表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/41

3日目―山小屋跡

「マナミ・・・」


「うん・・・」


手を差し出し、マナミと共に立ち上がる。

先程までと違い、その手には力が込められている。

"生きる"という意思が。


明日香はマナミに全てを託したんだろう。

勇気を受け取ったマナミは、きっともう大丈夫だ。


「絶対に、生き残ろう。」


「うん。」


立ち上がり、マナミのリストバンドを確認しさせてもらう。


6/15


これで残っているのは、俺・マナミ、そしてしおり。

後はおそらくだが、茶髪・誠・愛だろう。


残りは34時間とちょっと。

それだけの時間を誰とも会わないで過ごす事ができるとは楽観する訳に行かない。


そして・・・誠達が死んだとは考えたくないが、志村が生き残っている可能性も考えておかなければならない。

憶測でハルカと同時期に死んだのが志村と、決め付けておくのは危険すぎる。


「ごめんね、私のせいで遅くなっちゃった。

 しおりちゃんが待ちくたびれているかもしれない。

 すぐに合流地点に向かおう?」


マナミに話しかけられる。

おっと、つい思考にふけっていた。

確かにしおりが待ちくたびれているかもしれないな。


「いや、明日香の件はマナミに必要な事だった。

 でも、待たせすぎては悪いな。

 1人にしておくのも危ないし急ごうか。」


そうだな・・・今は一刻も早くしおりと合流しなければ。


「確かこの直ぐ先だったよね?」


「ああ。」


暗くなっているが、この風景は見覚えがある。

ケンジ達と打ち合わせをした場所だ・・・


ここから山小屋までなら、慎重に歩いても一時間は掛からないだろう。


「行こうか。」


マナミに手を差し出し、2人で慎重に茂みを進んでいく。



「ついた・・・」


あれからちょうど1時間。

思ったよりも警戒して歩いたからか、時間が掛かった。


山小屋のあった場所へ着くと、そこは大きなクレーターとなっていた。

身を隠すために大きな木の後ろに隠れているが、そこからでは人影が見えない。


クレーターは大きな平地になっているので、そこで待っていれば格好の標的だ。

しおりならそんな危ない事をするわけが無い。


隠れているかもしれないな・・・


「しおりは隠れているかもしれない。

 少し、様子を見てみよう。」


「うん、判った。」


目を閉じて耳を澄ます。


聞こえてくるのは風が木々を揺らす音と、草のこすれる音・・・

あとはマナミの呼吸ぐらいか・・・


そのまましばらく待ってみるが、他の音は聞こえてこない。


マナミのほうを見ると、彼女も同じく目を閉じて耳を澄ませているようだ。


「マナミ。」


小さな声で名前を呼ぶ。


「どうしたの?」


「誰もいないみたいだ。

 もしくはしおりも同じように耳を澄ましている可能性がある。

 少し危険だが、クレーターの位置で呼びかけてみようと思う。」


「僕も行く。」


「いや、何か有った時の援護は必要だ。

 マナミにそれを頼みたい。


 頼めるか?」


マナミはそれでも付いて来たそうな顔をするが、決心したように、


「判った。でも絶対に危険なことはしないでね?」


と言ってくる。


「常に銃を撃てる状態で待機してくれ。

 相手が茶髪だった場合、躊躇いは死を招く。


 躊躇わないでくれ。」


「うん。」


チャキッ


マナミは銃を構え木の後ろに身を隠す。

いつでも撃てるように、間断なく周りを見渡してだ。


「行って来る。」


その様子に安心し、クレーター中央へと歩いていく。


やはり・・・誰もいない。

耳を済ませる。


聞こえてくるのは木々の音ばかり。


気持ちを落ち着かせる為、深呼吸をする。


すぅ~、はぁ~。


よしっ!!


「しおり!!いるか?聞こえたらでてきて欲しい!!」


大きな声で叫ぶ。


多少危険だが、しおりが隠れているなら、こうでもしないと出て来ないはず。

もう一度叫ぶ。

・・・・・・だが、出て来ない。


耳を澄ます。

残念だが、聞こえてくるのは風の音と木々の音だけだ。


ゆっくりとマナミの元へ戻る。


「まだ、たどり着いてないみたいだ。」


マナミの側に行き伝える。


「そっか・・・。

 でもそうだね、私達は途中までGPSで確認できたから早かったけど、しおりちゃんはずっと手探りで進んでいるだろうし。

 それだと、まだ付かない可能性も高いか。」


確かにそうだ。

相手の位置を確認できるアドバンテージはかなり有効だが、無い状態では常に警戒を怠る事ができない。

体感的にだが、GPSがあった時と無い時では移動時間が5倍から10倍かかっている。


最初から持っていなかったしおりは、もっと時間が掛かるはずだ。


「そうだな。

 しおりがたどり着くまでどれだけかかるか判らない。

 交代で休みながらまとうか。」


「そうだね。」



それから数時間。

交代で食事をとったり休憩を取っている。

僅かな物音でも聞こえるよう、終始無言で過ごす。


途中、


「修二君・・・」


「なんだ?」


「・・・ううん、何でもない。」


こんな風にマナミが何か言いかけては辞める感じは何度か有った。


マナミも不安なんだろう。


しおりがたどり着く気配が無い。

もしも誰かと交戦していたら・・・

もしも傷付いて倒れていたら・・・


だが、入れ違いになる可能性は避けたい。

最低でも周りが明るくなってからだ・・・




さらに数時間、交代で見張りを続けていると、夜があけ、朝になった。


時刻は71:57:43


後3分で3日目が終る。


残り人数は相変わらず6人。


変わらない事を良かったととるべきか、悪かったと取るべきか・・・

まだたどり着かないしおりが、無事であることを祈るばかりだ・・・


そして・・・


後3分であいつが来る。

今回もまたゲームを面白くする為の、くだらない趣向を用意して・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