

「もしかしてふたりは結婚するの?」

「ねえねえ、今すぐ結婚式の準備を始めてもいい?」


 魔王様がゴブリンたちに言う。


「今夜ふたりだけのときに求婚するから、それまで待ってて」


 ゴブリンたちは『はーい』と、いいお返事。


「どこで求婚するの? 庭園? テラス?」

「僕ら、今からがんばって掃除しておくよ」


 私は袖をまくる。


「掃除なら私もやるわよ。任せてちょうだい」


 ああ、神様……

 聖女がひとり神殿に戻らなくても、どうか目をつぶってください!



END



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