幼馴染をフッた翌日に告白されたんだが
夏休み。幼馴染で彼女の涼野春奈の家に行くと、扉が開いていた。一人暮らしなのに不用心だと思いながら、中に入って行くと部屋が暗くて誰もいないようだ。
「おーい、いないのか?」
リビングにも、洗面所にも彼女の姿はない。あとは寝室だと思い、中に入るとそこには裸で男と一緒に寝ている彼女の姿があった。俺は訳が分からず、春奈を起こす。
「おいっ起きろっ!」
「ふぇ、だれ?」
俺の声で起きた春奈は、目を擦りながら周りの状況を見ると慌てたように口を開いた。
「ち、違うの! これは浮気とかじゃなくて……」
「何言ってんだよっ!! 誰がどう見ても浮気だろ」
「でも、違くて」
「もういい、今日で別れよう」
「えっそんなの嫌だよ!」
「嫌でもしょうがないだろ、浮気してたんだから。学校でも俺には話し掛けるなよ」
それだけ言い残し俺は自分の家に帰っていく。
なんで浮気なんかしたんだろう。俺がいけなかったのかな。自分にもいくつか責任があるのかもしれないと思い、その日は家に着いてから自分を責め続けた。
翌日。眠れないまま朝を迎えた俺は今日、高校に用がある事に気付く。
学校で課題をやっていなかったから、担任の先生に夏休みのプール掃除を任されたんだ。面倒だけど、俺が悪いから行くしかないよな。
支度をして俺は高校まで向かった。学校にはほとんど生徒はいないから、誰にも会えなくてつまらない。
プール掃除をすぐに終わらせたい俺は、掃除用具を用意してプールに入るとそこには一人の少女がいた。あの綺麗な子は、確か聖女様とか呼ばれてる綾織冬香だよな。しかも水着姿なんですけど。
すると彼女は俺に気付いたようで、話し掛けてきた。
「あっもしかして奏人くん?」
「えっ知ってるの」
「もちろん知ってるよ。同じ学年で、確か春奈ちゃんと付き合ってるんだよね」
その言葉を聞いた俺は、突然頭がクラクラとして倒れてしまう。
「えっ大丈夫? だいじょう……ぶ……」
綾織の声が遠のいていく……。
次に目が覚めた時には横になっていた。だけど頭には柔らかい感触がする。あれ、俺倒れたんだよな。
すると綾織が話し掛けてきた。
「あっやっと目が覚めた! 大丈夫?」
「えっもしかして、膝枕してるの!?」
「ごめん、嫌だったかな?」
綾織は困ったような顔で言ってくる。嫌というかご褒美なんですが。
そうは言えない俺は、起き上がり言った。
「えっ、嫌じゃないよ。それよりも綾織さんありがとね」
「ううん、これくらい大丈夫だよ! それより何かあったの?」
「実は昨日、春奈が浮気してて別れたんだ……だから名前を聞いたらクラクラとしちゃってさ」
「えっそうだったんだ……ごめんね」
「いや大丈夫だよ。綾織さんが謝る事じゃないし」
「う、うんわかった」
「あっそれより俺、掃除しないといけないから」
ふらふらとしながら起きあがりブラシを手に持つと、綾織が何か言いたい様子だ。
「どうしたの?」
「わ、私も手伝うよ!」
「えっ大丈夫だよ」
「て、手伝いたいから手伝わせて!」
「そこまで言うならいいけど」
綾織は一緒に掃除をしてくれるようだ。
掃除をしながら俺は、疑問に思っていたことを聞いてみた。
「あっそういえば、なんでプールにいたの?」
「えっ、プールが好きだからだよ。先生にもちゃんと許可も貰って入ってたんだ。水着姿は少し恥ずかしいけど、濡れるかもしれないから一応着ようと思って」
「そうだったんだね」
そんな話をしながら掃除が終わる頃、綾織が口を開いた。
「あのさ、さっきの話なんだけど……」
「さっきの話?」
「春奈ちゃんとは……もう別れたんだよね」
「う、うん別れたよ……」
「それで言うのもあれなんだけど……よかったら私と、お付き合いしてくれませんか?」
「えっ……」
バタッ
「だ、大丈夫!?」
聖女様に告白された俺は、また倒れてしまうのだった。
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