友達になった瞬間
今回は、カルマ視点です。どうぞ、楽しんでください。.+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.
俺は、珍しく早起きをしてリべルテを待っていた。
「おはよ、お前にしては遅かったな?」
「あぁ、おはよう。少しの間、アルドとクウザに怒られてた。まぁ、気にするな。いつもの事だ。」
苦笑混じりに、座って朝ごはんを食べるリべルテ。
「今度は、いったい何をやらかしたんだ。」
思わず、ニヤリと笑うとリべルテはドヨーンとしてから俺を見てため息をつく。
「おまえなぁ……。絶対、楽しんでいるだろ。」
「もちろん!優等生の、お前が怒られるなんて滅多に無い事だしな。」
冗談っぽく、俺が言えばリべルテはまた苦笑を浮かべて食事を再開する。
そう言えば、昔はこんな冗談さえしないくらい会話が無かったんだっけ。俺は、昔を思い出した。
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俺の名前は、カルマ・イシュナウド。
親の暴力で、精神的に疲れて国王達に助けられた。今日から、学校に行くことになった。
でも、はっきり言うと学校は嫌いだった。沢山の人に囲まれ、下心のある笑みでごまをする。気持ちが悪くて、いつしか図書室に逃げるようになった。
そんなとき、図書室の古文書庫であいつと会った。俺に気付いて、一瞥すると本を無表情で読みはじめる。すると、俺を探すクラスメイトの足音がして俺は焦るように左右を見る。
「君、うるさいのを連れてきたな。」
ため息をついて、本をパタンと閉めると俺に手招きする。そして、三段目の赤い本を抜き取り五段目の青い本と入れ替える。ガタンと音がして、本棚が前に出てくると右にスライドして扉が現れる。
「なっ!?何だこれ!」
「良いから、早く入ってくれ。」
あいつは、扉を開けて俺を突飛ばすと本棚をスライドさせて戻す。その間にも、足音は近づいている。
「あれ、確かに声がしたんだけど。」
「おい、あれって化け物じゃないか?」
「やだ、怖いわぁ……。ここには、居ないようだし早く行きましょうよ。」
たぶん、あいつに向けられた声。それを聞いて、俺の中に久しぶりに怒りがわいた。
「どうかしたのか?」
聞こえてるだろうに、怒りを感じない落ち着いた声で三人に声をかける。いや、もう怒ることさえ疲れて止めてしまったのかもな。
「おい、化け物。ここに、カルマ様が来てないか?嘘を言ったら、この学校の皆で虐めてやる。」
「さぁ、そもそもほとんど俺しか来ないからな。古文書なんて、誰も読もうとは思わないだろうし。」
涼しい感じで、さらっと嘘をつく。
でも、これは言葉のあやだ。あいつは、俺がいないなんて言ってない。あと、ほとんど俺しかと言う事は自分以外もここに来てると言ってるのだ。後ろの言葉は、前の言葉を隠す為のつけたした言葉。
こいつ、見た目のわりに頭がまわる!
「ふんっ、行こうぜ。」
三人は、書庫から出て行った。あいつが、小さくため息をつくのが聞こえた。ガタンと音がして、本棚がずれる。扉は、開きっぱなしだったのですぐに出てくる。あいつは、本を直すと2冊の本を抱えて書庫のドアに向かって歩き始める。
「あの扉は、いったい何だ?」
「緊急時の非常口だ。学校の外に、繋がっている。余り、使われないから忘れられてるけどな。」
「あのさ、ありがとう。」
「別に、君のためじゃない。」
素っ気なく言うと、教室にはいる。なんと、同じクラスだったんだ。俺は、少しだけ嬉しかった。こいつなら、下心な目で見てこないし。できれば、少しだけ恥ずかしいけど友達になりたかった。
でも、現実は甘くは無かった。
「おい、化け物!カルマ様に、変な魔法でもかけたのか。今すぐに、解け!」
あいつの、胸ぐらをつかみ殴る。それにのっかるように、男子達があいつに暴力を振るう。
そう、俺の大嫌いな暴力をだ……!
あいつは、いつものことなのか血が流れているのに何もしない。俺は、あいつの目を見る。
あれ?そんなに、痛がってない?
