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3日目―トラップ

「修二さん・・・これ。」


マナミが左手を差し出してくる。


「右下のプレイヤー数・・・減ったみたい・・・。」


その言葉に導かれるように、画面へと視線を移す。

さっきまでその数字は9/15だった。

だが、今は7/15へと変わっている。


背筋に寒いものが走る。


「しおりちゃん・・・大丈夫だよね?」


マナミは不安そうな声で聞いてくる。


「多分・・・大丈夫だと思う。」


一気に二人減ったのなら、可能性は低いと思う。


しおりが誰かと共倒れという可能性も無いといえないが、おそらく志村・ハルカ組か誠・愛組に何か有ったと見たほうが良い。

こちらから希望を無くすような考えは持たない方がいい。

例え、志村・ハルカ組に出合ったとしても、しおりなら何とか逃げてくれるはず。


誠・愛組も何か有ったとは考えたくない。

一番理想なのは茶髪と明日香の共倒れだ・・・

そうなればマナミの負担もなくなるし、志村達の出方次第でもう戦わなくて済むかもしれない。


だが、そこまでの理想は出来ないだろう。


精々茶髪か明日香と志村組が交戦したと考えておこう。


「しおりならきっと逃げられるはずだ。」


「そう・・・だよね。」


おそらくマナミもそう考えているだろう。


出来れば茶髪と志村組が・・・という感じで。


そのまま暫くは無言で歩く。




「ねぇ、修二さん。

 しおりちゃんの事、どう思っているの?」


「どう・・・か。」


急に変な事を質問されたが、確かにそう思われてもおかしくは無いか。


今までは生き延びるのに必死で動いていたが、割と最初からずっと共に行動しているし、お互いに支えあっているようにも見える。

偶然出会い、2人だけが生き残る形になって、託された少女・・・と思ってはいた。


だが、改めて考えてみると、俺は彼女の事を何も知らない・・・

精々、無くなった妹を髣髴とさせる。といった所か?


「今まで考えた事はなかったけど、あえて考えるなら、妹みたいな存在・・・かな。」


「ふぅん、妹ね。

 本当に?」


やけに絡んでくるな?


「あぁ、亡くなった妹に面影があるんだろうな・・・

 だからこそ、守ろうって余計に思うのかもしれない。」


「あっ・・・・ごめん。」


まずいことを行ってしまったと思っているんだろう。

マナミは過敏な所がある。


「気にしなくて良い。

 俺もマナミのことを聞かせてもらってるしな。」


「あ・・・うん。

 なら良かった。」


「ああ。」


「うん・・・良かった。」


なにやら自己完結したみたいだが、機嫌は良くなってきたようだ。

話をするというのはリフレッシュ効果でもあるのだろうか。





「修二さん、誰かいるっ!!」


更に歩いているときだった。

マナミがGPS のリストバンドを見せて来る。


画面の端に光点が止まったまま動かない。


「少し様子を見てみよう。」


適当な地面に腰を下ろし、光点の位置を確認する。

俺達に向かってくれば、間違いなく茶髪。

うろうろしていれば、光点が一つなので、おそらく明日香だろう。




「動かない・・・ね?」


「ああ・・・」


30分近く様子を見たが、動く気配はない。


「時間的にお昼を過ぎただろう。

 食料をとりながらゆっくり様子を見よう。」


リュックを下ろしながら、マナミに振り返る。


「そう・・・だね。」


マナミも頷きながら、リュックから食料を取り出した。






「動かない・・・な?」


「動かないね。」


あれから1時間経ったが、未だに光点は1度たらず動いていない。


「考えられるのは、①待ち伏せ、②寝ている、③死んでいる。

 辺りと思うけど、どう思う?」


「待ち伏せだったら1時間もじっとしていられるなんて、すごい集中力だと思う。

 僕だったら耐えられないかな。

 こんな昼間だし、草むらの中だけど睡眠をとっているのも考えずらいかな?

 もっと人が来ないところで、夜中にこっそり寝るほうが良さそうだし。


 あとは、怪我をして動けないって可能性も考えられない?

