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第一章 1561少女隊Forever - G.I. JOSHIKOSEI 1561 Forever.

前作はこちら http://ncode.syosetu.com/n4775dw/

   これは無謀にも巨大な悪へ立ち向かう、少女たちの物語。

      日出ずる処で生を受け、か弱き女子おとめがその身を賭して、

         悪を倒せと轟き叫ぶ。


    …………そんな、ちょっとだけ思い込みが偏った少女たちのお話なのです。



  第一章 1561少女隊Forever - G.I. JOSHIKOSEI 1561 Forever.


 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!

 河川敷、荒れ野に響く蹄鉄音。

 人類史上、近代の武器革命まで無敵を誇った機動部隊――騎馬。

 多くの地域で騎兵の集団運用が猛威を振るう中、終ぞ本邦では例も乏しく。

 騎馬隊と呼称されながら、あくまで歩兵の付随った混成部隊が主力を形成し、騎馬突撃は重要局面まで温存される虎の子であった――――と、何かの本で読んだような気がするんですが……

(まさか!?)

 今がその時ですか?

 戦局を左右する分水嶺。貴重な戦力資源を注ぎ込むに相応しい頃合いなのだと?

「朱い!」

 鮮やかな朱で染め抜かれた兜、旗、具足。認識性抜群の統一感が存分に脅威をアピールする。

 掲げられた旗指し物には『疾如風 徐如林 侵掠如火 不動如山』。

(――甲斐の虎!)

 周辺諸国を震え上がらせた、信玄配下の武田騎馬軍団!

 日本史に敢然とその名を轟かす最強騎兵が、私の眼前に!

「嘘ぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 結果だけを知っている私たちは、革新兵器火縄銃によって完膚なきまで散らされた、旧きものの象徴みたい刷り込まれてますが、

 ダダダダダダダダダダダダダダダダダ!

 怒涛の勢いで迫りくる馬と荒武者、総計数百キロもの高速移動体!

 それが群れを成して向かって来られた日には、仮普請の馬防柵など障子紙程度にしか思えません!

 暴風の如き存在を前にすれば、三方ヶ原の織田鉄砲隊も相当肝が冷えたんじゃないかと!

「……!」

 無数の蹄が地を掻けば、地響きと共に巻き上がる土煙!

 視界を茶に染める舞台は、視る者を異界へ誘う。それは浄土か地の底か。いずれにしても死という関を経ねば見えぬ地を。

(ヤバいヤバいヤヴァァーい! 馬を兵器に使っちゃいけません!)

 凶悪すぎる! よもや草食獣とは思えぬ威圧の嘶き!

 恐怖で足も竦み、腰が抜けちゃいます! そりゃ三河の殿だって脱糞待ったなしですよ!

「おりぁ! xxxxxxxxxx!」

 敵も味方も入り乱れ、大混乱に陥ったフロントライン。

「!!」

 阿鼻叫喚の最前線でも抜群に通る声! 彼女とならコミケだってカーバ神殿だって逸れません。

「悠弐子さぁん!」

 尻もちの体勢から猫まっしぐら! ……と行きたくとも、上手く立ち上がれない!

「重っ!」

 私、なに着てるんだ?

(――鎧!?)

 それも金銀のモールドに紅白の房飾りが盛られた……まるで五月飾りの武者人形みたいな奴! 野良着に申し訳程度のペラい防具を巻いただけの足軽とは決定的に違ってます!

(狙ってくれと言わんばかりの!)

 こんなの戦場で着てたら、雑兵に首を持ってかれます! 常識的に考えて!

(ヤバい! ヤバい! ヤバい! ヤバいヤバいヤバーーーーい!)

 生存本能のレッドアラートがビービー脳内で鳴り響く中、必死に身を屈めながら、アトランダムに交わされる槍を縫って走る!

 目立って仕方ない兜は既に放り捨てた。金ピカの豪華武具よりも命が大事です、常識的に考えて!

「どこですかぁ悠弐子さん……」

 敵国の領海でシュノーケルを伸ばす潜水艦みたいに、ソロソロと叢から頭を上げてみれば、

「……えっ?」

 キィン! キン!

 鎧甲冑の悠弐子さんが襲いかかってた! 一目で高級幹部と分かる豪奢な鎧武者へと。

 カキーン!

 カネカネが散らす戦場のライトニングボルト!

 キン! キン! カキィィィーン!

「ちょ、ちょっと待って? これどういうこと?」

 大将に侍る家臣たちも謎武者(悠弐子さん)の出現は青天の霹靂だったみたい。

 止めに入るどころか呆気に取られて立ち尽くしている。

(誰ですか悠弐子さんに刀を渡しちゃった人!)

 刀なんて持たせたら! 近寄るもの皆斬り捨てるアンコントローラブルバーサーカーになります!

 藤原拓海に86、朝倉アキオに悪魔のZ、彩波悠弐子に日本刀です!

 ああなったらもう、体内のガソリンが尽きるまで暴走は終わらないですよ!

「B子ちゃんは?」

 あれを止めるには、私では役不足。毒をもって毒を制す方式じゃないと、無理です!

「どこ? どこにいるんですかB子ちゃーん?」

 だけど濛々と立ち込める煙のせいで見当たりません!

