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「血の家」  作者: 石橋 渉(ろわぬ)
12/86

十二雫

挿絵(By みてみん)


「じゃあ、雅彦さんも、


 "征佐"には心当たりは無いのか------?」


「ええ、少なくとも次の御代に


 なられる様な方の話は


 私もあまり聞いたことが....」


"カチャ"


「ああ、すいません」


「何も無い場所ですけど、


 よかったら珈琲(コーヒー)でも


 如何(いかが)?」


「------ええ。」


「じゃあ、他には------」


「ああ、それだったら、田島だったら------」


来宮の夫人が差しが出して来た


珈琲のカップを受け取ると、征四郎は


善波と雅彦のやり取りを見ながら


部屋の中を見渡す--------


「(--------、)」


簡素な、黒基調の広いとは言えない


欧風の館を思わせるような部屋の中には


赤い絨毯(じゅうたん)が敷かれ、


窓際には、何か観葉植物の様な物が置かれている


「------お砂糖は良かった?」


「------ええ」


「・・・・」


"カチャ"


"カシャッ カシャッ カシャッ カシャッ.....


すでに空になったテーブルの上に置かれた


珈琲のカップを平たいプレートの上に乗せると、


雅彦夫人はそのまま部屋の中から出て行く--------


「じゃあ、その田島に聞けば


 何か、征佐の事が分かるかも


 知れないって事か?」


「い、いえ、そうとは------」


「田島?」


カップから目を反らし、征四郎が二人を見る


「ええ------。」


善波から、征四郎の方を雅彦が見る


「先程から、何人か叶生野の家の方がここに


 いらっしゃってはいましたが、


 私が申しあげたのは


 何か、先代の事に詳しいのは


 田島では無いかと-------。」


「・・・という事は、他の叶生野一族の人間も


 この館に来た?」


「ええ------」


「誰が来たんだ?」


間を置かず、善波が雅彦に尋ねる


「いえ、皆さん、お急ぎの様で


 すぐにこの家から別の場所へと


 向かわれましたが-------


 ここに来たのは、


 尤光さま、正之さま、そして


 雅様がお越しになられましたが-------」


「・・・あいつらは、何と言ってたんだ?」


「あまり、詳しくは申し上げられませんが、


 何人かの名前を申し上げると、


 すぐにそのまま、皆さんそちらの方に


 向かわれたようですが.....」


「------そう言えば」


「------?」


何か思い出した様に、征四郎が


珈琲のカップから口を外す


「さっき、入口の前に、いた男------」


「ああ、アイツか------」


「------?」


善波と征四郎のやり取りに、雅彦は


無表情で二人を見る


「そう言えば、さっきこの家に誰か来てたろ?」


「------?」


言葉の意味が分からないのか、雅彦が


自分の左頬辺りを親指でかく


「いや、何か、サングラスをして


 帽子を被った-------」


「・・・・・」


征四郎の言葉にも、雅彦はまるで心当たりが


ない様にきょとんとした表情を浮かべる


「さっき、ここに、一人男が来たよな?」


「男・・・」


「知らない....?」


「いえ、先程、二時間前程に叶生野の家の方々が


 来られた後より、この家に来客は


 来ておりませんが....」


「-----何を言ってるんだ。 さっき俺たちは


 この家の前で、男-------


 ....なあ? 征四郎くん」


「・・・ええ。 サングラスに、マスクをした


 少し、体の大きい男が 確かに一人-------」


「------?」


「来てないのか?」


「ええ。 その様なお客は


 この家には来てないかと存じ上げますが....」


「・・・?」

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