2日目―取引
「ガ・・ガガッ・・・猶予を与える。
山小屋に戻るか、狙撃されるか好きなほうを選べ。」
「こっちの声は聞こえるのか?」
「ガガッ・・・聞こえる。」
「目的は何だ?」
「ガッ・・・言う必要はない。」
「山小屋に戻って地雷を踏めと言うのなら、・・・山田を道連れにする。」
「ガッ・・・ガガッ・・・そっちに向かう。
仲間がもう1人お前を狙っている。
山田を盾にして逃げようとは思うな。」
仲間・・・か。
ハルカか志村辺りと合流したのだろうか?
「そういえば山田はリストバンドが外れているんだな?」
「教える必要はないわ。」
今の時点で外れている・・・か。
これだけで確定だ。
山田はNO,13・・・だ。
そして間違いなくNO.1プレイヤーを殺した・・・
あの茶髪が殺されたと言うのか?
しまった、残プレイヤー数を確認しておけば推理できたのだが・・・
1日目で殺された4人目か・・・
俺達が休んでいる間に茶髪を殺したのか・・・
それだけでもかなり違う。
だが、間違いないのは、この3人は人を殺していると言う事だ。
一度染まれば、次からは簡単だ・・・
NO.1改め、茶髪並に怖い相手だ。
ここでNO.13かと問えば人を殺したことを確認する。
となればタガが外れやすいな・・・
あえてぼかしておく必要がありそうだ・・・
「なら、何故ここに地雷を置こうと思っていたんだ?」
「それも私が答える気は無いわ。」
「私が、と言う事は、吉田に聞く分には問題ないと言う事か?」
「そうとってもらって構わないわ。
私は誠に付いていく、それだけだから。」
「なら、もう1つ。
山田と吉田、あと一人は俺の知っている人なのか?」
「・・・・・・教えられないわ。」
「そうか。」
この調子じゃ、大抵のことは教えて貰えなそうだな。
仕方ない、吉田が来るのを待つか。
それから暫く待っていると、吉田が銃を構えつつ歩いてきた。
「待たせたね。」
「いや、それほど待っていない。
それにしては早かったな。」
「愛を待たせすぎると後が怖いからね。」
距離として10mぐらい離れた所で立ち止まる。
「さて、まずは愛を離して貰っていいかな?」
「その前に銃のターゲットを切り、3人目を紹介して欲しい。」
「それは難しい問題だね。」
「・・・なら、このまま交渉するしかないな。」
「それは困ったなぁ・・・、そうだ、僕はこの銃を下ろすことにするよ。
だから、愛を離して欲しい。」
「離した瞬間に撃たれるのか?
さすがにゴメンだな。」
「そっかぁ、せめて山小屋の中に移動しないかい?」
「それもゴメンだ。」
「・・・はぁ、仕方ない。
このまま少し話をしよう。」
俺に向けている威嚇を外すつもりはないようだ。
なら、こちらも警戒を解くわけに行かない。
「とりあえず、ナンバーの交換だけでも出来ないかな?
僕のナンバーはNO.12 リストバンド7個の破壊だ。
今の所2つのリストバンドを破壊している。
残り5個破壊する事で開放される。
愛、君の事も伝えていいよ。」
「うん、判った。
私はNO.13 NO.1プレイヤーの殺害が条件よ。」
その言葉に後ろから動揺が伝わる。
予想をしていたが、人を殺す事でリストバンドを外したというインパクトは大きい。
山田の拘束は絶対に外すことはできないな・・・
「警戒しなくていいよ、確かに愛のナンバーと、リストバンドが外れているという意味は大きいと思う。
だが、彼女は人を殺して外した訳じゃない。
不可抗力の末、結果、人が死んで愛が助かった。と思って欲しい。」
「どう言う事だ?」
ケンジの声に吉田は初めて、迷った表情をする。
俺は口を開く
「NO.13だろうと言う事は予想していた。
ただ、人を【殺した】場合の対処を考えていたからな。
【死んでしまった】のなら、話はまったく違う。
相談になら乗ってもいい。」
山田は驚いた表情で俺を見る。
吉田も同じだ。
「何故愛がNO.13と判っていたのですか?」
「簡単な事だ、今の時点でリストバンドを外すことが出来るのはNO.2、4、5、6、9、10、11、12、13、14。
その中でNO.4、5、9、10、11、14が誰かは判明している。
残ったNO.2、6、12、13の中では、俺達が5個のリストバンドを所持している事から、2、12も排除される。
最後に・・・俺がブランクプレーヤーだからな。
NO.6は俺が生きている限り外す事はできない。」
この発言にはさすがに驚いたのか、2人とも動きが止まる。
「なっ・・・」
「ブランク・・・か、なるほどね。」
吉田が納得した表情をする。
「貴方がとても慎重な理由がわかりました。」
そう言って構えていた銃を下ろす。
「改めてお願いします。
生き残る為に協力してください。」
頭を下げると銃を地面に落とした。
「・・・誠?」
「愛、僕は色々考えて動いていたけど、2人だけで生き残るのはこれが限界だと思っている。
修二さん達は4人で行動している。
人数は少しでも多い方が生存率は上がると思うんだ・・・」
「そう・・・誠がそう言うなら私もそうするわ。」
吉田の言葉に山田も同意したようだ。
「2人だって?
3人じゃなかったのか?」
後ろからケンジが声をかける。
「すまない。
少しでも余裕を見せる為と、愛の命を危険にさらさない為に嘘をつかせてもらった。」
なるほど、確かにもう1人が狙っていると言って置けば警戒し、下手なことは出来なくなるだろう。
「本当だな?」
ケンジは念を押して聞きながら、俺と誠の間に入っていく。
足を怪我している様には見えないしっかりとした足取りだ。
・・・何か緊張を緩めてはいけないことが起こっているのか・・・?
「あぁ、ケンジ君達は信用できると思った。
だからこれ以上嘘をつくつもりはない。」
その言葉を聞いても、緊張した声でケンジは続ける。
「なら、後ろに見える光点は山田のリストバンドを置いてきて人数を多く見せているって事だな?」
その声で思い出した。
GPSでは2つの光点が近づいたり離れたりを繰り返していた・・・
「ケンジ、まさか動いているのか・・・?」
「あぁ、ゆっくりとこっちに近づいてきている・・・」
ゴクリ・・・
唾を呑む声が大きく聞こえる。
「吉田、誰かと行動を共にしていたとか、誰かと出合った後だったりはしないよな?」
その緊張を感じたのだろう。
「あ・・・あぁ、そうだな・・・行動はずっと愛と2人っきりだった。
愛、誰かに会ったりしてないか?」
吉田に聞かれ、山田は
「私も誠以外とは・・・あ、ちょっとまって。
そういえば、ぶつぶつ言いながら歩いている女の子が居たんじゃない?」
「あぁ、『マナミ』とか『汚れた』って呟いている女の子が居たね。
何か怖いものがあったから接触せずにやり過ごしてきたけど・・・」
その言葉を聞いた瞬間、背筋に寒いものが走る。
間違いない、明日香だ・・・




