1日目―出会い
「それで~、運営って~、何の話ですか~?」
しつこい・・・話題を逸らしているのが判らないのだろうか。
答えない限り何度でも聞いてきそうだ、仕方ない。
「あくまで俺の推測なんだが、このゲームは最低でも14人は参加させられている。」
ルールで生存条件は14項目あった。
最低でも14人は居ると考えて良いだろう。
最悪、28人や42人の可能性もあるが・・・
「更にリストバンドからのアナウンスは聞いたか?」
「はい~、とっても可愛いマスコットさんでしたね~。」
「あのアナウンスは【僕】じゃなく、【僕達】と言ったんだ。
攫って来た人数と、自分の事を複数で言っていた事から、大きい団体がこのゲームをやらせているんじゃないかと考えられる。」
「そうなんですか~。」
「その団体が運営していると考えられるから、呼びかけてみたんだよ、運営~ってね。」
少女―七海が納得してくれたみたいだ。
「なるほど~、そうだったんですね~。
そんなところに気が付くなんて、修二さん頭いいです~。」
うん・・・変な少女ではあるが、褒められて悪い気はしないな・・・
「それで~、運営さんに~、何を聞こうとしてたんですか~?」
また答えにくい事をピンポイントで・・・
これも答えない限り、聞き続けてくるだろう・・・
「あのアナウンスはぼやかしてばかりで、良くわからなかっただろう?
このゲームが本当なのか、しっかり聞かせて貰おうかと思ってね。」
間違いではない。
これも聞きたいことではあるのだ。
あの時聞いていた事を答えろと言われた訳ではない。
だが、七海はそれで納得してくれたようだ。
「そうですか~。では~、私も~、聞きたい事があるので~、一緒に呼んでもいいですか~?」
「いや、呼びかけてみたけど反応は無い。どうやら答えてくれるつもりは無いみたいだ。」
「そうですか~。残念です~。」
・・・全然残念そうには見えないがな・・・
七海は何かを思いついたようにポケットから紙を取り出す。
あれはっ・・・
「目が覚めたら~、こんな紙を持ってたんですよ~。
これが~なんだか判りますか~?」
間違いない、ルールの記載された紙だ。
「見せて貰って構わないか?」
「いいですよ~。」
七海は疑うことなく、俺に紙を手渡してくる。
紙を覗き込んでみると、俺が見た物とは違ったルールが記載されていた。
【ルール】
1、参加人数は15人。
1、島内でのセーフティエリア内での戦闘禁止。
戦闘を行った際、ペナルティ発生
1、1人だけナンバリングの発生しないブランクプレーヤーが存在する。
ブランクプレーヤーは最終日2m以内の人間を生存条件の可否に関わらず、ブレスレットを外すことができる。
※この用紙は全プレイヤーへランダムな内容で配布。
12のルールを遵守し、最終日までの生存を祈る。
・・・っこれだ。
欲しかった情報がピンポイントで載っている。
しかも他のルールも俺と被っている物は無い。
俺のナンバーが表示されなかったのはブランクプレーヤーだったと言う事か。
だが・・・理解すると同時に背筋が凍った。
俺は・・・NO.8から命を狙われるからだ・・・
他にもNO.1やNO.11も危険ではあるが、NO.8だけは生存条件に直結している分、不用意に近づく事はできない。
後は・・・NO.14も危ないな。
条件がシークレットという事は、本人にも知らされてない可能性もあるが、他プレイヤーとは違った存在であるブランクプレーヤーに対し、何か危害を加えてくる可能性も高い。
最低でも俺にとっての鬼門はNO.1・8・11・14と言う事だろう。
この4つのナンバーには近づいてはいけない・・・
「その~、紙の~、意味は判りました~?」
七海が聞いてくる。
この少女は少々頭が足りないところがある。その分、適当に使う事ができるのではないか・・・
そう思えてきた・・・
俺はポケットから紙を取り出すと、
「多分俺の持っていた紙と同じ物で、このゲームのルールの一部が乗ってるんだと思う。
ほら、俺のルールと違う事が書いてあるし、最後に【12のルールを遵守し】ってあるだろう?
幾つもの紙を集めて、ルールを把握しろってことだと思うよ。」
「そうなんですか~。修二さん、やっぱり凄いです~。」
やはりこれなら協力させる事は出来そうだな・・・
「七海、君のナンバーを教えて貰ってもいいかな?可能なら力を合わせてクリア条件を達成したいと思うんだが。」
「亜希でいいですよ~。私は~これなんです~。」
驚くほど簡単にリストバンドを俺に見せてきた。NO.14と表示されている。
・・・・・・背中に冷たい汗が流れる。
「く・・クリア条件って判るかな?
俺のルールだと、シークレットって書かれてて判らないんだ・・・」
くっ、平常心でいようとするが、どうしてもドモってしまう。
亜希が気づかない事を祈るしかない。
「うふふ~、シークレットですか~、ほんとにそう書かれてますね~。
なら~、ナ・イ・ショ・です~。シークレットって~、内緒って意味なんですよ~。」
先ほどまでと変わらない笑みだが、悪魔的な笑いに見えてしまう・・・
ヤバイ・・・
俺がブランクナンバーと知って言って来ているのか?
「内緒だと手伝う事が出来ないじゃないか。
教えてくれると助かるんだけど・・・」
何とか聞き出さないと・・・
「それじゃぁ~、先に修二さんの番号を教えて貰ってもいいですか~?」
くっ、さっきまでの会話から考えるに、俺が答えない限りは亜希も答えないだろう。
ここは正直にブランクと言うべきか?
だが、NO.14のクリアにブランクの破棄とか、俺にとって良くない条件の可能性もある。
ここはどう答える・・・
「俺の番号は・・・」
「番号は~?」
「3番・・・だ」
NO.3―最終日までに3人以上の生存。
NO.11の3人以上の殺害と対照になっている上、一般的なナンバーだ。
これならNO.14の標的になる可能性は少ないだろう。
「3番ですか~。この最終日まで3人のお友達を作る条件ですね~。
なら~、私で1人目ですね~。」
亜希は俺の行った事を疑わずに信じてくれたみたいだ。
「ああ・・・そうだな。」
「じゃ~ぁ~、私もお友達になる代わりに~、私の~、クリア条件も手伝ってくださいね~。」
これで亜希のクリア条件が聞ける。
「ああ、で、条件はどんななんだ?」
「うふふ、ナイショです~。あとでびっくりさせてあげますね~。」
・・・くっ・・・駄目だこの女・・・
仕方ない、俺に危害を加えないことは確かなようだ、うまく使って、その内に条件を聞き出してやる・・・
「でも~、修二さんはお友達をあと2人作らないといけませんし~、ルールも~、あと半分調べないとですね~?」
「ああ、そうだな・・・」
そうだ、まずは残った6つのルールを調べなくてはならない。
知らずにルール違反をし、ペナルティを受けるとか最悪な事態は避けなくてはいけない。
「それじゃ~、他の人を~、探してみましょう~。」
「いや、亜希待ってくれっ」
俺の手を引いて歩き始めようとする亜希を呼び止める。
「どうしたんですか~?」
「いや、クリア条件の中にはNO.1やNO.11のように人を殺す条件の物もある。
不必要に色々な人を探すのは危険じゃないのか?」
「でも~、24時間は~、喧嘩しちゃいけないんですよね~?」
「あ・・ああ。」
「なら~、その間に~、皆に合うのが~良いと思いませんか~?」
確かにそうだ・・・命を狙われるという怖さからつい人と合う事を拒否してしまっていたのか・・・
「その通りだな、よし、会いに行ってみよう。」