第三話 最強の味方、最高の美青年王子
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「ふおおおお」
私は、アイザック侯爵夫人の屋敷の一番長い廊下を、ひたすら早足で往復する。
今日から、お茶の時間の菓子もやめた。
全ては、もう一度、王子にふさわしい令嬢になる為のダイエットだ。
「お嬢様!」
廊下の角を曲がり、サイファーが姿を現す。
その後ろから、一人の男性が現れた時、場の空気が変わる。
まるで、暑い日に、涼やかな風が通り抜けた様だった。
青い長髪を後ろでくくった、美青年。
整った顔立ちは、イケメンというより絶世の美人という方が相応しい。
青い軍礼服に身を包んだ姿は、隣国の王族の正装だ。
「なんて、美しい。ランスロット王子」
私は、思わず呟いた。
彼は、アーサー王子を除いたエレインに言い寄った4人のイケメンの一人。
おそらくは、エレインと最初に付き合っていた相手だ。
彼女は、その後4人のイケメン達と逢瀬を重ね、最終的にアーサー王子を選んだ。
ルックスだけなら、アーサー王子以上。
美しく、クールで誰も近づかせないオーラを持っていた。
彼をエレインに奪われて、枕を涙で濡らした貴族の娘達は何人いただろう。
私とサイファーは、ランスロット王子を自室に招き入れた。
「ランスロット王子は、この計画に賛同しており、私達に協力して下さいます」
サイファーが、ランスロット王子の意志を私に伝えた。
「失礼な事を言ってすいません。何故、彼なのです?」
私は、サイファーに聞いた。
「ルイーゼ様には、正直に同士として話す必要があると思います。よろしいですか?」
サイファーが、ランスロット王子に確認する。
「ああ、構わない」
ランスロット王子の口から、素晴らしいイケボが放たれる。
その声だけで、くらくらしてしまいそうだ。
「まず、ランスロット王子は隣国の王族。他の3人と違って、我が国の王族に忠誠を誓っているわけではありません。そして、他の3人とエレイン様は、いい雰囲気になった事はあっても、あくまでボーイフレンドまでの関係。しかし、ランスロット王子は、エレイン様と真剣交際していた期間があると調査で分かりました。さらに、ランスロット王子は、今でもエレイン様を愛しており、二人共に嫌いになって別れたわけではありません。エレイン様の相手として、これ以上の方は、おりませんでしょう」
サイファーは、ランスロット王子とエレインの関係について説明した。
「なるほど、でも、ランスロット王子は、アーサー王子からエレインを略奪愛する覚悟が、おありなの?」
私は、ランスロット王子に尋ねた。
「彼女がアーサー王子を選んだのだから、一度は身を引こうと考えた。しかし、日に日に彼女への思いは強くなる。彼女と子供達が幸せでないなら、奪い取って国へ連れ帰る覚悟は出来ている」
ランスロット王子は、思いつめた顔で答える。
そんなの幸せに決まってるじゃない!
何か吹き込んだわねサイファー!
