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「どうしたものか」by鈴木

作者: ちぃねぇ

0:放課後。教室に3人の高校生が居残っている。




和樹:第3回、真知子先生を振り向かせる為の会議を始めます


美亜:啓介!そこのポッキーちょうだい


啓介:あいよ。んじゃーそこのポテチ取って


美亜:うす塩?コンソメ?


啓介:コンソメ一択!


美亜:あんたほんとにコンソメ好きねぇ


和樹:おい!聞けよ!!


啓介:コンソメうまくない?


美亜:好きだけどさぁ~どっちかの味ばっかりって飽きない?


啓介:全然。俺一途なの


和樹:聞けって!


美亜:んも~!なによ、うっさいわね


和樹:そのポテチ買ったの俺だぞ!?聞いてくんないならもう食うな!


啓介:わーったよ。…んで?またその不毛な会議やるわけ?


和樹:不毛ってなんだよ不毛って


美亜:不毛でしょうが。1年のころからずっと追いかけまわしてんのに、全然相手にされてないし


啓介:ま、相手にするわけねぇよな。相手は新任って言ったって24歳。俺らの7つ上じゃん


美亜:てか、男子高校生の告白、まともに受け取るわけないじゃんね


和樹:なんでだよ。好き好き言ってたらいつか振り向いてくれるかもしれねぇじゃんか


美亜:んなわけないでしょ!そんなに甘かったら…誰も苦労なんかしないわよ


啓介:…現実問題さ、先生にとって俺ら、子供だからな。そこら辺の幼稚園児と一緒


和樹:幼稚園児って…じゃあ、卒業したら?あと一年で俺ら卒業じゃん。そしたら可能性ある?


美亜:あるわけないでしょ!先生からしたらやーっと卒業したかぁって解放感しかないって。卒業しても会いに来る気なの?あんたストーカー?


啓介:幼馴染容赦ねぇなぁ、おい


和樹:ストーカーなんかしねえよ


美亜:例えの話でしょうが。いーい?和樹。例え卒業したとして、あんたは18、真知子先生は25。25って言ったら結婚適齢期よ?彼氏と結婚考えても全然おかしくない歳なのよ?


和樹:うっ。真知子先生彼氏いんのかなぁ


美亜:知らないわよ。いてもおかしくないけど


和樹:そんなぁ


美亜:ほら、3組の小林先生なんかお似合いじゃない?確か28歳だったし、4歳差の職場恋愛とか、アリじゃない?


啓介:アリだけど、小林先生には近藤さんがいるから


美亜:あーそうだったわ。あの子も懲りずに小林先生ずっと追いかけてるよね。入学したては結構憧れてる女子多かったけど、近藤さんの熱に周りが撤退してったっけ


美亜:近藤さん、可愛いからワンチャンあったりして。…まあ、男女逆転してたら可能性ほぼゼロだけど


和樹:なんでだよ!一緒じゃんか


美亜:全然違う!あんたさぁ…7個も下の男を女が本気で相手すると思ってんの?17の男を?…ナイナイ。遊ばれて終わり、ならまだわかるけど


啓介:鈴木先生は遊ぶとか無理そうだけど


美亜:わかんないわよ。教師なんて、一歩学校出たらただの人。真知子先生だってただの女なんだから


和樹:そんなことねぇよ!真知子先生をお前が語るなよ!


美亜:一般論よ、一般論!あんたこそ、真知子先生のことなんにも知らないのに好き好き追いかけまわして、ばっかじゃないの!


和樹:あんだと?


美亜:なによ!


啓介:まあまあ二人とも。あ、ほら、和樹、今日美化委員の活動あるんだろ?そろそろ行かねぇと


和樹:あ、やべ。そうだった、忘れてた


美亜:さっさと行けば


和樹:うるせーな!


啓介:ほい、和樹の分のポッキー


和樹:さんきゅ。んじゃ、おつかれー




0:和樹退場。




啓介:美亜


美亜:…なによ


啓介:いいのか?あんなこと言って


美亜:………いいわけないでしょ


啓介:ほんと美亜は、和樹のことになるとムキになるよな


美亜:だってぇ


啓介:あいつ、お前の気持ち全然気づいてねぇぞ


美亜:知ってるわよ


啓介:言わねえの?


美亜:言えるわけないでしょ!あいつ、真知子先生のことばっかり追いかけちゃってさ…近くにこんなに可愛い幼馴染がいるのに、ひどいと思わない?


