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恋バナ、修学旅行、戦争 その①

 すがすがしい朝を迎え、僕は大きく背伸びをした。

 まだはっきりと視界が定まらず、ぼんやりとあたりを見回す。

「七時ジャスト……よし」

 時計が朝の七時を指していることを確認して、僕はベッドから起き上がった。手短にパジャマからスーツへと着替え、朝食の準備に取り掛かる。

 隣の部屋で寝ているのであろうセレスさんは放っておいて、僕は二階にあるキッチンへと向かった。廊下の途中で浮かびながら爆睡しているユリを尻目に、僕はため息を一つ。

「はあ……器用なやつだな」

 冷蔵庫の中身を確認するも、材料がまったくと言っていいほどない。お金に困っているのではなく、たんに買い物が面倒なだけだ。

 こういう時だけ、幽霊のユリやセレスさんを羨ましく思う。だって、何も食べなくても生きていけるのだから。いや、生きていけると言うのには語弊があるか。

 何も食べなくても存在し続けられるのだから、とでも言っておこう。

「仕方ない。朝飯は抜きだ」

 今からコンビニに行く気にはなれない。めんどくさいもん。歩いて十分はかかるし、それなら食べないほうがまし。

 毎朝欠かさず飲むコーヒーでも淹れて、空腹をごまかそう。

 と、引き出しからコーヒーの容器を取り出そうとしたが……どうやらこれも空みたいだ。

「ああ……なんてこった……!」

 僕は頭を抱えてその場にしゃがみ込む。もはや毎朝の習慣ともなっていた、コーヒーを飲むということができない僕は、一気にやる気を失ってしまった。

 この後に仕事がなければ、勢いで寝込んでしまってもいいのだが、そういうわけにはいかない。昨日ボスから、無慈悲にも仕事の依頼があったのだ。

 なんでも、とあるマンションの一室で女子高生が自殺したとか何とかで、その部屋が事故物件になっているんだそうだ。早急に対処するようにと、ボスからは言われてしまっている。

 ボスのいう早急にってのはつまり、一日以内に終わらせろという意味なので、もし仕事を次の日に持ち込もうものなら、どうなることやら。

「……缶コーヒーで我慢するか」

 このままへこたれていてもしょうがない。僕はさっさと身支度を整えて、朝早くから、それこそサラリーマンが出勤するのと変わらない時間から仕事に取り掛かるのであった。


 地元の駅から電車で二つほど駅を通り過ぎたところに、件の事故物件はあった。想像していたよりもずっと大きなマンションで、というより高級マンションで、生まれてこの方ずっと庶民として生きてきた僕では、少々入り辛い雰囲気を醸し出している。

 まずは入口。指紋認証システムとかいう最新の防犯技術によって守られていて、決して不審者の侵入を許さない。

 加えて三十三階建ての高層マンションときたものだ。

 もう自分の家と比べるまでもないけれど、嫌になるね、本当に。

 自分は貧乏なんじゃないかと思えてくるほどに、この建物は立派である。僕はさきほど買った缶コーヒーを飲みほして、近くにあったゴミ箱へと放り投げた。

「はあ……どうするよ、これ」

 マンションの入り口でソワソワとしているせいか、さっきから僕に、まるで不審者でも見るかのような視線が浴びせられまくっていた。

「あの? ちょっとよろしいですか?」

「ひゃ、ひゃい!」

 不意に後ろから話しかけられたので、僕は思わず変な声を上げてしまった。

 くるりと方向転換してみれば、そこには警備員のような恰好をした男が訝しげな顔して突っ立っている。

「なにか……?」

「いえ、不審者がいるとの通報を住民から受けて、このようにやって来たんですが、どうやらあなたがその不審者で間違いないようですね」

「いやいやいや! 違います! 僕は断じて不審者ではありません!」

「不審者は皆そうやって言うんです。それじゃあ、あなたは一体ここで何をしていたんですか?」

 何をしていたと聞かれても。僕はただ、入り口の前できょろきょろしていただけだ。ってそうじゃなくて、僕はここに仕事で来たんだろ。そのことをハッキリと伝えればそれですべてが済む話じゃないか。

「あ、えーっと。ちょっと仕事でここまで来たんですよ。ほら、これ名刺です」

 懐から名刺を取り出して、警備員にそれを手渡した。しばらく名刺を眺めていたが、何やら納得してくれたようで、警備員はすぐに笑顔で険しい表情を呑みこんで言った。

「ああ、どうもすいません。あなたのことはお聞きしてます。それじゃあ、どうぞお通り下さい」

「どうも」

 ふん、だから言っただろうが。僕は不審者じゃないって。

 まったく、少しでも変な人を見つけたら即通報する人の心境には共感できない。確かに最近の日本は物騒ではあるから、他人を疑いの目で見てしまう気持ちも分からなくはないが、せめて見た目で判断して欲しいものだ。

