表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/36

5話.成長

やっと次の展開へと進めます。

※Prologueを着地地点として書いていきます。

 私の魔法師としての特訓が始まり、2週間がたった。


 最初は成長している実感なんて湧いてこなかったけど、今は少しずつ頭を使った行動が出来るようになってきたと思う。

 知識が付いたことにより、自分がどういう風に動けばいいのかが分かってきた。

 師匠という類似の魔法を使う人に師事していることもあるが、基礎に基づいた応用も考えつくようになってきた。


 今、私は魔法の応用性の高さと、自分の成長をしっかりと認識できていると思う。


「出来ることが増えたのが嬉しいのは分かるけど、お風呂のお湯を氷にするの止めない? 見た目氷風呂で、暖かいお湯なのは、ちょっと気味が悪いんだけど」

「一日中魔法の練習をすることって言ったのは、師匠だよ。見た目は、水晶とかが浮いてると思えばいいんじゃないかな」


 そして私は今、師匠と一緒に借家のお風呂に入っている。

 2人で入ると少し狭いが、気にしない。


 暖色系の照明と溢れる湯気の中、私は浴槽に浸かりつつ手の平に掬ったお湯を氷に変えていく。

 2週間の努力の結果、私は一般的に使われるお湯などの温度では溶けない氷を生成できるようになった。


「まぁいいけど。お湯を使い切るとかは止めてね」

「はーい」


 小さな子供みたいにちゃんと分かっているのか判断しにくい返事をした私は、ふと気になって洗い場で体を洗っている師匠に目線を移す。

 普段は服で見えない部分が、所々薄っすらと赤くなっている。

 その赤さは手や足、さらには顔にも浮かんでおり、まるで痣みたいだ。


「? 何?」

「えーと、師匠の体って綺麗だなーって」

「……もしかして、この火傷痕が気になる?」

「……うん」


 火傷だったんだ。

 ただ肌が赤くなるだけだから、そういう体質とかなのかと思った。


「昔、私が住んでいた町で事件が起きてね。その時に友達を助けようとして、無理をした代償だよ。お遊びレベルの魔法しか使えなかったのに、何を勘違いしたのか燃え盛る建物に入ってね」


 師匠は笑いながら話を続けていく。


「その友達を救えなかった上に、私は全身大火傷。治癒魔法でここまで治ったんだけど、体温が上がると、こんな風に傷が酷かった部分が浮かび上がるの」


 師匠は体を洗う際に身に纏った泡を洗い落とし、腕に見える火傷部分とそうでない部分の境目を見せてくる。

 磁器のように綺麗な肌に浮かぶ痕は、師匠を襲った炎の強さを物語っているようだった。


「この傷は、弱かった私がいたっていう証みたいなものだから。これが無かったら、私が強くなろうと思わなかっただろうし、ルナに魔法を教えることは無かったかもね」

「私は人の傷跡を見て、そう思うことはできないなー」


 トラウマになっていそうな事柄を笑って話せるって言うことは、一応踏ん切りは付いている、のかな?