啓介:そうだな、美亜は可愛いよ


美亜:うう。啓介の優しさが痛い


啓介:本気なんだけどなぁ


美亜:ねぇ、啓介


啓介:なに?


美亜:あいつさ、なんであんなに真知子先生のこと好きなの?


啓介:なんで美亜はそんなに和樹のことが好きなんだ?


美亜:…知らないわよそんなの


啓介:それと一緒だよ


美亜:ああもう!真知子先生なんか大っ嫌い


啓介:ほんと、こんがらがってんな、みんな


美亜:あたし、啓介を好きになればよかった


啓介:ほんとにな




0:5月。グラウンドにて鈴木を見つけた和樹が駆け寄る。




和樹:あ!真知子先生


鈴木:本堂くん。今帰り?


和樹:そうです。俺今期美化委員当たっちゃって


鈴木:ご苦労様です


和樹:いえいえ。おかげでこうして先生の顔見て帰れます。ラッキーです


鈴木:…気を付けて帰ってね


和樹:あ、先生


鈴木:なんですか?


和樹:好きです。そのスカートも、めちゃ似合ってます


鈴木:…戸締りしちゃうから、早めに校門出てね


和樹:了解っす!せんせ、また明日!


鈴木:はい、さようなら




0:和樹退場。入れ違いで美亜登場。




美亜:…ねぇ


鈴木:あら、びっくりした。いつからいたの杉本さん。杉本さんも今帰り?


美亜:真知子先生、彼氏いるの?


鈴木:え?…杉本さん、プライベートな質問は答えちゃいけないことになってて


美亜:いるの?いないの?


鈴木:杉本さん


美亜:答えてよ!いるって、言ってよ…


鈴木:杉本さん?どうしたの?……泣いてるの?


美亜:あんたがはっきりしないから!あんたが…


鈴木:…杉本さんは、本堂くんが好きなのね


美亜:………………先生は、和樹のことどう思ってるんですか


鈴木:大事な教え子よ


美亜:そういうこと聞いてるんじゃないの、わかりますよね


鈴木:…そうね


美亜:先生は、和樹のこと、男として見てますか


鈴木:見るわけないじゃない


美亜:だったら!脈なしだって言ってくださいよ!言わないからあいつ、2年もずっと先生のこと追いかけてるんですよ


鈴木:……だってあの子、言わないんだもの


美亜:え?


鈴木:いつもいつも、好きですって、それだけ。スカートが可愛いとか、メイク変えた?とか、めざとく気づいてくるくせに、なんにも私に要求しないの


鈴木:付き合って、もデートしよ、も一度も。告白の返事をくれって言われたことさえないわ


美亜:だからって!放置するなんて、いい大人のやることですか!?


鈴木:大人だからこそ、動けないのよ。なにかを請われれば、ばっさり切り捨てられるわ。でも、本堂くんはそれをしない。私の答えを知っているから、絶対に踏み込んでこない


美亜:先生からフったらいいじゃないですか


鈴木:付き合ってとも言われてないのに?


美亜:あんたの想いなんかいらないって、拒否してくれたらいいじゃないですか


鈴木:本堂くんの心は、本堂くんだけのものよ。例えばそれが暴走して誰かに迷惑かけたり傷つけてるなら話は変わるけど、彼が好きだというものを勝手に取り上げて壊すなんて、私はしちゃだめだと思う


美亜:先生はずるいです。姑息です


鈴木:…知ってた?杉本さん。姑息ってね、卑怯って意味じゃなくて、一時しのぎって意味なのよ


美亜:先生は、このまま時間が流れるのを待ってるんですか


鈴木:……そうするしかできないのよ


美亜:先生は…大人は…卑怯よ


鈴木:そうかもしれないわね




0:美亜退場。




鈴木:…はあ。どうしたものか…




0:9月、教室で参考書を読んでいる啓介と机に突っ伏している和樹。




和樹:全然真知子に会えねぇ


啓介:真知子呼びかい


和樹:んじゃあ「俺の天使」って呼ぼうか?


啓介:勝手にお前のものにすんな


和樹:なんで3年担任外れるんだよぉ


啓介:もともと副担任だっつの


和樹:副でもいいよ、受け持ってよ


啓介:もう5か月以上経ってんのに何言ってんだ。つか、鈴木先生ほぼ新任だろ?3年の担任持つ訳ねぇだろが


和樹:なんだよー今日冷たくない?