「貴様らのような奴がいるから! いるから日本は!」

 右往左往する私など構わず、悠弐子さんは電光石火の剣戟で敵へ斬りつける!

(誰か! 誰か助けてぇぇ!)

 カキィィィィン!

 まさかこれも亡国結社【アヌスミラビリス】のせいなんですか?

 その武者が除かれるべき日本の病巣なんですか?

 ああもう分かんないよ! こんな戦場じゃ誰が誰だか!

「いざ御覚悟! 謙信入道!」

「えっ?」

 そ、その人が上杉謙信なんですか? あの有名な越後の龍、軍神上杉謙信その人ですか?

「御覚悟召されぇぃ!」

 でも確か謙信の死因は戦場での討ち死にではなく病死のはず!

 歴史を……歴史を変えちゃう気ですか?

「はやまらないで悠弐子さん!」

 上杉謙信は亡国結社【アヌスミラビリス】の手先だったとでもいうんですか?

 四百年も昔の人にまで悪の秘密結社の息が掛かってたんですか?

 いったい何なの【アヌスミラビリス】って? 時空を超えたアカシックレコードの管理者ですか?

(ああ、あのサングラスがあれば!)

 悠弐子さんが手に入れた真実を見通すレイバン『ゆにばぁさりぃグラス』があったなら!

 とか嘆いても時既に遅し。

 ここは戦場の真っ只中、誰も私を助けてくれなどしない。

 携帯で助けを呼ぼうにも圏外です。

 てかどこに中継局のアンテナが建っているのか? 通信手段は狼煙と早馬と伝令ですこの時代。

 己の身は己で守れなければ戦場の露と消える、ガチの修羅場ですから!

「お命頂戴、仕る!」

 パキッ!

 竹を割ったみたいな清冽破断音!

 防戦の太刀を捌いた悠弐子さんの刃が謙信の兜を撃ち、荒々しい炎を背負う金色仏像が真っ二つ!

 特徴的な前立もろとも、悠弐子さんの剣で兜が粉砕された。

「ダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメーっ!」

 それ以上は本当に駄目です!

 いくら女子高生無罪とは言っても限度があります! 人を殺めたら取り返しがつきません!

 それは許されない! 私が止めなくちゃ!

 この身に代えても止めないと終わる! いろんな意味で終わっちゃいます!

「悠弐子さん!」

 女の子の決意、竦んでいた脚も嘘みたいな瞬発で彼女へと縋りつく。

 渾身の女子高生タックルで鬼武者女子を確保! 霞城中央の水中花マーベリックフローズンをフリーズ!

「ええぃ離せ離せ桜里子! …………じゃなかった家斉!」

「は?」

 IENARIって徳川家斉さんですか?

 その人、まだ産まれてもいないんですけど? この時代。

「悠弐子さん、なに言ってんです? 斬りつけた人の名前も忘れたんですか?」

 上杉謙信ですよね? 謙信御覚悟って自分で言ってましたよね?

 彼、戦国時代真っ只中の人ですよね? 生存期間が重なってません。どんな夢想戦記ですか?

 ひゅぅぅぅぅぅ!

 吹き抜ける風が土煙を払えば、川向こうの陣には赤備えの軍、旗指し物は武田菱。

 センターを陣取る異形の兜、鬼を思わす二本角に白い獣毛の諏訪法性兜……軍配も持ってますし、あれ武田信玄公ですよね?

 どう見ても川中島です、江戸時代とか、あと半世紀は経たないと訪れませんよ?

「ひょう! ひょおおぉぅ!」

 その陣へ単騎特攻する白い騎馬武者! 浅瀬の飛沫を豪快に捲き上げながら疾駆する金の稲妻!

 鎧は和式の具足なのに靡く金髪がジャンヌダルクっぽいんですけど異常に。

「うははははははははははははは!」

 ノリノリです。ノリノリで信玄に太刀を浴びせまくってる。

「ああ……」

 あの子も長物の武器を与えてはいけないタイプだった……

「悠弐子さん一応訊いときますけど、あの子(B子ちゃん)は?」

「一橋治済」

 確かに背中の旗指し物は葵の御紋ですけどね……

 ええと、一橋治済って「私」のお父さんですよね? 文化文政期の人ですよね?

 あんなにも豪放磊落な勇姿を戦場で見せたことありましたっけ?

 旗本八万騎を率いて魯西亜や英吉利の異国船を打ち払った……とか? 大塩平八郎の乱を上方まで赴いて鎮圧したとか?

 聞いたことないです、そんな話。暴れん坊将軍とか魔界転生並のフィクションじゃないと。

「てことは?」

 もしかして私たち戦国BASARA的な時空に飛ばされちゃってます?

 時系列をスッ飛ばして無理矢理群雄割拠なカオシックワールド。ヒアカムズアニューチャレンジャーで好きな武将を選び放題的な?

「まだ抜けてないの?」

 抜けてないって何の話ですか? 悠弐子さん?

「貴官、氏名と所属部隊を応えられたし!」

「山田桜里子、所属は霞城中央高校一年A組、部活は贅理部ですが?」

 わざわざ応えなくなって知ってるじゃないですか?

「正気に戻ってるじゃない」

「正気?」

 聞き捨てならない不穏ワードですね?

 ええとつまり? 私は正気じゃなかった? 正常な感覚を失っていたってことですか?

「…………まさか!!!!」

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