 意識を失ってるとか?」


「そうか、その可能性も有るか。」


「あとは近づくか、避けて通るか。だね?」


「ああ・・・さっきの死亡と何か関係が有るかもしれない。

 怪我をして動けないのが・・・茶髪がだとしたら、止めを刺して置きたいしな。」


「うん。」


千載一遇のチャンスととるか、危険な事に近寄らないよう、逃げるか・・・

待ち伏せだったら最悪だな・・・だが・・・


「よし、俺は近づいてみようと思う。

 だが、マナミは何か有った時の為に離れていて欲しい。」


「判った。でも僕も行く。」


「危険だぞ?待ち伏せかもしれない。」


「それでも1人でいるより、修二さんと一緒に行動したい。」


「・・・・・・判った。」


頷き合うと、互いに銃を片手にゆっくりと進む。




「光点は?」


「動かない。」


「よし・・・」


光点の場所に少しづつ近づいていく。


この辺りは腰の高さまである高い草が一面に生えており、見通しが悪い。


「これは待ち伏せの可能性も有るね。」


「ああ、思った以上に密集しているな。」


なるべく音を立てないよう、細心の注意を払って進んでいく。


「修二さん・・・そろそろ。」


「判った。

 動きは?」


「無い。」


声を潜め、簡単なやり取りのみにする。


ゆっくりと息を潜め・・・

足音を消す。


草むらの薄くなる所発見し、


「いいか、一気にとびだすぞ?」


「うん。」


俺は力をためると、マナミの目を見て・・・一気に飛び出した。




「・・・・・・これは・・・」


「ひっ・・・」


そこに在ったのは、眉間に風穴の開いた見覚えのある女性の遺体・・・

ハルカだった。


左手にまかれたリストバンドは銃で壊されている。

となると、光点はもう1つのリストバンドだろうか?


山小屋で持っていった亜紀のリストバンドだろう。


「減った数字はこれか・・・」


「・・・うん。」


「となると、後1人は志村の可能性が高いな。」


「・・・うん。」


真奈美の顔が青い。

相当ショックなのだろう。


「マナミ、後ろを向いていてくれないか?」


「何?どうするの?」


「おそらく山小屋で盗られたリストバンドが反応していたんだろう。

 色々使えるはずだから探しておこうかと・・・」


「判った・・・ごめん。

 ちょっと・・・離れるね。」


「ああ、でも光点が光ったら、直ぐに教えてくれ。」


「・・・うん。」


マナミは少しだけ、草の音を立てると見えない程度先に進んだ。


「さてと・・・」


まずは、瞳孔が開いているハルカの目を閉じさせてやる。


次にリュックは・・・・っと、あった。


中を開くと、食料に銃・・・マガジン・・・替えの服・・・あった。リストバンドだ。


リストバンドを掴むと、先にマナミの向かった方へ歩き出す。


食料・銃・リストバンドを持って逃げた相手とは言え、死んだとあっては怒りすら沸かない。


だが、軽く冥福だけは祈っておく。


「お待たせ。」


「・・・うん、有った?」


「あぁ、有った。」


亜紀のリストバンドを見せると、マナミはほっとした顔になる。


マナミはまだ顔が青い。

少しでも早く気分を変えられるよう、早足で草原を抜けるか・・・


俺は駆けながら考える。

あの2人を殺ったのは誰だ?


リストバンドが壊されている事を考えると、誠達が戦闘を行ったと考えられる。

それなら良い。

さっき引き上げたリストバンドを渡せば誠のリストバンドも外れる。


だが、茶髪か明日香だった場合、誠は後3つ壊さなければならい。

俺達が協力しなければ外れない可能性は更に高くなった・・・か。


これは次に会ったとき、確認しなければならないな。



ズサッ


後ろから音が聞こえる。

しまった・・・

マナミの体調が悪いことを知っていながら思考にのめり込んでいた・・・


「マナミ、大丈夫か?」


振り向くと、マナミは滑って転んだだけのようだ。

目に付く外傷は見つからない。


「うん、大丈夫。・・・ごめんね。」


相変わらず顔色が悪い。


「どうする?少し休むか?」


「ううん、大丈夫。

 それよりしおりちゃんが気になるよ。

 早く行こう。」


マナミはかぶりを振って立ち上がろうとする。


「そうだな。行こうか。」


手をとって立つのを手伝おうとした時、それは見えた。


「危ないっ!!」


だが遅かった。

気付いた時には、もうマナミの手は金属の板の上に在った。


グッ・・・ガシャン・・・・シャキッ・・ガッ


何かが作動する音、そして硬い何かがぶつかり合う音が響いた。


「マナミ無事かっ!!」


真奈美の手の下には、5寸釘ほどの太さの針が飛び出している。


「うん、大丈夫・・・でもリストバンドが・・・」


手に針は刺さっていなかった。

だが、握っていたリストバンドには針の先端が深々と刺さっていた。

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