表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「血の家」  作者: 石橋 渉(ろわぬ)
4/86

四雫

挿絵(By みてみん)


「な、何かの間違いなんじゃないのか!?」


「------いえ」


近藤は、自分の傍に詰め寄って来た正之から


距離を置き部屋の中にいる人影を見渡す


「------征佐何て名前の人間、


 この叶生野の家にはいないんじゃないか」


「"征佐"様は、確かにこの叶生野の


 人間で御座います.....」


「-------私たちが知らない、


 誰か、尚佐お祖父さまが別の女に産ませた子が


 いると言う事かしら....」


「・・・・」


尤光が、チラリと征四郎を見る


「....そうだとしても、


 全く聞き覚えの無い名前だ」


「書き間違いとかじゃないか?」


「-------ガハハッ!」


「.....?」


正之と明人の話に、叶生野家の長男である


善波が大きな笑い声を上げる


「------親父が、そう決めたんだからっ


 そう言う事だろうっ!?」


「い、いや------」


「近藤っ!」


「....はい。」


「その、征佐と言うのは、どんな奴なんだっ!?」


「------征佐様は...」


「どんな奴だっ」


善波に目線を合わせない様にしているのか、


近藤が伏し目がちに床を見ながら呟く


「征佐様は、この叶生野荘の中に


 いらっしゃいます-------」


「この、叶生野の村の中にかっ!?」


「そうで御座います-------....」


"叶生野荘"


今現在、征四郎たちがいる


御代 尚佐の邸宅周辺に広がる


叶生野家に(ゆかり)のある一族が


家を建てた場所で、古い歴史がある


叶生野の人間の数が次第(しだい)


尚佐の邸宅から広がり、この辺り一帯は


一つの村の様になっている


「叶生野荘にいるのか.....!」


「だったらっ! その、"征佐"をっ


 今すぐここに連れてくれば


 いいんじゃないのかっ!?」


「・・・・」


伏せていた目を、近藤が善波に向ける


「.....それはできません」


「------何を言っている」


「征佐様は、あなた方叶生野の一族の者とは違い


 非常に神経質な方でございます.....」


「神経質っ! それが何だっ!?」


「従って、いくら尚佐御大が、


 征佐様を次の御代にお定めになられた所で


 征佐様は、おそらく次の御代になる事を


 拒否されることになるでしょう.....」


「.....何を言ってるんだ」


言葉の意味が分からないのか、明人が


戸惑った様な表情を浮かべる


「------それでは、次の御代の意味がないだろう。


 それでどうやって一族を


 (まと)めると言うんだ?」


「・・・・」


明人から視線を外すと、近藤は正之に目を向ける


「_____ガサッ」


「・・・・!」


懐の中から別の紙を、近藤が取り出す


「善波、尤光、正之、明人、雅、綾音、


 征四郎、それと-------」


部屋の中に集まっている叶生野の人間、


そして、征四郎やこの場にいない


他の一族の名前が部屋の中に響き渡る--------


「これらの者は、私が死んだ(のち)


 この"征佐"を補佐する立場として


 この叶生野の家の御代に変わるべき


 存在となって欲しい--------」


「な、何を言ってるんだ?」


「この、叶生野荘の中にいる、征佐の承諾を得て


 征佐と共に、この叶生野家を


 纏めて欲しい--------」


「--------、!」


「じゃ、じゃあ.....!」


「・・・書簡には、その様に


 書かれております--------」


「(征佐------....)」


「じゃ、じゃあ、その征佐から許可を取れば、


 次の御代になれるって事か?」


「--------....」


「(--------、)」


部屋の中にいる、叶生野の一族の顔を


征四郎が見る


「(-------征佐...)」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