親父は神様なのか~妹編~
思いつきで初めて三作目になりました。
この先も続けていきたいと思います。
よかったらお気軽にお立ち寄りください。
下校途中の三人の男子生徒の中に神原透(17)の姿があった。
この年頃男の子の話題は、やはり女の子だ。
「やっぱA組の真田はかわいいよ。」
「いや、二年の黒木だろ。あいつ超大人っぽいし」
「透は、どうだ?誰かイチオシの子、いないのか」
透は、少し考えてから、
「うーん、俺は小西先生かな。」
「熟女好きかよ!」
こんな調子で三人は会話を楽しんでいた。
すると突然、高村がこんなことを言い出した。
「でも、俺が出会った女の子で一番は、やっぱり愛莉ちゃんだな。」
下林が、すぐに反応し、
「透の妹のか?」と、興奮気味に言った。
「そうだ。あの子は半端じゃないよ。あれでまだ中学生だぜ」
透は、迷惑そうな顔をして何も答えない。
「確か透の妹ってロシア人とのハーフだったよな。」
「そうそう母ちゃんも綺麗なんだ。」
「なるほど腹違いの妹なのか。」
「でもよく透の親父と再婚したんだろーな?」
「あー、あの親父さんか。あれだろ……なんだっけ」
「自称神様だろ」
「それそれ!なんだよ神様って」
「ハハハ!」
これまで高村と下林の二人が言いたい放題だったが、遂に透は口を開いた。
「お前らな他人の家の事に口出しするな!まあ親父に関しては否定しないが、愛莉の事は別だ。」
透は、一つ咳払いして続けた。
「確かに。あいつは見た目可愛いと思う。たげどなあいつの中身は酷いぞ。そう、まるで悪魔――」
「こんにちは。」
細く高い声が透の話しを遮るように入ってきた。
「げっ!愛莉」
「お兄ちゃん、何の話ししてたの?」
「い、いや別に何でもないよ」
愛莉は透と一緒に居た男の子に目がいった。
「あっ、高村さん。お久し振りです。」
「愛莉ちゃん久しぶり。覚えていてくらたんだ。嬉しい!」
「はい。勿論ですよ。えっとそちらは?」
愛莉は少しグレーかかった大きな瞳で下林を見つめた。
「……」
「おーい!お前だよ下林君」
下林は愛莉の華奢で妖精の様な白い肌に目が釘付けになっていた。
「あ、あの下林貴文です。宜しくお願いします。」
下林は声を裏返しながら早口で自己紹介した。
「こちらこそ宜しくお願いします。下林さん。」
下林は顔を赤らめたながら言った。
「高村さん。下林さん。申し訳ないのですが、お兄ちゃんお借りしてもいいですか?」
「おい、愛莉、なに勝手に――」
「どうぞどうぞ」
「どうぞどうぞ」
二人は両手を差し出しシンクロした。
「やった。お兄ちゃん久しぶりに一緒に帰ろう。」
愛莉は、すかさず透の腕に絡みついた。
「わ、分かったよ。じゃあ二人共、悪いな。また明日。」
透と愛莉は、まるで恋人同士のように帰っていった。
「いいなあ、透のやつ。」
「確かに。でも妹だぞ。」
「いいよ。妹でも、羨ましい。」
「そうだな……俺達も帰ろうか。」
高村と下林は、少し肩を落としながら家路についた。
「おい、愛莉。そろそろ腕から離れてくれないか。」
愛莉は何も言わずに、透の腕からスッと離れた。
「ふーっ。疲れた。おい、透。てめえ私の事を悪魔とか言ってなかったか?」
「そ、そんなこと言うわけないだろ。」
透は、首をブンブンと振りながら慌てて否定した。
「まあいいわ。それより、一輝は家に居るの?」
「さあ、どうだろうな。今朝は居たけどな。」
「ちっ!私は一輝と、ここ一週間会ってないぞ。」
「そうなのか?親父は避けてるのかも―――」
ふと愛莉の鋭い視線を感じた透は、話しを途中で止めた。
二人は帰宅したが一輝の姿は案の定、そこにはなかった。
「やっぱり親父いないな。」
「あの野郎。絶対見つけてやる。」
「探すっていってもどこか心当たりでもあるのか、愛莉。」
「透、静かにしろ!」
愛莉は目を瞑り集中している様子だ。
数十秒後、愛莉は急に目を開き、家の外へ飛び出す。
「おい、愛莉。どこ行くんだよ」
「絶対に逃がさないからね。一輝。」
夕暮れ時の真っ赤な中を愛莉と透は走った。
しばらく走ると、愛莉は何かを感じとった様子。
「こっちか!」
「おい、待てよ愛莉。――ハアハア」
体力の限界に近い透の目に、ある人物が映った。
その男は、透に気が付いた様子で、にこやかに近寄ってくる。
「おーい、透。透ちゃーん。」
「お、親父!」
その声に反応した、愛莉が凄い勢いで戻ってきた。
「こら!一輝!」
「わっ!愛莉。だ、騙したな透。」
「いや、俺は何もやってないだろ。」
大至急、逃げる体制をとる一輝。
「逃げられると思うなよ、一輝。」
「いや、逃げてみせる。俺は神だからな。」
しかし愛莉も逃がすつもりは絶対にない。
両手の掌を合わせ何か呟いた。
すると愛莉の掌の間にスパークする青白い玉のような物が現れた。
「おい、愛莉。なんだそれ、どうする気だ。」
しかし透の声は届かない。
逃げる一輝は後ろを振り返り驚いた。
「ギャー!分かった、愛莉。逃げないから、そんな物騒なのはしまいなさい。」
「もう、遅い。」
次の瞬間、愛莉の手から青白い玉が凄くスピードで放たれた。
その閃光は一瞬で一輝を見事に捉えた。
「のぉぉぉ!」
「お、おい親父大丈夫か?」
「もう、駄目だ……」
「死にはしない。手加減したんだから。」
「てめえ愛莉。お父さんを殺すつもりか!」
「殺さないよ。でもママを泣かせたら殺すからね。」
「うっ……はい。」
辺りは薄暗くなっていく。
カラスが鳴きながら山の方向へ飛び去っていく。
「でもなんで愛莉は親父を追いかけてたんだ?」
透は愛莉の謎の行動が気になった。
「いや……たまには……家族皆で晩御飯食べたいな、なんて――」
「ふっ。そうだな。いいよな親父。」
「お、おう。」
「ってかなんでニヤニヤしてんのよ、透。キモい!」
「お前、兄に向かってキモイとか言うな!ヘコむだろ」
「よし。息子よ、娘よ。カラスが鳴くから帰ろう。」
「……」
「……」
ほとんど沈んでしまった太陽から一筋の光が神原家の三人を照らした。
空では一番星が、もう輝いている。
そんな空を三人は同時に見上げたのであった。
「カァカァー」
「カラスが鳴くから帰ろう♪」
(完)
拙い文章をお読み頂きありがとうございました。
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