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6.リィヴェの顔を見る度に貴方を思い出してたの


まだ、ロードン伯爵家に全て奪い尽くされるのではと…恐ろしく思う気持ちもある。だけれども、スネイヴを信じたい。そうリタは一歩踏み出す覚悟を決めた。



目を見開き、リタを見つめるスネイヴに、そっと向き直る。もう嘘は吐かないし、自分の素直な気持ちを伝えたい。

腕の中ですやすやと眠るリィヴェの体温を感じながら、真っすぐにスネイヴの瞳を見つめた。



「本当は、貴方に再会できて、嬉しかったの。リィヴェに貴女のパパよって教えてあげたかった。ママが…『大好き』なパパだって…愛しているのは…スネイヴなんだって……」


「っ……、リタっ!!」



リィヴェごと包み込むように抱きしめられた。何回も何回も夢見ていた。この胸の中で、彼の体温を感じることを─…


身体中が、スネイヴを好きだと、愛していると溢れ出るように歓びを感じる。スネイヴの顔は良く見えないが、小刻みな震えを感じ、きっとリタと同じように涙を流しているのではと思った。



「愛している。リタ。僕も君を愛しているんだ。リィヴェと君とこれから一緒に過ごしたい。一緒に居られなかった時間を少しでも君たちに返したい。愛してるって伝えたいんだ。駄目かな……?」


「ううん、駄目じゃない。私も、スネイヴと…リィヴェと一緒に居たい。ずっと…ずっと──」



引き寄せられる様に唇が重なった。あの日の花まつりのように、リタとスネイヴの時間はもう一度動き出した気がした。



◆◆◆



宿屋の部屋に入り、寝台へとリィヴェをそっと寝かせた。もう熱も引き、穏やかな表情で寝息を立てる愛おしい娘の頬をそっとリタは撫でる。


その横でスネイヴはリタの肩を抱き、同じように愛おしい娘の寝顔を見つめていた。



「良く寝ているね」


「ええ、本当に、貴方そっくりよね。リィヴェの顔を見る度に貴方を思い出してたの」


「眉毛はリタにそっくりだね。僕とリタによく似ていて…愛おしくて仕方ない」



きっとこれから甘々で子煩悩な父親になるだろうと、内心リタは苦笑する。


「リタ、今までリィヴェを護ってくれて、こんな良い子に育ててくれてありがとう。これからは、僕にも君たちを護らせて欲しい。絶対に、幸せにすると誓うよ」


「……、ありがとう、スネイヴ。貴方に、もう一つ言わなければいけないことがあるわ……」



本当は言わずにおこうと思っていた。けれども、リィヴェの危機にも繋がるかもしれないと、一緒にリィヴェを護ってくれると言ってくれたスネイヴに伝えなければとリタは重たい口を開いた。



「貴方と別れたきっかけは、貴方のお母様なの。スネイヴと別れなければ、カルマン商会を潰して、私や家族諸共消し去ると…脅されていたの。私は、貴方じゃなくて、家族と商会を選んだ。ごめんなさい。そして、貴方とよりを戻した今、また狙われるかもしれないわ……」



「……辛い選択をさせてしまったね。もう心配はいらないよ。母は後妻でね、実子の僕を嫡男にして自分の地位を盤石にしたかったんだ。亡くなった前妻の子である兄すら追い出してね。僕は兄を呼び戻し、後継者の座を返して籍を抜いた。今は伯爵家の実権は兄が握っている。母は何も手出しできないし、今は療養地に閉じ込められている」



今までリタを苦しめていた『スネイヴの母』の呪縛が、やっと解けた気がした。もう何も柵はないのだと、心からスネイヴを愛して良いのだと、心が震えた。



「じゃあ…私は、貴方の傍に居られるのね……リィヴェや家族に…危害を加えられることも、心配しなくて…いいの…?」


「勿論だ。僕は今この国で新しい事業を興していて、まあまあの稼ぎはあるから、大船に乗ったつもりで嫁いでくれ」


「え……?」


「結婚しよう、生涯をかけて君とリィヴェを大切にするよ」



突然の求婚にリタは時が止まったかの様に思えた。やっと呼吸を思い出し、息を吐くと、ドキドキと心臓が早鐘を打つ。答えは決まっている。



「どうぞ…宜しくお願いします」




花まつりの日──


止まっていた運命の歯車は、また動き出した──





◆◆◆




「ママーっ!パパ―っ!おめでとうなのっ!」



可愛らしい純白のミニドレスに身を包み、リィヴェはヴァージンロードで花びらをまく。その後ろから、リタとスネイヴが幸せそうに歩を進めた。



初夏の良き日。


リタとスネイヴは夫婦となる。



式の参列者はリタの家族とスネイヴの兄、そして本当に気心知れた人のみで小規模な式であるが、幸せそうな二人に誰もが満面の笑みで祝福を贈った。



「リタ。愛しているよ、可愛い僕の花嫁。ずっと隣で笑っていて欲しい。リィヴェと共に」


「私もよ。ずっと、ずっと、貴方が大好きよ、愛しているわ、スネイヴ」



「パパ、ママ、だいすきよーっ!!」



祝福の鐘が鳴り響いた──






END







最後までお読みいただきありがとうございました(*^^*)!!

すれ違ったリタとスネイヴ、愛娘のリィヴェと共にこれから幸せに過ごすのでしょうね。

スネイヴの溺愛が目に浮かびます笑


もし宜しければご感想、ブックマーク、いいね、広告下の『☆☆☆☆☆』で評価いただけますと作者の励みになります!!

どうぞよろしくお願いいたします♪♪


~追記~

誤字報告・ご感想、沢山のいいね、ブックマーク、ご評価をいただきまして、ありがとうございました!感謝の気持ちでいっぱいです!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 二人が幸せになってよかった! 身分とか親とか関係なかったらそのままの二人だったのに……。 でも本当によかったです。 ステキなストーリーをありがとうございます!
[気になる点] 実家の取引先はどうなったのでしょうか?取り止めたものはすぐに戻せないのでは? その間の損失を伯爵家は払ったのでしょうか? 別れた理由が商会に対する脅しなので、その辺りの顛末をスッキリ…
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