伝わる熱意
「村に行くのですね…私にご協力させて下さいませ。」
お鶴さんがそう言う。
人化出来るし、人語で話してるし、僕なんかよりは人と関わっているのだろう。
「まず、村に魔物を連れて入るには身分証と従魔登録証が必要になるのですわ。これらはギルド…いえ大きい街でないと発行してもらえませんの。」
街は外壁に囲まれてて村の方が入るの簡単だと思ったけど。そりゃそうだよね。
テルはまだいいとしてもゴンタ見たら騒ぎになるだろう。
「そこで提案なのですけど、身分証と従魔登録証を発行する為に"イズモノ街"に行きませんか？」
"イズモノ街"について聞くと
オロにみせてもらって、大陸自体は小さく大きい街が2つほどあるのは知っていたが、
この海に囲まれた大陸が1つの国で、
今の首都が"イズモノ街"(アルブムウラル森林に近い位置にある)で、
そこから南東に見える街が昔栄えていて首都だった"イセノ街"だそうだ。
「そのイズモノ街で私お店を営んでおりますの。鶴の恩返しという名前の服屋なんですけども、なかなか有名で私の紹介でしたら街に入りやすいと思うのですわ。」
鶴の恩返し…八岐大蛇、イズモノとかでも薄々思ってたけど
おかしいなぁ、僕異世界来たよな？
あ、これあれだ。
異世界転移モノのラノベで
『その名前、黒髪黒目さてはお前、遠い東の国のやつだな？』の東の国というやつじゃないか？
僕の種族ハーフエルフらしいからこの世界全体が日本っぽい感じじゃなさそうだし。
「ごめん、お鶴さん話変わるんだけど、この国の位置って世界から見てどの辺なのかな？」
「東の位置ですわ…コウたん様は西の大陸から渡って来たのではないのですか？だからこの国の常識などが分からないのかと思っていましたが何やら違いそうですわね。……あなたは一体どこから来たのでしょう。」
『それ、俺も思ってたぜ。魔力の使い方も最初不安定だったしな、しかも空間魔法なんて聞いたことねぇ。』
あぁ、これちゃんと話さないと。
信用出来る人もいないし、何より人は苦手だ、
だから魔物と静かに暮らしたい。
「黙っててごめん……信じてくれるかは分からないけど」
と、
地球という所に居た事、そこで人が苦手になった事、苦労、この世界に来ることになった経緯を全て話した。
『コウたん』とオロは抱きつき、ゴンタは頭をわしゃわしゃしてくる。
ちょっ、ゴンタ爪恐いよ。
テルはずっと肩の上に居る、
神様とのやり取りを卵だったが知っていたらしい。
「なるほど、合点がいきましたわ！この世界の知識が乏しいこと、そもそもライトニングラーテルは神様に仕える聖獣と言われていますものね。」
えっ、そうだったの？
確かにこの可愛さは聖獣級だ。納得。
「しかし、何故人が苦手なのに村に行こうとしたのですか？」
「僕ね、みたんだよ……村に田んぼ…稲があるのを！あれは米があると！ここに来るまで魚とか木の実しか食べてない。食べたい、お米を、主食を！いや、魚も木の実も地球で食べたのより美味しかったよ？でも、あーこの魚とお米があれば最強なのにとか、この鍋のシメにお米を入れて雑炊を食べたいと！…そんな矢先にみつけちゃったら行きたくなるでしょう？…それに…こっちの人はまだ会ったことないから、少しずつ地球での苦手意識を克服していけたらなと思うし。」
いや、街より村の方が入りやすそうかな、と慎重に考えてたよ？うん。
「お米美味しーのー？テルもたべたいなー♪」
『コウたんがそこまで力説するとは、気になるのだ！』
『コウが長文喋るの初めて見たな。』
ゴンタ、長文とか言うんじゃないよ。
「わかりましたわ。時間もそろそろ夕飯時、私とオロ様は魔力供給で満たされますが、コウたん様達はお腹も空いてきた頃でしょう。…ですが30分、いえ15分程待って頂きたいのです。オロ様に人語を叩きこみますわ。」
15分しごかれたオロは
口数少ないものの受け答えできるくらいには人語をマスターしていた。
「流石オロ様、覚えがいいので教えがいがありましたわ。」
「うぅ…人語難しい…のだ。」
「早速ですが街に行きましょうか。」
まずこちらにゲートを作り、
オロの頭に僕とお鶴さんが触れて、
お鶴さんが指定した所にゲートを作り皆でくぐった。
