第四話 ランスロットとエレイン、仕組まれた運命の再会
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「…という状況です。エレインの心の中で、ランスロット王子の事は日に日に大きくなっているはず」
アイザック侯爵夫人が、私とサイファー、ランスロット王子の前で、報告をする。
私達は、度々侯爵夫人から情報を聞き、エレイン籠絡の作戦を練っていた。
「前からお話ししている通り、ランスロット王子が優しく口マメな男性になれば、復縁の確率は高くなるでしょう」
アイザック侯爵夫人が、ランスロット王子を見て言う。
「そうか、私は何と冷たい男だったのだろう。私の気持ちは充分に伝わっていると思っていた。エレインがアーサー王子に近づいていた時も、彼女の選択だと何も言わずにいた。それが、彼女を傷つけていたとは…」
ランスロット王子が、顔を伏せ、組んだ手の上に頭を乗せる。
「大丈夫です、ランスロット王子。私が、運命の再会を演出いたします。王子は自己改善して下さい。復縁は、かならず叶います」
サイファーが、ランスロット王子を元気づける。
「そうか、努力する。貴君も頼む」
ランスロット王子が、苦しそうに答える。
「私は、貴君などと呼ばれる立場では、ございません。私は、ルイーゼお嬢様の幸せを願う復縁コンシェルジュ。お嬢様の為なら、ランスロット王子とエレイン王太子妃の復縁にも尽力させていただきます」
サイファーが、深々と頭を下げた。
夜会の帰り、アーサー王子とエレイン王太子妃の乗る白い馬車の前に、黒づくめの覆面をした男が立ちふさがった。
「貴様、何者だ!」
並走していた馬車と馬から、剣や槍で武装した護衛の者達がやってきて男を取り囲む。
「ぐわっ!」
男は、いきなり護衛の者の一人に殴りかかり、素手で打ち倒してしまった。
「何をする!」
護衛達は、男を取り押さえようと向かってくる。
覆面の男は、それを次々と返り討ちにしていく。
覆面の男は、たった1人で10名近い護衛を動けなくしてしまった。
男は、馬車に近づいていき扉を開けようとする。
「お前、私をアーサーと知っての狼藉か!」
馬車からアーサー王子が降りてくる。
金髪、碧眼の美しい王子の姿は、3年経っても変わっていない。
逞しさが加わり、立派な男性になっていた。
「くらえ!」
王子の手から、金色の光が覆面の男に撃ち込まれる。
光の攻撃魔法だ。
すると、覆面の男から黒いオーラの様なものが噴き出し、アーサー王子の魔法を打ち消す。
「貴様!魔の者だな」
王子が、叫ぶ。
「ぐふぅ!」
覆面の男が、目にも止まらぬ素早さでアーサー王子のみぞおちに一撃を食らわせ、倒れ込んだところに後頭部への一撃。
アーサー王子は、気絶してしまう。
「アーサー様!」
馬車から顔を出したエレインが、心配そうに叫ぶ。
「エレイン王太子妃に、手は出させん!!」
物陰から、一人の男が飛び出し、覆面の男の前に立つ。
ランスロット王子だ。
彼は、細身の剣を抜く。
覆面の男は、ランスロット王子に襲い掛かる。
ランスロット王子の剣の一閃が、覆面の男の服を切り裂く。
男は咄嗟に避け、切られたのは服だけで済んだ。
「…」
覆面の男は、後ずさりし、走り去った。
「ふう、さすがは両王子。肝が冷えました」
路地裏に逃げ込んだ男が覆面を脱ぐと、その正体はサイファーだった。
「お前達、手筈通り、アーサー王子と護衛達を医者へ運ぶぞ」
路地裏には、王家の護衛の姿に扮装したアイザック侯爵家の使用人達が隠れていた。
「エレイン王太子妃!アーサー王子と護衛達は、私達が運びます。ランスロット王子!エレイン王太子妃を頼みます!」
王家の護衛に扮装したサイファーと、アイザック侯爵家の使用人達は、ランスロット王子とエレイン王太子妃を残して、アーサー王子と護衛達を素早く運んでいってしまった。
本来なら、護衛を何人か残すべきなのだが、エレイン王太子妃はランスロット王子に注意が向いて気がつかなかった。
「あなたは、ランスロット王子」
エレインは、目を細めて彼を見る。
「エレイン王太子妃。いや、エレイン。」
ランスロット王子は、優し気な笑顔を浮かべ、エレインに近寄っていく。
「嫌…そんな顔で、私に近寄らないで」
エレインは、横を向いて拒否する。
「もう、あなたに会う事は無いと思っていた。この様なところで偶然会ったのは運命に違いない。どうか、一時でも話してくれないか?」
ランスロット王子は、エレインのすぐ側に立ち、彼女を見下ろした。
「分かりました。私達を助けた褒賞に、一つだけ願いを聞きましょう」
エレインは、ランスロット王子を見上げて言った。
二人の目は、涙に潤んでいる。
「色恋沙汰など望みません。これからは、たまの息抜きとして、私と話す機会を作っていただきたい」
ランスロット王子は、優しく語りかけた。
「ああ、あなたが、いつもそんな優しい目で私を見てくれていたら…」
エレインの目から涙が次々と流れ落ちた。
「でも、でも、もう全てが遅いのです」
エレインは、ランスロット王子の胸で泣いていた。
「何も遅くはありません。私は、あなたの愚痴の一つでも聞ければ満足なのです。ただ静かに、私とすごす時間を下さい」
ランスロット王子は、エレインを優しく抱きしめた。
「はい、あくまで友人として」
エレインが、呟いた。
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