表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お題シリーズ2

雨粒の妖精さん

作者: 透坂雨音



 日常の何気ない瞬間の中、私は雨粒の妖精さんと話をしていた。


 そらをふわふわ浮かんでいるその妖精さんは、水の気配がすると人の前に姿を現す。


 けれど皆は、妖精さんの事は見えていないんだ。


 妖精さんなんていないもの、って思ってるから。


 でもね、妖精さんはいるんだよ。


 この世界に、確かに。





 雨がぴちょぴちょ。


 規則的に音楽を奏でてる。


 今日はずっと空から、降りっぱなし。


 こういう日は考えちゃうんだ。


 皆の涙が雨になってしまえばいいのにな。


 そしたら、きっと世界中のあちこちに泣いてる人がいるって事、気がついてもらえると思う。


 だってこういう日は、もしかしたらたくさんの人が泣いてるんじゃないかって思っちゃうから。


 雨になるほど涙を流して悲しむ人がいるって、そう思ちゃうほどの世界だから。


 他人なんてどうでもいいや。

 そんな顔して通り過ぎていく、町の人達。


 どうしてそんなに知らんぷりなの?


 寂しいよ。


 そう思っていたら、近くにいた雨粒の妖精さんがやってくる。


 妖精さんは、不思議そうな顔をして私に語りかけてきた。


 どうしてそんな表情をしてるの?


 って。


「普通はそんなに、人の事を気にしないんだよ」


 どうして?

 興味はないの?

 気にはならないの?


「自分の事が一番だから、あとは身近な人が二番だから。それ以外を気にしても、なんともできないしね」


 雨粒さんは、人間じゃないのに、人間の事がよく分かってるみたい。


 世界中で降る雨だからかな。


「できない人の方が多いんだ。だって人間だから。君だって、世界中の人の涙を止める事なんてできないだろ?」


 そうだね。


 だけど。


 気にしてさえいれば、いつか多くの人の涙をとめられるかもしれないよ。


「そうなる前に、大半の人間は潰れちゃうよ。そんな事も分からないんだ」


 けらけら。


 笑いながら妖精さんはどこかに行っちゃった。


 なんだか、私はちょっとさみしい。


 たくさんの人がまわりに、いるのに。


 とってもさみしい。


 へんてこだね。







 私は雨の降りやまない空を見上げる。


 雨粒がぽつぽつ。


 音が寂しそう。


 今日もどこかで誰かが泣いてるんだろうな。


 いつもどこかで誰かが泣いているんだろうな。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