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挨拶の距離

作者:A-9
 挨拶が大事らしい。なので早速挨拶を心がけてみることにした。目を覚ました私は眠気を振り払うようにベッドを降りる。
 リビングでは一家の大黒柱が新聞紙を広げていた。私は「おはよう」と声を掛けたが、大黒柱は新聞の向こうで「うん……」と気のない返事を返す。そこへ私の姿を認めた母が「もう起きたの? 今ごはん用意するから」と台所へ走る。彼女は私の実母ではない。養母といった所か。血のつながりも何もない私の為に毎日とても良くしてくれている。しかし、その事について私は彼女に何一つ気持ちを伝えたことがなかった。感謝、それも大事な挨拶のひとつだ。
 母が私の朝食を持って台所から現れると、それを私の前に置く。今がチャンスだ。
「いつも本当にありがとう。いただきます」
 挨拶って素晴らしい。しかし、母はあんぐりと口を開けて、信じられないと言った顔つきで硬直して私を見つめると、途端に我に返ったように「ねえ、あなた、あの子が!」と大黒柱にじゃれる。大黒柱はこれにも新聞顔で「うん……」と返事。その間に食事を終えた私は「ごちそうさま」と言って、陽気な日差しに誘われるように外へ出る。
 まだ朝なのに、すれ違う人は多い。見ず知らずのサラリーマン、時を急ぐ学生、暇そうなおばさん、いつも優しくしてくれる近所のおばあちゃん。私はその一人一人とすれ違うたびに「おはようございます」と元気よく声を掛けた。しかし、誰もがびくりと硬直したり、気付かない振りを見せたり、中にはクスクスと笑いながら好奇の目を浴びせられたりと、まともな返事が戻らない。
 なにが挨拶だ、明るい近所づきあいだ。現代人って奴は他人との関わりを避けるように作られているんだ。挨拶なんてやめたやめた。
 私は垣根の上に登ると、バランスを崩さないよう四本の足で身体を支えて散歩の続きを楽しんだ。途中、すれ違った人間を見下ろしながら「ニャア」と鳴いてあげた。

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