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掌編小説集7 (301話~350話)

新しい文字

作者: 蹴沢缶九郎

「やあ、よく来てくれたね」


田中博士は、自身の研究所を訪れた学者仲間達を迎え入れ言った。


「そんな事より、僕らを呼び出した理由を教えてくれ…。まさか世間話をする為に呼んだわけでもないんだろう?」


学者仲間の一人に促された田中博士は、早速本題を切り出す。


「そうだな、前置きはなしにしよう。実は、長い研究の末、新たな文字を発明する事に成功したのだ」


「新たな文字だって!?」


「そうだ」


「一体、どんな文字を発明したというんだ」


身を乗り出し尋ねる仲間に、田中博士はホワイトボードに『あ゜』と一文字書いて見せた。


「…それは何と読むんだ?」


「いいかい? よく聞いてくれ…、『あ゜』だ」


それまで聞いた事のない全く新しい発音に、学者達は顔を見合わせ、感動に打ち震えた。


「素晴らしい…。『あ』だね」


「違う、それは『あ』だ。私が発明した文字の発音は『あ゜』だ」


「『ぱ』かい?」


「違う、『ぱ』じゃなくて『あ゜』だよ。丁度『あ』と『ぱ』の中間ほどの発音なので、慣れるまでは難しいだろうが…。コツとしては、口を開く瞬間に下唇を前に出す事だ」


「わかった。…ぅぅぅ『あ』!!」


「違う違う」


「……『ぱ』!!」


「全然ダメだ。いいか、もっと…」


度重なる田中博士のダメ出しに、自分の不甲斐なさを感じた一人の学者は、下唇を噛み締めて気持ちを吐露した。


「『く゜』やしい…」

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― 新着の感想 ―
[一言] 実際やってみました^^;「ばぁ」としか。難しいです。 日本語は母音が少ないですね。英語の時間、「イロっぽい」と「エロっぽい」の中間の音といわれ、練習した事を思い出しました。
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