第一話 エンディング後からの逆転
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「寒い…」
豪華な毛皮のコートを纏った私は、バルコニーに出て冬の風を感じていた。
北方の辺境にある城で、失意の毎日をすごしている。
城の周囲の山々は、深い雪に包まれている。
「ああ、アーサー王子…」
愛しい方の名前を口にする。
私の名は、ルイーゼ・マルガレーテ。
かつて、アーサー王子と婚約者だった公爵令嬢だ。
金髪に青い目、その美しさは我が王国の貴族の子息達の憧れの存在。
そして、誰もが羨む第一王子の婚約者。
私は、全ての貴族の娘達から羨望の眼差しを集めていた。
子供の頃から約束されていた王子との結婚。
親が決めた婚約だったが、子供の頃から王子と私は仲が良かった。
毎日の様に二人で遊び、幼い愛を育てていた。
王都にある、諸国の王侯貴族が集まる魔法学校。
二人が、そこに通い出してから、全ての運命は変わった。
農民出だが強い魔法の力がある為に、特別に入学を認められたエレイン。
可愛らしくて優しそうな顔に似合わぬ豊満なスタイル。
茶色の肩までしかない髪。
心優しいが、正義感で勇気を持った芯のある性格。
努力家で学業優秀、礼儀正しく、魔法力は学園一番。
彼女は、物珍しさからか、学校のイケメン達を恋の虜にした。
特に女性の人気を集めていた4人の王侯貴族の息子達とアーサー王子から愛の告白を受け、王子と結ばれた。
そう、私の婚約者を奪い取ったのだ。
「くそっ!あの農民出の牛女め」
当時を思い出し、冬の風を浴びながら、ぎりぎりと歯ぎしりして悔しがる。
私は、取り巻き達と、あらゆる嫌がらせをエレインに対して行った。
しかし、彼女は学校から出て行く事は無く、王子との関係を続けた。
最後に私は、禁断の術で魔王の封印を解き、エレイン抹殺を祈願した。
魔王は王国を滅ぼそうとし、4人の貴族と王子、そしてエレインの5人の力で討伐される。
特に、王子とエレインの魔力は凄まじく、”愛のパワー”と呼ばれた。
そして、エレインは聖女と呼ばれるようになったのだ。
私は、魔王召喚は発覚しなかったものの、聖女への数々の無礼の責任を取らされ、北方を守るフリードヒ辺境伯の元に19歳の時、無理矢理嫁がされた。
フリードヒ辺境伯は、結婚してから一度も遠征から戻らない。
この目で、フリードヒ卿の顔を見た事は無かった。
私は、城で毎日、色々な品物を取り寄せて金を浪費するだけが楽しみな生活を続けている。
部屋に戻った私は、豪華な品々を眺めて溜息をついた。
どんなに豪華なドレスや家具も、私の心を満たす事は出来ない。
私が求めるのは、アーサー王子との幸せな毎日だけ。
それだけを、子供の頃から熱望していたのに…。
どうして、こんな事になってしまったのか。
「ルイーゼお嬢様、何故このサイファーに相談せず、軽はずみな事ばかり…」
黒い執事服を着て黒髪をオールバックにした、40代前半の塩顔でイケメンの男が、古い遺跡の中で何やら儀式を執り行おうとしていた。
そこは、ルイーゼが魔王を召喚した場所だ。
地面には魔法陣、何本もの蝋燭の光で照らされている。
男の名は、サイファー。
ルイーゼが子供の頃から、専属の執事を務めていた男だ。
文武両道にして、執事として最高の教育を受けた天才だった。
「愛を司る魔王の側近よ!今こそ、魔王を解き放った恩義に答えよ!」
サイファーが、呪文の後にそう叫ぶと、地面から白い光と共に一人の女性が現れた。
その姿は、赤髪の妖艶なサッキュバス。
しかし、身に付けているのは白い天使の様なドレス。
背中には白い天使の羽根。
頭には、光の輪。
「我が名はシトリー。魔王の側近にして愛を司る悪魔」
女性は、そう答える。
「さあ、私の願いに応えるのだシトリー!」
サイファーは、そう言う。
「倒されはしたが、確かに魔王様を解き放ったのはルイーゼという娘。分かるぞ、お前が彼女の為に私を召喚したのは。悪魔は契約には忠実。魔王様に代わって、その願いを聞き届けねばなるまい」
シトリーは、にやりと笑う。
「そうだ、彼女を幸せにする力を私に!再び彼女を王子の婚約者に戻し、復縁させる力を」
サイファーは、願いを言う。
「いいだろう。しかし、それは、お前の願いでもある。ルイーゼという娘が、真に幸せを感じた時、お前の魂を貰うぞ。それでもいいか?」
シトリーは、凄まじい笑顔を浮かべる。
「もちろん!お嬢様の為なら、この命、惜しくはない!」
サイファーが叫ぶと、シトリーは霧の様に掻き消え、彼の手の中に1冊の本が残る。
それを開いて見るサイファー。
「なるほど、これが復縁までの計画か、全て理解した。これで、お嬢様を救ってみせる」
サイファーは、本を抱え、力強く歩み出した。
「どうして、こんな事になってしまったのか」
ルイーゼは、部屋を見廻して、もう一度、大きく溜息をついた。
「それは全て、お嬢様の身から出た錆でこざいます」
バルコニーから、声が聞こえる。
ルイーゼは、バルコニーに続く扉を開けた。
そこには、サイファーが本を抱えて立っている。
「あなたは、サイファー!どうしてこんな辺境に!?それに、このバルコニーは、外から入り込めないはず!」
ルイーゼは、驚きの声を上げた。
「お嬢様の為なら、このサイファー、出来ない事はございません。お嬢様が子供の頃から、そう言っていたはずです」
サイファーは、深々と頭を下げる。
「ああ、サイファー。相変わらず、お前だけは私の味方。でも、私の望みはアーサー様と結ばれる事だけ。それが叶わなくなった今、私に望みなんてないわ。帰って頂戴」
ルイーゼは、サイファーに背を向ける。
「では、お嬢様と王子を復縁させてご覧に入れます」
サイファーは、そうはっきりと言った。
「何ですって!?そんなの不可能だわ。アーサー王子とエレインは、今や3人の子持ち。幸せに暮らしている。私が入り込む隙なんてない」
ルイーゼは、思わず振り向いた。
「お嬢様の為、不可能を可能にするのが、私の仕事でございました。何故、今まで頼って下さらなかったのか?おかげで、少々手間のかかる仕事になってしまいました。しかし、私にかかれば、充分に可能でございます」
サイファーは、自信に溢れる声で言った。
「ああ、サイファー。その言葉だけで嬉しいわ。例え無理でも、あなたの言葉には、子供の頃から助けられてきた」
ルイーゼの目から涙がこぼれる。
「その涙、どうか願いが叶った時に。私が、お嬢様の復縁コンシェルジュになります。必ず願いを叶えてみせましょう」
サイファーの言葉が、あまりに自信に溢れていた為、ルイーゼは思わず頷いていた。
まるでエンディングの後の悪役令嬢のルイーゼと天才執事の戦いが、始まろうとしている。
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