 僕みたいに、もう見るからに優しそうで慈悲深い人間の、どこに不審者要素があるというのか。いや、そんなものはありません。

 警備員の後ろにぴったりと張り付いて、僕はしばらくついていく。

 エレベーターを待っている時に、警備員はこう言ってきた。

「あそこの御嬢さん、とてもいい子だったんですけどね。毎朝学校へ行くときは挨拶をしてくれるし、帰りにもちゃんとただいまって言ってくれてたんですよ」

「そうですか」

「今でも信じられません、あの子が自殺したなんて。だって、死ぬ直前まで、とても元気そうにしていましたから」

「……」

 人は見た目じゃ判断できない、か。まさかあの人が人を殺すなんて、これはよくテレビで耳にする言葉だ。

 そしてまた、パッと見では元気そうにしている人でも、その心の奥には誰にも言えない悩みだったり苦労だったりを抱えているものだ。

 きっと自殺してしまったその女子高生の心にも、怪物が住み着いていたのだろう。

 そう……人を惑わせる怪物。

 怪物と闘う者は、その際自分が怪物となってしまはないよう気を付けなければならない。

 長い間、深淵を覗きこんでいると、深淵もまたその人を覗きこむものだ。

 だから僕は、自殺してしまった人が完全に悪いのだとは思っていない。確かに、残された友人や家族からしてみれば悲しいことだし、その人たちには辛い思いを強いられてしまう。

 けれど、死んでいったその人はもっと辛かったはずだ。悩み、嘆き、そして苦しみ、挙句の果てには死を選んだ。言ってしまえば、負けたのだ。心の闇という名の怪物に。その闇はどこまでも深く、終わりなど無い。

「三十三階の3302号室が、例のお部屋ですよ」

 しばらく黙っていると、ようやくエレベーターが一階に到着した。

「ええ、分かってます」

 やたらと豪勢なエレベーターに乗り込み、再びの沈黙が僕らを包み込む。

 警備員は背筋をしゃんとして、ボタンを押すところで立っている。なかなかその姿はカッコいいもので、何というか、デキル男は背中で語る、とはよく言ったものだと思わされる。

 さて、いよいよ本日の仕事の始まりだ。僕は警備員を横目にしてエレベーターから降りると、一言だけ送られた。

「どうか、お気を付けて」

「え、ええ……どうも」

 何をどう気を付けるのかと、釈然としない僕であったが、エレベーターが下へと降りていくのを確認すると、早速目的の部屋へと歩みを進める。

「ここか」

 目当ての部屋を見つけて、扉に手をかける。施錠はされていないようで、苦労することなく簡単に扉は開いた。

「……」

 中に入ってみると、当然ではあるが家具は全て取り払われていて、実に広々とした空間が広がっている。靴を脱いでさらに奥へと進んでいくと、一人の少女が床に座り込んで泣いていた。

