エピローグ
「しおりちゃん、痛いだろうけど、動かしてごめんね。」
手早く体を拭き、服も可能な限り着替えさせたマナミはしおりへ呟く。
しおりは体を拭いている間も、着替えさせている間も目を覚ます事は無かった。
「修二君と誠君を呼んでくるね。」
マナミは立ち上がると、洞窟の入り口へと歩いていく。
「修二君、誠君、終ったから戻ってきて平気だよ。」
最初の曲がり角で声を掛けてみるが、返事が無い。
覗き込んでみるが、修二の姿も誠の姿も見えない。
「まさかっ!?」
真奈美は気づいた。
2人が志村と戦いに出たことに。
そして後悔した。
何故止められなかったか・・・
すぐにリストバンドを確認してみる。
生存人数は5/15、変化は無い。
「良かった・・・まだ大丈夫だ。」
すぐに後を追おうと洞窟内をかけるが、入り口前で足が止まる。
自分が行っても足手まといになる。
しおりを看病しなければいけない。
その考えが、マナミに修二達を追わせる事をよしとしなかった。
マナミは悲痛な顔をすると、しおりの元へと戻っていった。
それから6時間。
マナミはずっとしおりの看病を続けていた。
傷口を冷やし、汗を拭き、水分を口に含ませて上げる。
修二からしおりの事を頼まれた。
マナミは修二が無事帰ってくることを祈りながら、しおりの容態を自分の事のように気にするだろうと考えて・・・
「しおりちゃん・・・修二君、大丈夫かな?
きっと無事帰ってくるよね?
しおりちゃんに怒られるかもしれないけど、私、修二さんに伝えたい事があるんだ・・・」
もう何度目にもなる、しおりへの問いかけを行っていた時、それは起こった。
ドオオオオオォォォン
洞窟の中にも響き渡る爆音と振動・・・
その音に驚いたマナミは反射的にリストバンドを見る。
生存者 5/15
その数字は変わる事が無い。
|"空白地帯"(ブランクエリア)に居る事によって、リストバンドの内容が更新されないのだから・・・
だが、その数字を信じたマナミは安堵のため息を漏らす。
「良かった・・・修二君の身に何か起こったのかと思った。
でも・・・さっきの音はなんだろう?
しおりちゃん、ちょっと様子を見てくるね。」
そう言うと、マナミは洞窟入り口の方へ駆け出していく。
パチリ
マナミが出て行った後、しおりは目を覚ます。
痛む体を押さえつけ、誠が念のためにと置いていったマシンガンの所まではっていく。
そして近づいてくる足音が視界に入った所でスイッチを入れる。
グー・・・・ガガガガガガガガガガガ
「え?・・・なんで?」
驚愕の表情のまま、その場で蜂の巣となっていくマナミ。
そんなマナミを眺めながら、しおりは呟く。
「修二の居ない世界で・・・、貴方が生きる事はもう出来ない・・・
これが・・・せめてもの餞・・・」
最早、その言葉を受け取るものは・・・もう居ない。
ここまでお読み頂き誠にありがとうございました。
処女作が「はぐれ魔王の下克上」で、この作品が2作目という感じになります。
どこまでもシリアスを追求したく、かなり暗い内容となってしまいました。
ハッピーエンドで終る話も考えてあり、最後までどちらにするか迷っていましたが、下手な救いをいれるのは何か違うんじゃないだろうか?と考えて、最後を今回のような形とさせていただきました。
現在、美味く表現出来ていない部分も多かく、もっと美味くできなかったか自問自答しております。
最後にもう一度。
「ブランクプレーヤーの生き方」にお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。




