第二話 辺境伯と離縁して、北方から王都に返り咲きます
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美しい銀の短髪に、涼しい表情のクールなイケメン。
30代前半の騎士が、鎧姿で白い馬に乗り、自分の城へと帰途についていた。
長い遠征から、やっと戻ってきたのだ。
彼は、フリードヒ辺境伯。
王太子妃に無礼を働いた公爵の娘と、無理矢理結婚させられた。
その嫁と、初めて顔を合わせる。
彼女とは面識は無かったが、こんなところに嫁いできて、さぞ不便に感じているだろう。
彼は、彼女の好き放題に贅沢をさせていた。
この愛の無い結婚が、少しでも彼女の心の負担にならないように。
雪に閉ざされた城が近づいてきた。
「フ…様ぁ!!…れて下…い!」
誰かが、城壁の上から手を振って、こちらに何か叫んでいる。
城の前に来ると、その声は、はっきりしてきた。
「フリードヒ様!私と別れて下さい!!」
美しい女性が、城壁の上から自分との離縁を懇願していた。
おそらく、あれが公爵の娘だろう。
「はあ?」
彼は、思わず落馬しそうになった。
応接室でソファーに座るフリードヒの前に、ルイーゼとサイファーが頭を下げて立っている。
「それで、私と離縁したいと?」
フリードヒ卿は、大きな溜息をついた。
「ルイーゼ様の学校時代の古い御友人。今は侯爵夫人となられたアンヌ様より、ルイーゼ様の名誉回復の手助けが、ございまして。お嬢様を自らの屋敷で預かると。つきましては、この互いに望まぬ婚姻を解消していただきたいのです。もちろん、ルイーゼ様の父上の許しも、ここに」
サイファーは、2通の手紙をフリードヒの前にあるテーブルに置いた。
もちろん1通は偽造の書類だ。
ルイーゼの父親には連絡などしていない。
許可などされないだろう。
「今日が初めての御目通りでございますが、失礼ながら婚姻の解消をお願いいたします。大変良くしていただいたのは分かっていました。この御恩は、いつか必ず返します」
ルイーゼは、そう言った。
「ふむ、王都住まいだった者には、この様な北方暮らしは、さぞ不便だったろう。戻れる道があるなら戻るがいい。離縁状は、すぐに用意する。しかし、惜しいな。これほど美しい御令嬢だったとは」
フリードヒ卿は、優しく笑った。
何とお優しい方なのだろう。
この方と添い遂げても、平穏で幸せな毎日をすごせたかもしれない。
しかし、私はもう茨の道を行くと決めた。
王子と復縁する事だけが、私の道だ。
私とサイファーは、フリードヒ卿の城を離れて、王都への帰途に着いた。
「ああ!ルイーゼお姉様!お久しぶりです」
アンヌ。
今やアイザック侯爵夫人となった私の親友の一人が、自分の屋敷で私を待っていてくれた。
サイファーが手を廻して、連絡を取ってくれていたのだ。
彼女と私は、しっかりとハグをする。
「ルイーゼお姉様!」
そこに、何人もの学校時代の友人がやってきて、私を取り囲む。
みんな、私に憧れて取り巻きをしていた娘達だ。
聖女への意地悪で、すっかり人気を落とした私を最後まで見捨てなかった友人達。
そんな彼女達も、今では立派な高級貴族の夫人になっていた。
「何でも、おっしゃって下さい。決してルイーゼ様に不自由はさせません」
アイザック侯爵夫人は、力強く言った。
「みんな、サイファーから、私の計画は伝わっているわね。この話は、決して口外してはならぬ事。あなた達なら信用出来ます。また私に力を貸して頂戴」
私は、彼女達に頼んだ。
「もちろんでございますわ。あの下品な田舎娘より、ルイーゼお姉様の方がアーサー王子には、ふさわしいのです。あの泥棒猫を、今度こそ、ぎゃふんといわせましょう」
「そうです、そうです!」
彼女達は、同意する。
「難しい計画には、信用出来る口の堅いスタッフが必要不可欠。最後まで残った取り巻きの彼女達なら適任でしょう」
サイファーが、満足気に言う。
「言っておきますが、聖女様に、ひどい目を合わせて失敗した過去を忘れてはいけません。彼女にも幸せになってもらい、円満に離縁していただけなければ計画は失敗します。全員に幸せになっていただく。その為の計画は、既に出来ております」