いや、そんなはずは無い。だって、あの人数であんなに……いや、あいつわざと攻撃を受けてやがる。
しだいに、飽きてきたのか息を切らして去っていく男子達。あいつは、すぐに立ち上がってパンパンと制服の汚れをはたくと浄化の魔法と回復の魔法を使い席に座る。
「おまえ、何で反撃しないんだよ!」
「ん?だって、素人の拳だからそんなに痛くないし。魔物の、攻撃の方が痛いからな。それに、強者が弱者に手を出したらいかんだろ。これでも、俺は冒険者だしな。」
冒険者?なるほど、それなら痛いのは少しは慣れているのか。そう言えば今、お世話になってるクランも冒険者達の集まりだったな。
「なぁ、職業は?」
「何で、そんな事を聞くんだ?」
鋭い目線に、思わず心臓を捕まれたような感覚がしてビクッとなる。落ち着け、別に悪い事をしようとしてる訳じゃない。さて、言ってみよう。
「えっと今、とあるクランにお世話になってて冒険者じゃないのにさ。だから、少しでも恩返しがしたくて冒険者になりたいと思ってるんだ。」
「それで?」
あいつの声に、少しだけ暖かさが混じる。俺は、少し驚いたけど話を続ける。
「俺さぁ、職業を何にすべきか迷ってて。そこらへん、詳しい人はいるけど聞きにくいし。はっきり言うと、困ってたんだ。」
「なるほど。俺的には、お前の職業は戦士かな。執事頭の事じゃ、無いからな。」
少し、笑みを浮かべて言う。俺は、思わず固まってしまう。こいつ、感情を見せたのは初めてじゃないか?同時に、凄く嬉しくて本当に久しぶりに笑ってしまった。
どうして皆は、こいつの事を化け物と呼ぶのか気になった。聞くべきだろうか?
「戦士か。良いな、それ。」
そして、少し間をあけて言う。
「あのさ、何で化け物って呼ばれてるんだ?」
「俺の、魔力量が異常なくらい膨大だからだ。」
素っ気なく言うと、笑顔を消して言う。それだけ?なら、別に化け物なんて……
「お前は、変わり者だな。」
「そうか?」
「俺の職業は、魔剣士だ。」
んっ?聞いたことの無い職業だな。
「魔法剣士じゃないのか?」
「魔法剣士は、剣と魔法で戦うだろ?魔剣士は、その上の職業だ。剣と魔法を使うのは、同じだが使う剣は普通の剣じゃなく魔剣だ。」
暢気に、言う。待て、ちょっと待て!確か、魔剣って国に許可を取らないと所持出来ないはず。
「お察しの通りだ。俺は、それだけの実力がある。もちろん、国に許可を貰っているしな。」
「うわぁ~、あいつら本当に幸運だな。」
「さて、俺はもう帰る。」
「あっ、あのさ……」
「ん?」
あいつは、キョトンとして振り向く。
「その、友達になってくれないか!」
俺は、勇気を出して言う。俺の顔、凄く赤くなってるんだろうな。あれ、反応が無い。
「ぷっ、クスクス……」
「おっ、お前!笑うなよ!」
「すっ、すまない。あははははっ。」
「人が、勇気を出して言ったのに!」
また、顔が赤くなるのがわかる。
「悪い、ツボに入った。」
「酷いな!」
「まぁ、良いんじゃないか?よろしく。」
あいつは、笑って言う。
「おう、よろしく。それにしても、俺はお前の名前を知らないんだけど。」
「リべルテ。俺の名前は、リべルテだ。よろしく、カルマ。じゃあ、依頼があるから帰るな。」
「おう、また明日。」
これが、リべルテと俺が友達になった瞬間だった。
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「カルマ、どうかしたのか?」
キョトンと、俺を見つめるリべルテ。
「いや、何でもない。」
「そうか?さて、学校に行くぞ。」
「了解。」
リべルテは、あれからも虐められていた。でも、あの町には中学がない。そこで、俺たちは他の人が行く所とは逆の中等部のある学園に入ったのだ。
「「リーダー、行ってきます。」」
リーダーに、挨拶をして外に出ていくのだった。
読んでいただきありがとうございました。
カルマは、脳筋ですが馬鹿ではありません。まぁ、勉強は出来ませんが感が鋭い所もあります。