 でもあまり触れない方がいいよね。

 これって。


「ま、まぁ! 師匠の肌も気になってたけど、もっと気になる所があるよ!」


 暗い雰囲気でいるのも嫌なので、私は勢いで何も考えずに話題を変えようと口にする。


「師匠の胸の大きさとか!」

「――」


 師匠が笑顔のまま固まった。

 心なしか仮想粒子の結合を感知はできないけど、師匠が魔法を発動している気もする。


「師匠は大人っぽい時もあって、女性らしい豊満な体だって時々勘違いすんだけど、実際は私よりも小さいもんね」

「ルナ」


 私服もゆったりとした服装をよく着ているせいで、体のラインを強調するようなことも少ない。

 雰囲気でよく誤解するが、師匠の体格は女性的というには不足が多い。


「でも、私は動きやすいサイズだと思うよ。戦闘とかでも邪魔にならないし――」


 風呂場にあり得ない音が響き渡る。

 その音の発生源へ私が目を向けると、そこには洗い場の鏡が半液状のように変形しているのが見えた。

 ウネウネと動いているソレは、元の鏡の状態に戻ったり私の知識外の形状になったりしていて、気持ちが悪い。


「は、ははっ……。どーせ私は妹以下の胸囲ですよー」


 沈んだ表情で体の泡を洗い流していく師匠。

 先程の火傷の話とは別の意味で暗い雰囲気になってしまった。


「ごめん、師匠。私、先に出るね」


 結局打開策が思いつかなかった私は、一刻も早くこの場から逃れようと、浴室から出ていく。

 脱衣室で体を拭き、寝間着へ着替えている時も、何度か風呂場の師匠へフォローを試みたが、大きな成果は無かった。


*


「――うん。うん、分かった。じゃあ明日合流ね」


 風呂場での出来事から一時間後。

 師匠は突然来た携帯端末への電話の対応に追われていた。

 話している雰囲気では、たぶん統括騎士団絡みの話だろうと思う。

 距離があるので内容は聞き取れないけど、こんなことで聴力を強化する必要もない。


 後で聞けば教えてくれるだろうし。

 なので私は、師匠の邪魔をしないように作ってもらったホットミルクを少しずつ口にしていく。


「ふぅ」

「師匠終わった? 明日とか何とか言ってたけど、もしかして明日からしばらく私一人?」

「違うよ。ルナにとっては嬉しいお知らせだけど、私には少し不安な話なんだよね」


 一時間前とは違い、いつもの穏やかな表情を見せる師匠は、受けていた電話の内容を掻い摘んで説明をしていく。


「明日から数日、他の惑星に行く予定が出来てね。お察しの通り統括騎士団の仕事なんだけど、少しでも人員が欲しいみたいで」

「人員? まさか」

「その一人にルナが選ばれたって訳。教育の進行状況を見る為に、実戦投入だって」

「――やったぁ! あっ……」


 身を乗り出して喜ぶ私は、勢い余って魔法を発動してしまう。

 湯気立つホットミルクは冷気に包まれて、一瞬にして冷蔵庫から取り出したばかりのミルクに変わってしまう。


「それ、温め直す? ――ああ、もう。そういうことするから不安になるの」


 ため息をつく師匠は席に座りつつ携帯端末をテーブルに置き、空間投影のデータを広げていく。

 内容はよく分からないけど、明日の仕事用の資料みたいだ。


「惑星インゼルケッテ、海の惑星かー。現地の人員不足で私とかに声がかかってくるのは分かるけど、受けた任務の内容は、ルナにはまだ無理なんだけどなー」

「だったら断ればよかったんじゃないの? そんなに危険なら私は待ってるよ」


 資料と睨めっこをしている師匠は、どうやら私を連れていく事に不満があるようで、ブツブツと不満を呟いている。


「最初はそう言ったんだけど、実際は現地の人と一緒に行動することになるらしいから、大丈夫かなと思ったんだけど。考えれば考えるほど不安だ」

「いったいどういう任務だったの?」

「現地のお偉いさん達の護衛。3日後に会議があるから、期間はそれが終わるまで」

「へー」


 護衛。

 つまり統括騎士団に依頼をしてきた人を守れば良いってことだよね。

 確かにまだ私は他人を気にしながら戦うのは出来ないってことは、自分でも分かる。


「あれ? でも人手不足なら師匠一人でも足りないんじゃないの? 確かに師匠の魔法は便利だけど、限度があるというか」

「うん、ちゃんともう一人いるよ。そっちに関しては何の問題もないよ」

「もしかして、知ってる人だったり」


 今まで苦い顔をしていた師匠が、私の質問に対してクスリと笑ってこちらを向く。


「私の幼馴染。私がこの世界で何よりも信頼している人の一人だよ」

≪世界観まとめ≫

・惑星インゼルケッテ:海の惑星。惑星の表面が10割海水に包まれている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