「大丈夫?」

「………あなた……誰?」

 少女はゆっくりと顔を上げて、こちらに視線を送る。怖がらせないように、できる限りの笑顔で話をしてみることに。

「初めまして、僕はアキラです。君の名前は?」

 僕の瞳をじっと見つめ、悪意がないかを確かめている様子。

「大丈夫だよ。僕は君のことを助けに来たんだ。だからほら、名前を教えて?」

 きょろきょろ辺りを見回してから、驚いたような顔をする。

「あなた……私のことが見えるの?」

「まあね、僕はちょっと変わった人間でさ。幽霊と話すことができるんだ」

「へえ……なんだか素敵……」

「素敵……? そうかな? 初めて言われたよそんなこと」

 涙で腫れた顔を少しだけ動かして。

「私の名前は立花朱莉たちばなあかり。朱莉って呼んで」

「分かった。じゃあ、よろしく朱莉」

 さっきの警備員が言っていた通り、とても自殺するような子には見えない。穏やかで、それでもって純粋な感じだ。

 一体何が彼女を自殺へと駆り立てたのか、今回ばかりは難しいような気がした。

「朱莉、一つ聞いてもいいかな?」

「いいよ」

 一切迷うことなく返事をした朱莉を見て、僕は違和感を覚える。さっきまで泣いていたはずの朱莉の表情は一変し、今度はとても楽しそうな顔をしている。

「どうして、自殺をしたの?」

「聞きたい?」

「う、うん。そりゃまあ……」

 だいたい「どうしてあんたは自殺なんかしたのか」と聞けば、聞かれたやつは怒り狂って、お前に自分の気持ちが分かるはずがないとか言ってくるもんなんだが……朱莉は違う。

 理由を聞いて欲しかったのか、瞳に明りを灯している。

 朱莉は突然立ち上がると、僕のそばまでやってきて言った。

「自分の人生に、息苦しさを感じてたからだよ」

「息苦しさ? 例えばどんな?」

「両親からの束縛、かな」

 ある程度予測はしていたけど、やっぱりそうきたか。子供が自殺をする理由を大きく占めるのが、イジメや両親への不満だ。

 難しい問題ではあるけれど、これは深刻な事態でもある。子供ってのは単純なもので、何か嫌なことがあったらすぐに死んでしまう、というわけではない。

 これは子供に限らず大人にも言えることだが、たいていの場合、自殺者本人たちはかなりの苦しみを我慢して、それでもやはり耐えかねてしまい、死んでしまう。

 だから朱莉も、こんなにも小さな身体にストレスを溜めこんで、ずっと我慢し続けていたのだろう。慣れないな。やっぱり僕には荷が重い。

 誰かを成仏させるということは、誰かの悲しみを代わりに背負ってあげるということなのだから。かれこれ二年近くこの仕事をしているが、自殺者を成仏させるのは一番精神的にきつい。

 気づけば僕は、そっと朱莉から視線を外していた。

「それで、朱莉はさ。両親のどういうところが不満だったの?」

「うーんと……友達関係を制限されたり、部活に入部させてくれなかったり、漫画を買ってもらえなかったり、たくさんありすぎて言い切れないや、えへへ……」

 笑顔とは受け取れない歪んだ顔をしてみせる。

 そいつはさぞ窮屈だっただろう。

 制服を着ていること、それからこの顔つきからして、多分女子高生なんだろうけど、青春真っ盛りの時期にそんなに厳しく制限されちゃあきつい。

 まあ、青春もくそもなかった僕が、そんなことを言うのはどうかと思うけど、それにしたって可哀想だ。

「そうか……それは辛かっただろうに……」

 顔色を暗くさせた僕とは正反対に、朱莉の表情は明るくなっていく。

「うん。生きてても楽しくなかったし、辛かったのは間違いないよ」

「じゃあ、君が死んでもなお、心残りなことって……?」

「心残りかあ……なんだろう」

「君は普通の女子高生が体験するような、ごくごくありきたりな青春時代を過ごせなかったことが、心残りなんじゃないかな?」

 顎に手を添え、考えていた朱莉は、「あ、それなら!」と声を上げた。

 両手をパンと叩いて一呼吸おくと、どういうつもりか朱莉は腕を絡めてきた。幽霊相手にドギマギしている自分を悟られないよう、僕は必死に冷静を装う。

「な、なんだ?」

「私の彼氏になってください、アキラさん!」

「彼氏!? いやいや、いきなりそんな――」

 僕の身体に胸を強く押し当ててくるので、思わず発言を中断してしまった。

 確実にユリよりも大きいその胸に、僕の心臓は大きく跳ね上がる。

 決して胸フェチではないが、大きな胸と小さな胸のどちらが好きかと聞かれれば、僕は迷わず大きい方と答えるだろう。

 だがしかし朱莉の胸は、下品な大きさではなくて、むしろ上品かつ程よい胸のサイズであるため、それがいっそう男心をくすぐった。

 貧乳はステータス? ふん、そんなものは負け惜しみに過ぎない。

 これを見てみろ! この朱莉のお胸様を! どうだ、ぐうの音も出まい。

「アキラさん? なんか、顔赤いよ?」

「すまん。ちょっと興奮しちゃって」

「興奮?」

「ん? ってああ! そうじゃなくて、僕と朱莉はたった今、知り会ったばかりだろ? だから、お互いのことも良く知らないし、いきなり付き合うとかってのはちょっと……な……」