私は、横目でサイファーの顔を見た。
天才執事は、どこ吹く風の表情だ。
「分かりました…では、私達が真実の愛を取り戻す為に同盟を組みましょう。そして幸せを手に入れるのです」
私は、そう言った。
それは、どう言い繕っても自分勝手な悪の道。
いいじゃない。
もう、私の手は汚れきっている。
これが、悪役令嬢の生きる道だ。
私とサイファーは、まずアイザック侯爵夫人にエレインに近づいてもらう計画を立てた。
目的は幾つかあるが、エレインがランスロットを選ばなかった理由は絶対に聞く必要がある。
ランスロット王子が、そこを対策しないと籠絡は不可能だろう。
そして、エレインがランスロット王子に興味を持つように言い含めてもらわねばならない。
「頼むわね」
私は、ソファーで隣に座るアイザック侯爵夫人の手を取った。
「もちろんですわ、ルイーゼお姉様。必ずエレインより、ランスロット王子の問題点を聞き出し、彼に興味を向けさせます」
アイザック侯爵夫人は、快諾してくれる。
「侯爵夫人、私が用意した計画通りに話せば大丈夫だと思いますが、最後は侯爵夫人の臨機応変な話術にかかっています。お願いしますよ」
サイファーが、言う。
「おほほ、私も昔のままではありません。社交界で、それなりに名の知れた侯爵夫人。対人術で抜かりはありません」
アイザック侯爵夫人は、高笑いする。
ああ、彼女達は、知らぬ間に私よりも老獪な貴族に成長している。
私も気を引き締めて学ばないと。
アイザック侯爵夫人は、積極的にエレイン王太子妃をお茶に誘った。
昔の事はあったが、2週間ほどで、すっかり二人は友人気分になっていく。
侯爵夫人の巧みな話術と、エレインの元々の人の良さが重なっての結果だ。
「私は、3人の子供を出来るだけ自分の手で育てたいのですが、なかなか許してもらえなくて…。アーサー様も、価値観が違うのか、全然相談に乗ってくれないのです」
エレインは、今日も侯爵夫人に愚痴をこぼす。
彼女は、王太子妃としての気品を身に付け、美しさに磨きがかかっていた。
「あらあら、まあまあ。王子は、生まれた時からの王族。母親の気持ちなど分らなくても仕方ありません。お気になさらず」
侯爵夫人が、エレインをなだめる。
「ランスロット王子なら、どうだったのでしょうねえ」
気を見て、侯爵夫人がランスロット王子の話を切り出す。
「あの方も王族なので、あまり変わらないかも」
エレインが、何気に答える。
「そうかしら、彼の国では王妃も積極的に子育てに参加するとか。国によって、王族の価値観も違うものですわ」
侯爵夫人は、口から出まかせを言う。
「そうなの?彼の夫人になる方が、羨ましいわ」
エレインが、溜息をつく。
「ところで、エレイン様は何故、ランスロット王子とお別れに?一時は、大変仲がよろしかったとか」
エレインが、ランスロット王子の話に応じているので、侯爵夫人は話を本題に近づける。
「あの方は見た目も綺麗で、とても優しかったわ。でも、無表情で、あまりお話しにならない。そのうち、この方は本当に私を好きなのか不安になってしまって…。それに比べて、アーサー様は、いつも私を愛している、好きだと言ってくれたので」
エレインは、懐かしそうに話した。
「そうですか、不器用な方だったのね。でも、心の中ではランスロット王子もエレイン様を愛していたと思いますわよ。私も、もう一度お会いしてみたいわ。エレイン様も、そう思いません?」
侯爵夫人は、ランスロット王子を、それとなく擁護する。
「そうね、お会いして、あの頃どう思っていたのか聞いてみたいわ。でも、王太子妃の私には許されぬ事」
エレイン王太子妃は、遠い目をした。
「ところで、そのアーサー王子は、今でも愛している好きだと毎日言って下さるのかしら?」
侯爵夫人は、心の中でニヤリと笑うと、そう言った。
「いいえ、3人目の子供を授かってからは、全然。私の事を女としては見なくなってしまったのかしら。夜も全然お越しにならないし」
エレイン王太子妃は、伏し目がちに言う。
子供が3人も出来た家庭では、それが普通だろう。
いつまでも、恋人気分ではいられない。
「それでは、ランスロット王子と結ばれた方が幸せだったかもしれませんね。何しろ、学校で一番、女性人気が高かった。それに、優しかったのでしょう?私も、憧れましたわ」
侯爵夫人が、言う。
「何を言いますか!私は今、幸せです。滅多な事を言わないで頂戴!」
はっとなったエレイン王太子妃は、少し声を荒げた。
「そうね、アーサー様は素晴らしい方だわ」
侯爵夫人は、さっと折れる。
そして、その日、ランスロット王子の話題を出す事はなかった。
それからも、侯爵夫人は、お茶の度に少しづつランスロット王子を持ち上げる話をした。
しかし、決して、しつこくは言わない。
あくまで、自然に話を進めたのだ。
エレインのランスロット王子への印象は少しづつ改善し、アーサー王子の株は下がっていった。
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