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3日目―砂浜

そのままどれだけ走っただろうか?

気が着いた時には見知った砂浜まで来ていた。


「はぁっ・・・はぁっ・・・ふぅ・・・」


とにかく喉が渇いた。


周りを見渡し、人影が無いことを確認してから、リュックから水を取り出し、頭から浴びるように水を飲んだ。

1本目がすぐに空になったので、2本目をとりだすと、今度は口をつけ飲み始めた。


息を整える為、周りを確認すると、身を隠すことができそうな大きな木があったので、根元にどかっと座る。


「ふぅ・・・」


潮風が心地よい・・・


・・・このままここに倒れ、寝て、目が覚めたら全てが夢だった・・・とならないだろうか?

そんな虫のいい話がある訳無いか・・・


パァンッ


顔を叩き、気合を入れなおす。



目を閉じて周囲の気配を探っていると、聞こえてくるのは風と波の音だけ。


体力を回復するのと、気力を貯める為、どれだけそう過ごしていただろうか。


ザッ


「誰だっ!!」


遠くから足音が聞こえた。

予備に持っていた銃を取り出し、木の影から威嚇する。


予備にしていただけあり、単発の銃だ。

一発を外したら次が無い・・・



だが、それは杞憂に終った。


「修二さん、良かった・・・

 お互い無事だったね。

 撃たれたみたいだったけど、怪我は大丈夫?」


足音の主はマナミだった。


「マナミも無事だったか?良かった。

 それと・・・怪我は大丈夫か?」


マナミ1人なのを確認し、安心して銃をおろす。


「光点が長い間、一箇所に止まって居たから、少し心配になったよ。」


「心配かけたか、ごめん。

 ちょっと休憩をしていたんだ。」


そういえば、リストバンドは今マナミが持っていたんだったな。


「肩の怪我・・・治療した方が良いよね?

 今消毒薬を出すよ。」


肩を覗き込んだ後、リュックをがさごそといじっている。


「ありがとう。

 少し痛むけど、動くのには問題ない。

 念のため消毒だけしておけば大丈夫と思うよ。

 それより、マナミは大丈夫だったかい?」


「うん・・・

 修二さんがずっと引き付けていてくれたから・・・

 ごめんね、ずっと見てるだけの役立たずだった・・・」


マナミは落ち込んでいる。

明日香の件がまだ引きずっているのだろうか?


「そんな事は無い。

 マナミが無事で良かった。

 ・・・ところでしおりは何所に向かったか判らないよね?」


「うん、修二さんはリストバンドをつけていたから光点を追う事ができたけど、しおりちゃんはリストバンド持ってないから。

 でも、茶髪はしばらく動かなかったけど、その後、南の方に向っていったから大丈夫だと思うよ?」


「そうか。」


ほっと胸をなでおろす。


煙の中かすかに2人が走り去るのを見る事ができたが、本当に無事だったかは会って見るまで判らないからな。

茶髪も怪我を負っていた。

しばらくは、俺たちに近づいてこないだろう。


頭の中に"手負いの獣"という単語が浮かんだが、今はどうする事もできない。


できれば終了まで会いたくないが、そううまくは行かないだろう。


「とにかく助かった・・・早い所しおりと合流できれば良いんだが・・・」


「そうだね

 あいつも怪我してたし、もう来ないでくれれば良いんだけど・・・」


「だな・・・」


良く見ると、マナミも汗をかいている。

一緒に走っていたし、疲れているんだろう。


「飲みかけだけど・・・居る?」


マナミにペットボトルを差し出す。


「うん、ありがとう。」


マナミはペットボトルを受け取ると、代わりに消毒薬を手渡してきた。

相当喉が渇いていたのか、ごくごくと飲み始める。


「飲みながらで良いから聞いて欲しい。

 今回の事で改めて思ったんだ。


 ・・・多分、茶髪の目にマナミとしおりの姿は無い。

 後2日、逃げ続けられるとも思えないし、また交戦になると思う。


 手負いの獣・・・次に会ったときの茶髪は、まさにそんな感じだろう。

 下手をすれば、共倒れ覚悟で襲ってくる可能性すらある。

 

 で・・だ。


 やはり・・・しおりは安全な場所で待機してもらおうかと思う。

 しおりは嫌がると思うが・・・しおりは安全な場所がで、ただじっとしていればクリアできる。


 ・・・・・(ゴクッ)


 マナミには悪いけど・・・

 俺と一緒に行動して欲しい。


 理由は・・・判るよね?

 もちろん、出来る限り守れるよう力を尽くす。


 正直・・・彼女には会わないでクリアできれば良いんだが、そうも行かないだろうからね・・・


 マナミ・・・着いて来てくれないか?」


いつしかマナミは水を飲む手を止めて、俺の事をじっと見つめていた。


「そう・・・だね。

 あの子はもう戻らないと思う・・・

 

 でも・・・私はそれでも戻ってきて欲しいと訴えると思うよ?

 それでもいいの?」


「そこも承知の上で・・・だ。」


マナミはすっと目を閉じ、黙っている。


・・・・・・・・・


・・・・・・・・・


・・・・・・・・・


「・・・うん、お願い。」


マナミは、酷く悲痛な顔で返事をくれた。


「ありがとう。」


俺はそれだけ言うと、消毒薬を肩の傷に付け始めた。


「・・・つっ。」


「大丈夫?」


「あぁ、染みただけだ。

 傷は深くないし、心配しないで良いよ。」


実際、少し肉がえぐれているだけで血もそれほど出ていない。

破傷風にだけ気をつければ問題ないだろう。


念の為、布で抑えて包帯を巻きつければ・・・っと。



「お待たせ、そろそろ息は整った?」


「うん。」


「じゃ、しおりを探しに山小屋の有った場所に向おうか。」


「うん。」


俺とマナミは砂浜を背に、山小屋跡へ向った。

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