 危うく僕の理想の胸について、朱莉に熱弁してしまうところだった。

 さて、朱莉は僕の言うことに納得してくれたのだろうか、何やら真面目な顔して考え事をしているようだ。しばらく様子を黙って見ていると、朱莉は再び笑顔に戻して言った。

「それなら、私に教えてくださいな、アキラさんのこと」

「僕のこと? そんなものを聞いてどうするんだ」

「だって言ったでしょう? お互いのこともよく知らないのに、って。それなら、お互いのことを知れば、アキラさんは私とお付き合いしてくれるんでしょう?」

「……」

 良く言えば積極的、悪く言えば強引。そんなところか、この子の性格は。

 しかし困ったな。もし本当に朱莉の怨念が、男性と付き合いたいってことなら、ここは僕がひと肌ぬいで、疑似恋愛なるものを実行しなければならない。

 いやね、何が困ったのかと言うとだな、僕は今まで女性と付き合ったこともなければ、まともに会話をしたこともないんだよ。

 確かにユリやセレスさんとはよく話をしている。

 けれど、あれは女性ではなくて幽霊だ。死んでいる幽霊なんかを女としてカウントするのには、いささか違和感がある。

 そうだな、とりあえずは朱莉と会話をしてみて、色々と探りをいれてみようじゃないか。

「いちおう聞いておくけど、彼氏とかっていたことある?」

「ないよ」

「じゃあ、好きな人は?」

「うーん、いなかったかな」

 そうなるとやはり、恋愛経験ゼロなまま死んでしまったが故に、それが心残りになってこの世に留まってしまったと考えるのが妥当? いやいや、まだ早い。

 もう少し話を聞いてみてから判断だ。

「友達は多い方だった?」

「うん、けっこう多かったかな。こう見えてもね、クラスの人気者だったんだから!」

 そいつはすごい。僕とは正反対に位置する人間だ。クラスで孤立して、ひたすら本を読んでいるフリをしたあの頃が懐かしい。

 昼飯なんかは正しく地獄で、本を読みながら(読んでるフリ)、器用に飯を食べるわけにはいかず、結局何も口にしなかったのは良い思い出だ。

 朝食べて、昼は抜いて、夜食べる。

 うん、どうにも昔のことを思い出していたら胃がキリキリしてきた。

「そうか……でも、そんなに人気者なんだったら、家族とは上手くいかなくても、友達がたくさんいたんだろ? それなら自殺なんかしなくても、良かったんじゃないか?」

「ううん。たとえ友達に恵まれても、家族とギクシャクしていたら、それだけで毎日が灰色なんだよ。学校は楽しい。けど家は嫌い。毎日毎日、私はこう思った――」

 後ろで腕を組み、俯きながら朱莉は言った。

「家族さえいなければ……私の人生はどんなに素晴らしいものだったろう、って」

 親は子を選ぶことはできないが、その逆もまたしかりで、子も親を選ぶことはできない。

 こんなことを言うべきではないのかもしれないけれど、親子は互いに妥協点を見つけて、共存していかなければならないのだと思う。やはり、いくら家族とはいえ、いくら血が繋がっているとはいえ、結局一人の人間に過ぎない。嫌なところもあれば、受け入れがたいこともある。

 それでも、家族である以上ある程度の距離感を保たなければならない。

 そして、それがある種の縛りとなって、朱莉の心を酷く締め付けてしまったのだろう。

 僕は、この少女になんと声をかけてあげるべきなのか。

 分からない。

 僕にはどうすればいいのか分からない。

「朱莉……」

 頭を悩ませた末に僕の口から飛び出した言葉は、朱莉の名前だった。

 励ますべきなのかもしれない。元気づけるべきなのかもしれない。しかし、もう朱莉は死んでしまったのだ。自殺という形で、自らの死を選んだ。そんな朱莉に向けて、僕は何を伝えてあげればいい? もう夢も希望も未来もないこの子に、どんな言葉を届ければいい?

「アキラさん……?」

 不思議そうな顔をして、僕の瞳を覗き込んできた。

 朱莉の綺麗な瞳を見つめ返すことなど出来ず、僕は曖昧な笑顔で誤魔化す。

「朱莉……ごめんな。僕はどうしていいか分からない……」

「アキラさん。どうしてあなたが謝るの? あなたは何も、悪いことをしてない。悪いのは私。だって、自分でこの命を捨ててしまったんだから」

「でも……僕は君に何もしてあげられない。死んでしまった君に……もう何も……」

 朱莉は僕の手を掴み、ニコリと眩い輝きを放った笑みを見せる。

「そんなことない。アキラさんは、今こうして、私を助けに来てくれたじゃない。誰もいない部屋で、一人泣いていた私を助けにきてくれた……だからそんなに悲しい顔をしないで? ほら、そんな情けない顔してたら、皆に笑われちゃうよ?」