彼は、あの本を指さした。
「みんな、私の指示に従い、もう決して暴走しては駄目よ」
私は、念を押す。
「分かりました。お姉様の幸せの為、必ず指示通りに動きます」
彼女達と、決意を一緒にした。
「さあ、お嬢様、アーサー王子との復縁で一番大切な事は何だと思いますか?」
用意された部屋で、私は、サイファーから計画の説明を受ける。
「はい!私と王子の愛の力です!」
私は、学校時代の様に手を上げて答える。
「違います。というか、既に結婚した相手に、もう3年も会っていない女が何を言っているのですか?王子の、あなたへの愛なんて冷めきってます。一方的で気持ち悪いです」
サイファーが、切って捨てる。
「ぷしゅー」
私は、力が抜ける。
「もちろん、計画を完遂する為に、心の中に愛を持ち続けるのは大事です。しかし、相手には、知られてはなりません」
サイファーが、フォローしてくる。
「じゃあ、何が大事なの?」
私は、聞いた。
「それは、自己肯定感です。つまり、自信。あの高飛車で自信に溢れたお嬢様の姿を取り戻すのです!その為に、今日から自分磨きをしていただきます。その間に、私が計画を進めます。お嬢様から復縁してあげるわ!という態度でなければ、うまくいかない。執着するほど、相手は逃げてしまうのです。過去の失敗を繰り返してはいけません」
サイファーが、失礼にも私を指さして言った。
確かに聖女エレインへの意地悪を続け、王子にしつこくせまった挙句、私は愛を失った。
あんな事は、繰り返したくない。
「そして、2番目に大事な事は、過去の分析です。これが出来ていなければ、自分磨きの方向も決まりませんし、現在の状況への対処も出来ません」
サイファーが、続ける。
「お嬢様は、親が決めた婚約者という地位に甘え、何もしてこなかった恋愛経験ゼロの生娘。美しくても、王子の婚約者である為、誰も声をかけてこなかった。それに対してエレインは、男好きする容姿と隙だらけの優しい性格の持ち主。身分も低く、声もかけやすい。4人のイケメン貴族と王子から求愛され、逢瀬を重ねる毎日。急速に男性との交際術を学び、遂には王子と結ばれました。言っておきますが、聖女の力とか恋愛には関係ないですからね!」
彼は、私の痛いところを突いてくる。
「ぐぬぬぬ、確かに」
私は、ぐうの音も出ない。
「お嬢様は、王子は私を愛しているから大丈夫!とか、子供みたいな幻想を抱き続けて失敗。現在は、初恋をこじらせたストーカーと化しておられます!」
サイファーは、はっきりと言った。
「うわあああああ、やめてえええ!」
トラウマスイッチの入った私は、頭を押さえてソファーの上を転げまわった。
「しかし、希望もございます。男性にとって初恋の相手とは、女性よりも強烈な思い出となるのです。つまり、お嬢様は王子にとって忘れられない存在のはず。王子の理想の女性は、今でもお嬢様のはずなのです。本来は、相性最高だった二人。まだ若く美しいお嬢様なら、王子の籠絡も可能ですよ」
サイファーの言葉に、私は希望を取り戻す。
「分かったわ!美しくなって、もう一度、愛の告白をしてくる!」
私は、手を合わせ、祈るようなポーズをする。
「違います!この大馬鹿者!」
サイファーが、怒った。
「へ?」
私は、目を点にする。
「だから、お嬢様から恋愛感情など見せてはいけません。既婚者相手に、いきなり何を考えているんですか!それ、完全にストーカー認定されますから。王子に接近出来なくなれば、詰みますよ!」
サイファーが、目をつり上げて怒る。
「だったら、どうすればいいのよ?」
私は、ふくれた。
「御自分では何もされないで下さい。状況は私が作ります。まずは、最高に美しくて高貴な存在だった自分を取り戻して下さい。時期がくれば、お嬢様にも必ず動いていただきます」
サイファーは、そう言って頭を下げた。
「そうね、分かったわ。自堕落な生活で、肌の調子も最悪。体重も減らさないと…」
私は、あの日の自分を取り戻す決意をする。
「それでは、男性の味方も必要なので…」
サイファーは、そう言い残すと、部屋を後にした。
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