2日目―落とし穴
3人が寝静まったことを確認すると、リストバンドを眺める。
まだ2日目だ・・・時間として35時間目・・・
全96時間にはまだ半分すら経っていない。
今日は色々あったな・・・
朝はハルカの裏切り?から始まった。
正直、あの時点で裏切ってくれてよかった。
命がかかった時点で裏切られたら洒落で済まない。
・・・もう少し信用できる人間だと思ったんだが、まだまだ人を見る目がないらしい。
その代わりと言っては何だが、マナミが付いてきてくれることになった。
彼女も色々と抱えてはいるようだが、仲間を見捨てることはしないだろう。
明日香との一件で彼女は拳銃を向けられながらも、明日香を説得し続けた。
あれだけ人の事を思えるのなら仲間を裏切る馬鹿な真似はしないだろう。
さっき話した借金の件、あれだけが心配だが、いざとなれば俺の賞金をマナミに渡しても構わない。
どうせ生き残らなければ出ない賞金だ。
なら、生き残る為の材料として問題ない。
だが、明日香か・・・
彼女はもう戻ってこれないかもしれない。
それでもマナミとの約束もある。
説得する事ができればいいが・・・
最悪、最終日に安全な場所で手足を縛って放置とかで、後は日本の病院に任せるしかない。
だが、その場合は最終日まで明日香も生き残っていることが前提だ。
多少は冷静になっていてくれていればいいが、あのままだったら正直ヤバいな・・・
運を天に任せるしかないだろう。
あとはNO.1の男。
あの男は危険だ・・・
雰囲気からして違った。
あの男は俺では躊躇う所でも、構わず引き金が引けるだろう。
さらにリストバンドには振動か音、どちらか判らないが、位置を把握する昨日が乗っているはずだ。
NO.1なら最後までリストバンドを外すことはできない。
常にGPSを確認しておき、1つの光点を確認次第逃げなければこちらが危ないな・・・
だが、拡張機能に関しては教えてもらえて助かった。
お陰でこっちも色々と機能がついたからな。
今の時間で生存人数は10人、1日目の4人と村上で5人と言う所か。
願わくば残り10人の内、NO.1以外は友好的な人が残っているといいんだが・・・
む?GPSに反応が来た。2つの光点がこちらに向かっている。
2つの光点が離れたり近づいたりしている。
1人で2つ持っているのではない以上、2人組みというところか。
2人組みで行動しているのは・・・吉田と山田、あとはハルカか志村あたりと合流するか・・・
まてよ・・・1日目での死亡者は4人。
俺達で4人、吉田・山田・ハルカ・志村・明日香・茶髪で10人と思っていたが、もう1人いる可能性もある。
1日目での死亡者・・・もう1人は一体誰なんだろう・・・
だが、茶髪と明日香は誰かと組むと考えにくい。
2人組みならば友好的な可能性もある・・・
光点はかなりゆっくりと動いている。
念のために光は消しておいた方がいいな・・・
俺は部屋の電気を消し、月明かりから窓の外を確認するように切り替えた。
目下、最大の問題はケンジと言っても良いな。
止血し、包帯も巻いたがそれまでの出血が酷い・・・
確か人間は1.5L~2L後を失うと危ないと聞いた事がある。
めまいで倒れ、今も顔面蒼白なのはおそらく1L近い出血があったと考えていいだろう。
血って言うのは一日でどれだけ回復するんだろう?
それに銃弾が足の中に入ったままだ。
このまま置いて大丈夫だろうか?
・・・医師の心得なんて持ち合わせていない。
ケンジには悪いが、今のまま進んでもらうしかないだろう。
その場合、どれだけケンジの身体が耐えられるか・・・だ。
これからは行動範囲も狭くなり、あのNO.1に狙われた場合、逃げ切れる可能性も低くなる。
・・・・・・・ケンジを切り捨てるか?
いや・・・駄目だ。
生き延びることだけを考えるなら、冷酷に使えない仲間は切り捨てるべきだ。
だが・・・俺はそれでいいのか?
元に戻った時、俺はそれで普通に過ごすことができるのか?
でも・・・
さっきはそれで失敗した。
元に戻った時の事を考え、村上を殺せなかったのがケンジを傷つけた。
今度も自己満足のためにケンジを連れ歩く事でしおりとマナミも危険にさらすんじゃないだろうか・・・
そうだ・・・そうなんだよ・・・
生き残る為だけなら、GPSとトラップのリストバンドを掴んで俺1人で逃げ回れば良い。
明日香はマナミだけに固執している。
ケンジが居なくなれば足手まといは居なくなる。
しおりは女の子だ、今は良くても、いずれ足手まといになる。
・・・と考えられるほど強くないんだよな・・・・・・
俺はもう約束を破ることは出来ない。
亜紀と約束したんだ・・・しおりを生き残らせるって。
そして、ケンジとマナミももう仲間なんだ。
それを切り捨てる事なんてできない・・・
なら、どうすればいいか・・・だな。
先ほどの2つの光点は、地図のぎりぎりの地点でうろうろしている。
何をやっているんだろう?
だが、セーフティエリアに立てこもっている限り戦闘は禁止されているから安心出来る。
この中なら誰が来ても会話が出来る。
まてよ・・・何か引っかかる。
そう、これはゲームなんだ。
ゲームである以上、引きこもりは運営側に不利益を被るだろう。
面白くないからな。
・・・ならば何故こんなセーフティエリアを作った?
考えろ・・・落とし穴が目の前にある感じだ・・・
まて・・・目の前に落とし穴・・・
そうかっ!!
不味い!!このままここに居て、気づいた人間が外に居るとしたら・・・
「起きろ!!」
急いで3人を起こす。
「何っ?誰か来たの?」
「・・・修二?・・・」
「何かあったのかっ!?」
「まだ何もない。だがここは不味い。
今すぐにでも移動しないといけないんだ。」
「どう言う事だ?」
「ケンジ、訳は後で話す。
悪いが急いで荷物を整えてここから出るんだ!!」
急いで荷物を整えながら話す。
「僕シャワー浴びたかったんだけど・・・」
「マナミもっ、速く。」
「・・・準備・・・終った。」
「よし、準備できたらすぐに出るぞっ!!」
急いで扉を開けると、そこには入り口前に円盤状の物体を埋めようとしている女性が居た。
(ヤバイッ)
女性にタックルし、円盤状の物体をひったくると、3人に急いで声をかける。
「不味い、そこに止まるんだ。」
TVで見た覚えがある・・・地雷だ。
「今この女が地雷を埋めていた。何所にあるか判らない・・・」
「なっ・・・」
今にも外に出ようとしていたマナミが足を止める。
「教えろっ!!何所に何個埋めたんだ!!」
組み敷いた女性を改めてみると、一度見た事のある顔【山田 愛】だった。
山田は組み敷かれつつも余裕の表情で、
「さぁ?知りたいなら歩き回ってみればいいんじゃないの?」
なっ・・・まてよ、確かあの時山田は【吉田 誠】と一緒に行動していたはず。
「吉田は何所に行った?
何をしている?」
その答えはすぐに来た。
タァンッ
熱いっ!?
頬に一筋の赤い線ができる。
「ガ・・・ガガッ・・・素直に愛を離すんだ。
でなければ次は頭を撃つよ?」
山田の胸ポケットに入っていたレシーバーから吉田の声が聞こえた。