 朱莉の手は冷たい。もう死んでしまったのだから、温かいはずがない。けど、僕には分かる。人一倍優しい朱莉の温もりが、指先を通して僕に伝わってくる。

 ここでようやく、僕は朱莉と目を合わせた。二人して見つめあって、時間がゆっくりと進んでいく。

「朱莉……」

「アキラさん……」

 この瞬間ぐらいは、幽霊としてではなく、一人の女性として見てもいいんじゃないだろうか。

 少しでも目を離せば消えてしまいそうで、そんな儚げな朱莉を静かに抱き寄せ――

「ちょっとアキラ……? 何してるの……?」

 突然の声に驚き、慌てて朱莉から距離を取る。きょろきょろと辺りを見回すも、どこにも声の主は発見できない。しかしこの声、どこかで聞いたことがあるような……。

「どこ見てんの? ここよ、ここ」

 ふわっと上から降りてきて、ようやくその姿を確認。

「ユリ!? 一体どうやってここまで……?」

「まったく。少し目を離せばすぐに鼻の下を伸ばして……困ったものね、あなたは」

 もう一人の女性が、すう、と玄関の扉をすり抜けてやってくる。

「セレスさんまで……何しに来た……?」

 ジト目で二人を交互に見る。セレスさんは大きくため息をついて言った。

「ユリがね、うるさかったのよ。何だか嫌な予感がするから、アキラのとこ ろに行ってみようって。それにしても、予感的中だったみたいだわ」

 ユリは頬を膨らませて、子供のように拗ねている。

「ほんと。アキラって女ったらし? いや、この場合は幽霊たらしって言ったほうがいいか」

「そんな言葉はない」

 ユリは一瞬何かを考えたが、すぐに怖い顔して言い返す。

「と・に・か・く! 状況説明お願い。場合によっては……」

 場合によっては……? ユリは不敵な笑みを浮かべて。

「今日一日、ずっとお説教だからね。覚悟しておくように」

 無茶苦茶だ。僕は仕事でここまで来て、仕事の関係上、たまたま朱莉と抱き合いそうになっただけだ。だいたい、朱莉を抱きしめてもいなければ、それ以上のことなんか微塵もしていないじゃないか。