啓介:お前真面目に勉強しろよ、成績下がってんだろ


和樹:なんで知ってんだよ


啓介:やっぱり下がってたんだ


和樹:げ、カマ掛けたの?お前性格悪くねぇ?


啓介:引っかかるお前が悪い


和樹:んだよ。…3年生ってこんな時間なくなるもん?7限目8限目って、頭おかしくない?校舎出れるの7時半って。勉強しすぎて禿げそう


啓介:おうおう、いっそ禿げてしまえ


和樹:んだよー!しかも全然真知子先生の授業無いし!こんなに会えなくなるなんて思ってなかったぞ!


啓介:そりゃ、お前が理系選択だからな。現代社会の鈴木先生に教えてもらっても受験には絡んでこねぇぞ


和樹:あ゛ぁ…なんで俺はあの時理系を選んでしまったのか


啓介:お前が理工に興味あっからだろ


和樹:俺、真知子先生の為なら志望変えられるよ、まーじーで


啓介:お前それでいいの?


和樹:いいに決まってんだろ。先生は俺の全てなの


啓介:全てって…お前他に大事なもんあんだろ


和樹:…ねぇよ。俺には先生が全てだっつの


啓介:…あっそ。…俺、今のお前嫌いだわ


和樹:あー?


啓介:お前がそんなんならもう、かっさらうから


和樹:かっさらうって、何を


啓介:お前の要らないもんだよ


和樹:はぁ?意味わかんねー…




0:10月、教室に啓介と美亜。




啓介:美亜はお茶女子大受けるんだっけ?


美亜:そう、推薦狙い。もー今からドキドキもんよ!


啓介:美亜なら取れるでしょ。成績いいじゃん


美亜:まあね。そういう啓介は?国立大狙いだっけ?


啓介:おう。C判定だからもーギリよギリ。俺も推薦欲しいよマジで


美亜:頑張れ~受かったらなんか奢ったげるからさ


啓介:マジっ!?


美亜:食いつきいいなぁ。あんま高いものは無理よ?


啓介:マックのビックマック食いてぇ


美亜:ええ?そんなのでいいの?


啓介:おう!だからさ…受かったらさ、食いに行こうぜ


美亜:う、うん、いいけど…なんでそんな真剣に言うのさ。啓介そんなにマック好きだっけ?


啓介:言っとくけど…二人きりだかんな


美亜:……へ?


啓介:受かったらデート!約束だからな!


美亜:え?ええ?


啓介:あいつが他全部要らねぇって言うならもう遠慮する必要ねぇよな


美亜:啓介?何の話?


啓介:俺、マジで頑張るから!


美亜:う、うん、頑張って…?




0:11月、廊下にて鈴木と和樹。




和樹:あっ!せんせー!


鈴木:本堂くん。今帰り?


和樹:はい、今まで補修で


鈴木:そう。……最近成績が下がり気味だと聞いています。受験まで残り半年、頑張らないと


和樹:そう…ですよね…すみません…




0:二人の間に流れる重たい沈黙。




鈴木:…………それは


和樹:…?


鈴木:本堂くんの成績は、私のせいね?


和樹:あ、いや、それは……


鈴木:…本堂くん


和樹:…はい


鈴木:今あなたのやるべきことをやりなさい


和樹:…はい


鈴木:あなたの未来を投げ出さないで


和樹:……俺の未来に


鈴木:ん?


和樹:俺の未来に、先生はいますか


鈴木:え


和樹:俺の未来に、先生…いてくれませんか?


鈴木:………初めて、答えを聞いてきたわね


和樹:このままじゃダメなのはわかってます。うだうだやってても何にも進まないし、どんどんダメになってくし


和樹:真知子先生、答えをください。……俺、先生が好きです


鈴木:……ありがとう。………………ごめんなさい


和樹:……っ…ありがとうございました


鈴木:…受験、頑張ってね


和樹:はい…っ…




0:1月、神社にて初詣に来た3人。




美亜:はい、これ


啓介:ん?


和樹:なんだこれ。フェルト人形?


美亜:…御守り。合格祈願の


啓介:えっマジ!?これ、美亜が作ってくれたのか?


美亜:まーね!私推薦で一抜けしちゃったから。…二人には頑張ってほしいからさ


啓介:ありがと!すっげー嬉しい!