 ただ二人で見つめ合っていただけで、それを咎められると言うのなら、僕は声を大にして言いたいね。

 それじゃあこの世の人間は、皆けしからんやつらばっかりじゃないか、と。

 見つめるのもだめ、抱きしめるのもだめ、それなら一体、何をしろというのだ。僕はいつになく真剣な面持ちで、ユリに言った。

「どうもすいませんでした、僕が悪かったです」

 だって、怖いんだもん、怒ったユリは。

 僕の発言に満足したのか、ユリは「よろしい」とだけ言った。

「それでアキラ、この子を早く紹介してちょうだい。困っているじゃない、放置されてしまって」

 退屈そうにあくびをしながら、セレスさんはちらりと朱莉に視線を送る。

「ああ、悪い。えっと、この子は朱莉。見れば分かるとは思うけど、女子高生だ」

 朱莉は慣れたように、深々とお辞儀をした。

「初めまして、朱莉です」

 気後れしてしまったのか、二人はしばらく朱莉の綺麗なお辞儀に見惚れていた。

「おい、お前らも自己紹介」

「わ、分かっているわ」

 セレスさんは何故か偉そうな態度で自己紹介を始める。

「私はセレス、外人よ。そうね、私のペットをたぶらかしてくれたみたいだけど、はっきり言っておくわ。あなたではアキラの飼い主は務まらない。以上よ」

「『以上よ』じゃねえよ! いつから僕はお前のペットに成り下がった!? さっさと今の発言を訂正しろ!」

 きょとんとしてからすぐに、セレスさんは納得したように言った。

「ああ、それは失礼したわ。アキラは私のペットではなく単なる奴隷。私としたことが、ついうっかり。悪かったわね」

「結局僕は、人間以下の扱いなのね……。はい、もう分かったから。次……」

 もう僕のヒットポイントはゼロだったが、ここでぶっ倒れてしまったら、仕事に支障をきたす。だからここは、どうにか耐えることに。

「初めまして、あたしの名前はユリだよ。パッと見だと、あたしと朱莉は年齢が近そうだね? よろしく」

「はい! こちらこそ、よろしくお願いします」

「いいよいいよ、そんな敬語使わなくて。もっと気楽にいこう、ね?」

「そう? それなら、そうさせてもらう」

 ほう、早くも意気投合したのか、随分と楽しそうにお喋りをしている。やはり歳が近いからか、親しくなるのも早い。それに比べて――

「セレスさん、あんたも早く、あの輪の中に入ってくれば?」

「それは無理ね。だって私は、ああいうのが苦手なのだから」

 ユリの年齢は十七歳、そして朱莉の年齢もその辺だろう。

 そして、セレスさんの年齢はと言えば、確か二十四とかだった気がする。まあ、無理もない。歳の差が七つもあれば、若い子と打ち解けられないのも頷ける。

「セレスさん……あんたも色々と大変だな」

 首を傾けて、セレスさんは不思議そうな顔をした。

「何を言っているのかさっぱり分からないけど、とりあえず、ありがとう、とだけ言っておくわ」

「うん」

 さて、どうしたもんかね。

 ぞろぞろと数は集まったものの、いまだに朱莉を成仏させられるような方法がピンとこない。

「なあ、朱莉」

 ユリとの会話を遮って、僕は朱莉に呼び掛けた。

「とりあえず、僕と室内デートしてみるか?」

「「え!?」」

 セレスさんとユリは、ほぼ同時ぐらいに驚きの声を漏らした。

「本当!? わあ……楽しみだなぁ……」

 ぴょんぴょんと跳ねて、嬉しさを身体一杯で表現する朱莉。そんな朱莉を見ていると、なんだか僕まで嬉しくなってしまう。

「そんなに嬉しい?」

「もちろん! だって、今までそういう経験は一度もなかったんだから」

 そうかそうか。それじゃあ朱莉の初めてのデート相手は、この僕ということだな。

 光栄なことだ。僕としても、女性とのデートは初めてだから、これを機に是非とも男としての格を上げてみせよう。

 あ、待てよ。でも幽霊は女としてカウントしない、っていう僕なりの考えがあるわけで、だとしたらやはり、これをデートだと言ってしまうのはいかなものだろう。

「……」

 それなら、これはデートではない。単なる除霊作業だ。こう考えれば、何も緊張することなどないではないか。

 もし、朱莉の怨念がこれではないとしても、その時はその時だ。また別の方法を考えればいい。とにかく今は、やってみよう。

「それじゃあ、始めるか」

「お手柔らかに、お願いしますね?」

「あ、ああ」

 そっと朱莉の手をとって、僕の手を重ね合わせる。

「……」

「……」

 うん、どうしよう。手をつないだまではいいが、その後にどうすればいいのか分からない。頭に疑問符を浮かべ、朱莉は僕を見た。そして僕は、そんな朱莉の目を見つめ返す。

「アキラさん?」

「さ、さて! これで準備万端だ! そろそろ始めようか、デートを」

「はい!」

 とりあえず手を握ったまま室内を歩き回る。ぐるりと一周して、もとの位置へと戻って来た。

「アキラ……、あなたそれじゃあ、犬の散歩と変わらないじゃない。今あなたは、デートをしているのよ、デートを」

 ぴしゃりとセレスさんからツッコミが飛ぶ。

「ば、バカ野郎! 朱莉を犬扱いするな!」

「犬扱いしているのはあなたのほうでしょう? ユリからも何か言ってあげなさい」

 ユリは口をへの字にして言った。

「あのさ……もう色々と言いたいことはあるけど、一言だけ。女心ナメてるの?」

「はあ!? 僕は一生懸命、朱莉をエスコートしたじゃないか! 僕の紳士たるこの行動、どこに問題があるって言うんだ!?」

「問題しかないわね」と、セレスさんが。続けて「はあ……」とユリのため息。

 おかしい。昔読んだ恋愛小説では、とりあえず手をつないで歩けばそれだけで嬉しい、とかヒロインの女の子が言っていたんだが。

 くそ、あいつ僕を騙したな。もう二度と、あの作者の小説は読まない。

「アキラさん、私は十分に楽しんでるよ? 男の人と手をつないで歩くなんて、夢にまで見たシチュエーションだもん」

 前言撤回。これからもあの作者さんの小説は読むことにしよう。

「ほら? 聞いたか、今の。朱莉は楽しいと言ってるじゃないか。それなのにお前たちときたら……ふん、まったく恋愛というものが分かっていないな」

 セレスさんとユリは顔を見合わせ、渋い顔をした。

「もう分かったから……続けてちょうだい」

 右手をフラフラとさせて、セレスさんは投げやりにそう言った。

「まあ見ていろ。恋愛とはいかなるものかを、この僕が教えてやろう」

 鼻高々に言って、僕は朱莉に視線を戻す。

「朱莉、次は何をしたい?」

「膝枕、したいかな……」

 な、なんだと!? 僕にもし彼女ができたらやって欲しいことのベストスリーに入る、膝枕。それはもう愛する主人の膝に飛び乗る猫のように、僕は喜んでその提案を受け入れた。

「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁ! 異議あり!」

 人差し指を突き出して、ユリがいきなり大声を出す。

「いきなり大声出してどうしたんだよ?」

「どうしたも何も、それはダメでしょ!?」

「だめって何が?」

「だ、だって! アキラと朱莉ちゃんはカップルじゃないでしょ? そうじゃないのに、その、膝枕とかやるのは……あたしはダメだと思う!」

確かに僕と朱莉は付き合っているわけではない。けど、これはあくまで除霊作業であって、デートではない。言うなれば、デートごっこだ。

「はいはい、お前の言いたいことは分かったから、とりあえずそこで大人しくしてろ」

 嬉々とした表情を浮かべるセレスさん。

「ふふ……これは面白いことになりそうね。朱莉とユリの、アキラ争奪戦。どちらが勝者になることやら」

「そこ、うるさい」

 おお怖い。どうしてユリがそこまで怒っているのかは理解できないが、まあ女なんてのはみんな気まぐれな生き物だ。

 そんなふうに呑気なことを考えていると、朱莉がユリにこう言い放ったのだ。

「ユリちゃん、もしかして……嫉妬してる?」

「してない! してないもん!」

 ほうほう、ユリの今の喋り方は、なかなかに可愛い。破壊力抜群だ。朱莉の発言に加勢するように、セレスさんも続けてユリをおちょくった。

「あら? もしそうではないのだとしたら、どうしてそこまでムキになるの? それはもう、アキラのことが好きで好きでしょうがない、と言っているようなものよ」

 へえ、ユリって僕のことが好きなのか。

「そ、そうは言ってないでしょ!? ただ……その……膝枕なんて破廉恥なこと、純粋な朱莉ちゃんにさせるわけにはいかないでしょ!?」

 なんだ、僕のことが好きとかそういうことじゃなくて、朱莉の心配をしていただけか。

 女同士の会話にこの身を投じるのは、少し怖いというか腰が引けるけど、このままでは揉め事に発展してしまいそうなので、僕は言った。

「なあユリ。別に膝枕は破廉恥なことじゃない。健全な青少年なら、誰でも一度はやることだよ」

「ふーん。なに? じゃあアキラは、朱莉ちゃんに膝枕して欲しくてたまらないわけ?」

 僕はすぐさま答えた。

「もちろん」

「……あっそ。ならやればいいじゃん、膝枕」

「言われなくてもそうするよ」

 床に女座りをした朱莉は、ポンポンと膝を叩いて僕を招く。僕はできるだけクールに、そしてカッコよく、朱莉の膝に頭を預けた。

「どうかな? 居心地悪くない?」

 朱莉は僕の髪の毛をさらさらと手櫛しながら、微笑んでいる。

「最高だ。もう一生、このままでいたいぐらい」

 足を小鹿のようにプルプルと震わせ、ユリは言った。

「もう知らない。アキラなんて知らないもん」

「ユリ、やっぱり嫉妬しているのね」

「してないし。別にアキラが他の女の子とイチャイチャしていようが、あたしには関係ない」

「いや、他の女の子っていうか、そもそも僕が女性とイチャイチャしていたことが、今までにあったか?」

 ユリはツンとした表情のまま、何も答えようとはしない。そんなユリの失礼な態度に、ほんの少しムカついたが、それに対して僕はとやかく言うつもりはない。ほら、僕って寛大だから。

「アキラってやっぱり鈍感よね」

 セレスさんはいきなり、わけの分からぬ発言をした。

「僕が鈍感? やめてくれ、そんなたちの悪い冗談は」

「いえ、冗談を言っているつもりはないのだけれど。それなら、あのユリの表情を見ても、まだ気づかないのかしら?」

 セレスさんはユリを指さし、僕に見るよう促す。言われた通りにするも、そこにはさきほどから怖い顔したユリの姿。

 それを見てもやはり、セレスさんが何を言いたいのかが理解できずにいた。

「どうやら本当に分からないみたいね。そう……それなら、私がユリの心境を丸裸にしてあげるわ」

 丸裸にする、などという表現は、実に僕の好奇心をそそる。いや、別に僕はイヤらしいことを考えているわけではない。ユリの裸を想像して、思わず鼻血を噴射してしまいそうになったとか、そういうことではな――

「ああん、もう。どうしてアキラはあたしの淡い恋心に気づいてくれないの? もう知らない。アキラがかまってくれるまで、ずっとこうしていじけてやるんだから」

 僕の心の声を遮って、突然セレスさんは奇妙なことを言った。僕は朱莉の膝から頭を持ち上げて、「どうした?」と聞く。

「だから、ユリの心の声を、私が代弁してあげたのよ」

 なるほど。セレスさんがユリの声真似をするのは、途轍もなく下手くそだということは良く分かった。

「なあ、ユリは本当にそんなこと思ってるのか?」

「ふん……!」

 いや、僕の質問に対して、「ふん」って答えるのってどうよ? イラッとを通り越して、もはや可愛く思えてくる。

「ほらみなさい。この反応から察するに、恐らく正解よ」

「ちょっとセレスちゃん……そういうのやめて、ほんとに……」

 朱莉は上品に口元をおさえて笑う。

「ユリちゃん、反応が可愛いね」

「で、どうなんだユリ? お前は僕のことが好きなの?」

「ほっんと! アキラってデリカシーないよね!? 普通女の子にそういうこと聞く……? あり得ない」

 どうも僕の発言が気に食わなかったようで、ユリの怒りは増すばかり。

 さて、この辺でばらしてしまおうか。いやね、実のところ、ユリが僕のことを好きなのは、もう前から知っている。

 わざとユリの好意に気が付かないフリをしているのだ。

 どうしてそんなことをするのか。もう勘の良いやつは気づいたかもしれない。

 よく考えてみろ。

 ユリが僕のことを好きになるということはつまり、その僕への好意が怨念となってしまう可能性があるんだ。

 僕のことが好きなのだとしたら、ずっと一緒にいたいと思ってしまうはず。となれば、その思いがこの世に存在し続けたい理由となり、怨念へと変わる。

 怨念に変化すると、その思いを晴らさなければ、ユリはいつまでたっても成仏できない。人の好意を無碍にはするな、と皆が口を揃えて言うけれど、こればかりは無碍にせざるを得ない。