和樹:…ありがとう


美亜:…うわ


和樹:なんだよ


美亜:いや、和樹が私のしたことに素直にありがとうって言うなんて…珍しいこともあるもんだなぁって


和樹:俺そんなに捻くれてるか?


啓介:おう、そりゃもー捻くれまくってんぞ


和樹:啓介まで


美亜:…和樹、なんか変わった?


和樹:…そうかな


美亜:うん


和樹:…そうかもしれない。…あのさ


美亜:なに?


和樹:今日、初詣…誘ってくれてありがとう。嬉しかった。啓介も…サンキュ


啓介:……おう


美亜:変な和樹


和樹:うるせーよ。啓介、受験…頑張ろうな


啓介:おう




0:3月、合格発表の日。掲示板の前に美亜と啓介。




美亜:啓介…何番だっけ


啓介:1545


美亜:大丈夫、あれだけ頑張ったんだもん、絶対大丈夫…


啓介:俺の合格発表なのに、美亜の方が震えてんじゃん


美亜:だってぇ…


啓介:…まあ、ぶっちゃけると、俺もめっちゃ緊張してる。……手、めっちゃ震えてんだわ


美亜:…貸して


啓介:え?


美亜:手


啓介:あ、うん


美亜:…繋いだら震え、止まるんじゃん?


啓介:……なんか、別の意味でドキドキしてきた


美亜:バカっ!…啓介、いい?掲示板、見るよ?


啓介:…ああ




0:しばらくの間。目に飛び込んできた1545の文字。




啓介:っ…!美亜!あった!あったよほらっ!


美亜:あったっ……!おめでとう、啓介っ


啓介:ありがとう!美亜のおかげだよ!


美亜:何言ってんのよバカっ!啓介が頑張ったからでしょっ!!ほら、お母さんに連絡しなきゃ!あと学校にも!


啓介:あ、ああ、そうだな!


美亜:そんでその後は…………約束通り…マック、行くでしょ?


啓介:お…おう!………あのさ


美亜:なに?


啓介:……もっぺん、手、繋いでいい?


美亜:…しょーがないなぁ




0:卒業式の日。




和樹:もうこうやって3人で会うこともなかなか無くなるんだろうなぁ


啓介:なんだよ、寂しいのか?


美亜:バカね!今生の別れでもなし、会いたくなったら会いに行くから安心しなさいよ!


啓介:そうそう。大体、お前の大学俺のすぐ隣に立ってんだぞ?なんなら昼飯合わせて食えるレベルだぜ?


和樹:なんだよー体育館で泣いてたのお前らの方じゃん


啓介:俺は泣いてねぇよ


美亜:わ、私だって


和樹:あーそうですか。そういうのは涙の跡消してから言ってくださーい


美亜:なっ


和樹:……啓介、美亜…ありがとな、今まで


啓介:だから、そんな別れの挨拶っぽいのはいいって


和樹:そうじゃなくて。…けじめとして。三年間、色々ありがとう


啓介:…こっちこそ


美亜:私はあんたのお世話3年どころじゃないんだけど~?


和樹:それはこっちのセリフだ


美亜:なによ!


啓介:…和樹


和樹:なに?


啓介:……お前、もう一個けじめ、つけに行くとこあんだろ


和樹:…………


美亜:…7つも年下の男子高校生とか、論外だけどさ…男子大学生も論外かどうかは…わかんないわよ?


和樹:俺、フラれたよ?きっぱり


美亜:へぇ?諦めいいじゃん、和樹のくせに


和樹:……そうだな


美亜:らしくないって言ってんの。いいじゃん、一回フラれてんだから二回も三回もおんなじでしょ!本人にうっとおしいって言われない限りアタックすればいいじゃん!


和樹:…………お前こそ、らしくないな。俺の応援なんて今まで一度もしたことなかったじゃん


美亜:悪い!?……私の好きな…好きだった和樹は!一度や二度の失恋でへこたれたりしないのよ!


和樹:美亜…お前


啓介:…行けよ


和樹:啓介


啓介:…あーもう。空気読んでくれる?俺は今から、泣いてる彼女を慰めるのに全力出したいの


和樹:え、お前ら…嘘だろ


啓介:嘘じゃねぇよ。みんな前進んでるんだ。今ここで止まってても、爺さんになってから後悔するだけだぜ


和樹:……うるせーよバーカ。空気読んで消えてやるよ!


啓介:おう!…後でファミレス、待ってんかんな


和樹:…おう




0:廊下を歩いている鈴木を発見した和樹。




和樹:っ!せんせっ…!いたっ…!


鈴木:本堂くん!?どうしたの、汗だくじゃない。というか、廊下は走っちゃ行けません


和樹:ははっ…すみません


鈴木:なんで怒られて笑ってるのよ…お友達はどうしたの?杉本さん達と一緒じゃないの?


和樹:追い出されました。邪魔だからどっか行っててって


鈴木:はぁ?


和樹:先生見回りですよね、俺手伝います


鈴木:手伝うって…あなたにできることなんて一個もないわよ


和樹:口実です。先生と一緒に回りたいんです


鈴木:…はぁ。本堂くん、こっち来て




0:鈴木は空いている教室に和樹を引っ張り込んだ。




鈴木:あのねぇ、本堂くん


和樹:先生好きです


鈴木:っ…!


和樹:好き…好きです。めっちゃ好きです…大好きです


鈴木:本堂くん…


和樹:一度は諦めようとしました。これでいいんだって言い聞かせてました。…でも、無理です。俺、先生が好きです


鈴木:本堂くん、私は…


和樹:先生がきっぱり振ってくれたから、俺前に進むことができました。やらなきゃいけないことをちゃんとできました。…ご褒美くれとか、図々しいこと言いません。でも俺やっぱり、先生が好きなんです


和樹:迷惑だったらはっきりそう言ってください。俺、先生に迷惑掛けたくないです。ストーカーとかにはならないんで、安心してください


和樹:でも…でも俺……好きです……真知子先生が…大好きです


鈴木:…………バカな子ね


和樹:わかってます


鈴木:わかってないわ。あなたは、世間をなんにも知らないの。これからいろんな人に出会う。綺麗な子、素敵な子、可愛い子…いっぱいいっぱい出会うわ。私のことなんか、すぐ忘れるわよ


和樹:忘れません!俺の未来を先生が勝手に語らないでくださいっ!


鈴木:っ…


和樹:先生が言ったんです。「未来を投げ出すな」って言ったんです。だから俺は、俺の未来を、俺が決めます。これから先誰に出会うとか、今はそういう話をしてるんじゃないです


和樹:俺に、俺自身に…答えを出してください


鈴木:私は…


和樹:あーでも、執行猶予つけてください


鈴木:え?


和樹:先生は学校での俺しか知らないでしょ?俺も先生のこと、先生ってことしか知りません。だから、この制服を脱いだ俺と、デートしてください


鈴木:ええ?


和樹:前言撤回します。受験勉強頑張った俺にご褒美ください。…俺と、デートしてください


鈴木:…本堂くん、あなたね


和樹:これ、俺の連絡先です




0:和樹の差し出したメモに固まる鈴木。




鈴木:…あのね


和樹:俺からは連絡しません。どうしても嫌だったら俺が帰った後捨ててください


鈴木:……あなた、ちょっと姑息よ?


和樹:先生、知ってますか?姑息って一時しのぎって意味なんですよ?


鈴木:…杉本さんから聞いたの?


和樹:え、なにを?


鈴木:……ったく。……………負けたわ


和樹:え


鈴木:私、あなたがどんなところに連れて行ってくれるのか、すごく楽しみ


和樹:え…それって


鈴木:勘違いしないでね?デートするだけ。…それだけよ?


和樹:…………はいっ!!




0:5年後。新婦控室にて。




美亜:先生…綺麗…


鈴木:ありがとう。杉本さんも綺麗になったわね


美亜:今日の主役の新婦様に褒められてもっ


鈴木:ふふふ。本当に、綺麗になったわ


美亜:……ありがとうございます


鈴木:…杉本さん


美亜:はい?


鈴木:私は姑息だったわね


美亜:……そうですね


鈴木:あの時の質問、覚えてる?


美亜:質問?


鈴木:和樹を、男として好きかって聞いてきたあの質問


美亜:……忘れました


鈴木:そう


美亜:嘘です、覚えてます。…改めて聞きますね、先生。和樹のこと、好きですか


鈴木:ふふ。大好きよ、愛してるわ


美亜:…もう!そんな風に笑わないでください!聞いたこっちが恥ずかしくなりますっ!


鈴木:あら、聞いてきたのはあなたのほうなのに


美亜:……今日の式、楽しみにしてます。うんと幸せ、見せてください


鈴木:…ええ、任せて

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