 やはり、ユリが僕のことを好いてくれているというのは嬉しいし、僕としてもその思いに何らかの回答を用意してあげたい。だが、相手が幽霊ともなれば話は別。

 僕は鈍感なフリをして、そしてユリはそんな僕の態度に心を痛める。

 残酷だ。残酷だけど、そうする他ない。僕は芝居がかった困惑顔をして、ユリに言う。

「何を怒ってるんだか。やっぱり女ってのは、よく分からないな」

「アキラのバカ!」

 バカはお前だ。こんな僕みたいな男を好きになってしまうあたり、お前はそうとうな大バカ者だ。ふとセレスさんの視線に気がついて、そちらを見れば、何故か苦い顔をしていた。

「それで朱莉、膝枕の次は何をしたい?」

 顎に手をのせ、考え事をする朱莉。しばらく黙って待つと、朱莉は静かに言った。

「恋バナ、とかしてみたいかも」

「恋バナ?」

「そう、恋バナ!」

 修学旅行の夜に、先生の目を盗んで遅くまで語り合う、あの恋バナのことか。

 これは男子にも女子にも共通して言えるが、思春期の子供というのは、どうも他人の恋愛事情を聞きたがる節がある。しかもそれは決まって、修学旅行の夜に行われるのだ。

 学校の友人と、滅多に外泊なんかできないから、テンションが上がって思わず口が軽くなってしまうのだろう。誰からともなく、夜になれば自然と恋バナ談義は開催される。

 ああ、懐かしい。

 先生にバレないよう、声をひそめて皆がワイワイしている中、僕は一人だけ寝たふりをしていたあの夜が。しかも、だいたい先生に起きているのがばれて怒られるのが落ちだが、その際は連帯責任という何とも迷惑な日本のしきたりのせいで、無関係な僕まで怒られる。

 日本というのは、理不尽な国だ。

 と、話を戻して。どうやら朱莉は、そんな恋バナをしたいらしい。

「それなら、僕は席を外したほうがいいか?」

 まあ普通に考えれば、男の僕が女の話しの輪に混ざるのは気が引けてしまう。

 そして当然、女子側からすれば、僕の存在は邪魔になるはず。

 だと思ったんだが――

「ううん。アキラさんも一緒に話そうよ、ね?」

「いや、いいよ。気まずいし」

「いいじゃない。どうせなら、皆で話したほうが楽しいわ。ねえ、ユリ?」

 ユリは背を向けたまま、一言だけ。

「まあ、ね」

「はい、そういうわけで。多数決の結果、アキラさんも恋バナをすることに決まったからね」

 無理やり僕を恋話に巻き込もうとする朱莉を一瞥。これまた日本の嫌な習慣だ。意見が割れればすぐ多数決。少数派の意見は無視されて、多数派の意見のみ重要視される。

 何が民主主義だ。何が自由だ。自由だ何だと謳われるその裏側には、いくつもの犠牲が伴っているじゃないか。人間というのは結局、自分の都合を押し通すことしか考えちゃいない。

 やだやだ、ああ嫌だ。

「仕方ない。それならここは一つ、恋バナとやらに参戦しようじゃないか」

「いや、参戦って……戦争じゃないのだから。何だか穏やかでないわね」

 おばさん臭い口調で言うセレスさんとは裏腹に、やたらイキイキとした朱莉が反論する。

「いいえ、セレスさん。恋バナとはそれすなわち、戦いなんですよ。女同士で仲良く語り合ってはみせるが、その実は、誰が誰を好きになるか、醜い争いを繰り広げているものなんです!」

 急にキャラが変わったよ、この子。 ていうか、恋バナってそんなおっかないものなの?

 しかも自分で醜い争いとか言っちゃってるし。どうしてそんなものをやりたいと思うのかねえ。僕は不思議でならない。

 そしてここにも、キャラが変わったやつがいるのであった。

「そうだよ……そうなんだよ! 恋バナは戦争……戦争なんだよ!」

「ちょ、ちょっと落ち着けよ……二人とも」

「そ、そうね……いくらなんでも、熱が入り過ぎよ?」

 僕とセレスさんは、珍しく意見が合った。だが――

「これはあたしと朱莉ちゃんの勝負……邪魔をしないで……」

「そうね、決着をつけよう、ユリちゃん。これは女同士の戦い……覚悟はいい?」

 おい、もはや恋バナじゃなくなってるよ、それ。

「だめだこりゃ……」

「まったくね。私たちにはもう、二人を見守ることしかできないわ……!」

 セレスさん、あんたもけっこうノリノリじゃないか。

 とりあえず僕は、黙ってその様子を見ることにした。


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