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2日目―狂気

評価頂きありがとうございます。

正直ここからどろどろが始まるので、大丈夫か?と思ったりもしますが(汗

「大丈夫か?」


明日香の方を見ると、彼女は一糸纏わぬ姿でマナミに抱きしめられていた。

顔が赤くなるのが判る。

顔を背け、足元に散らばっている服をマナミのほうに投げる。


「ねぇ、顔を背けるほど私の身体・・・汚い?」


「ちょっ・・・明日香?」


なんだ?マナミも焦っているように聞こえる。


「私、汚れた?汚い?汚らわしい?違うよね?私、綺麗だよね?私、汚くないよね?ねぇ、こっち見てよ。私を見てよっ。」


一体何があったのか・・・

意を決して明日香の方を向く。


先ほどのまま一糸纏わぬ姿だ・・・だが、顔は赤くはれ、身体にも所々斑点がある・・・


全て・・・村上がやったことなのだろう。

目が虚ろになり、焦点が合っていない・・・

何処まで追い詰められたのだろう・・・

マナミも


「大丈夫、明日香は綺麗だよ。いつもの可愛い明日香だから大丈夫だよ。」


等と慰めている。

ケンジの方を見ると、完全に青ざめている。

そして村上の方を見ると、恐ろしく低い声で、


「てめぇ・・・何やったんだ・・・」


と言っている。

聞かなくても良い、大体の予想はついた・・・

俺は拳銃を村上の方へ向ける・・・


「ひっ・・・ひいっ・・・、私達は合意の上だ。何もやましい事などしていないんだぞ。」


この現場を押さえられてその反応か・・・

やはりこの男は信用してはいけない人間だったようだ・・・

後は引き金を引くだけ・・・

だが、引き金が重い・・・

こいつは生かしておく訳にはいかない。生かしておけば間違いなく俺達が後から狙われる・・・


「ねぇ、まなみぃ。なんであなたは綺麗なままなの?

 私ね、こんなに汚れちゃったんだよぉ?」


明日香は自分の身体を広げるようにして俺達に見せ付けてくる。


「明日香、もう大丈夫・・・大丈夫だからっ・・・」


俺の中に怒りが湧き上がる・・・

村上を睨み付けると、引き金を引く


ダァンッ


「ぐうぅっ」


・・・俺はまだ撃っていない・・・


ケンジか?


違う。


「あす・・・か?」


マナミの声が聞こえる。


明日香の方を向くと、いつの間にか拾った銃で村上を押さえつけていたケンジの右太ももを撃ち貫いていた・・・


「うふふ・・・村上さんをいじめちゃ駄目ですよぉ。村上さんにはぁ、私と同じようにマナミも汚してもらわないと。」


「明日香、何を・・?」


「何を?何をって、み~んな汚れちゃえばいいんですよ。

 そうすれば私だけが汚れてるわけじゃなくなるじゃないですかぁ。」


明日香が村上を縛っている服をほどこうとするので、飛びかかろうとする。


チャキッ


明日香の持っている銃が俺に向く。


「ふふふっ、修二さん、修二さんが代わりにマナミを汚してくれるんですか?

 それならこのゴミを始末していいんですよ~?」


「なっ・・・」


ダァンダァンダァンッ


3発の銃声が鳴る。


「ぎゃ・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁ」


悲鳴が響き渡る。

3発の銃声は確実に村上に吸い込まれていった。


「あっ・・・あすかっ!?」


「ぐっ・・・この女・・・正気じゃねぇ」


マナミもケンジもこの行動が信じられなかった。


狂っている。


そうとしか思えない。

焦点の合っていない目。

おかしい言動。

自分の中で出した結論や、殺人すらなんとも思っていない表情・・・


「あらぁ?まだ汚い声が聞こえますね~。

 五月蝿いから黙ってください。」


ダァンダァンダァン


更に3発の銃声が、今度は村上の頭を狙って放たれる。


「これで静かになってくれましたぁ~。」


目で合図する。

ケンジは明日香の視線に入らないよう、少しずつ後ろに下がっていく。


「あとはぁ、修二さん?このゴミの代わりにマナミをぉ、私と同じぐっちゃぐちゃのどろどろにしてあげてくださいね。」


にちゃぁっとおぞましさしか見えない笑みで微笑んでくる。

その手に握った拳銃は俺のほうを向いている。


「まて、友達なんだろ?

 それなのに酷い事をさせると言うのは可愛そうじゃないのか?」


「友達だからぁ~、私とおそろいになって貰おうと思ってるんじゃないですかぁ。」


明日香はさっきと同じ笑みを今度はマナミに向ける。


「マナミぃ?なんで私が村上に連れて行かれるとき、止めてくれなかったんですかぁ?」


「ぼっ・・・ボクは止めたじゃないか。」


「でもぉ、私はマナミと一緒に居たかったんですよぉ?」


「ボクは言ったじゃないか、あいつは気持ち悪い、一緒に行っちゃいけないって。」


「そうですかぁ?でもぉ、もう遅いんです。

 わたし汚れちゃったんです。

 もう汚いんです。

 だからぁ、マナミもお友達らしく一緒になってくださいねぇ。」


マナミは泣きそうになりながらも明日香を説得しようとしている。

視界の端にしおりに肩を貸してもらい、遠くへ離れていくケンジが見えた。


「マナミ・・・」


俺はゆっくりとマナミに近づいていく。


「ひっ・・・」


「修二さんやってくれる気になったんですねぇ。

 良かったですぅ。」


明日香には無理やりキスをしているような角度で見せる。

そしてマナミに囁く。


「あの銃は見た覚えがある。

 弾は8発のみだったはずだ・・・

 予想だが、弾丸は切れているはず。


 俺は生き残りたいが、人を殺したら元に戻れなくなる気がする。

 ・・・だから逃げようと思う。

 

 マナミ、お前は逃げたいか?それとも命を懸けて明日香を説得するか?」


マナミの顔が歪む。

おそらく今の明日香には何を言っても無駄と言う事がわかっているのだろう。

マナミを押し倒す振りをして、地面の砂を掴み取る。


「行くぞ?」


マナミが頷く。

服を脱がせる振りをして、明日香に向かって砂をかける。


「きゃっ・・・」


カチッ


ひるんだ拍子に引き金を引いたのだろう。

だが、弾丸が発射されない。

予想通り弾切れだ。

マナミの手を掴むと引っ張り起こし、ケンジ達が逃げていった方向へ向かって駆ける。


「待ちなさいっ、まってっ・・・イヤッ・・・置いてかないで・・・イヤーーーーー」


後ろから悲鳴が聞こえるが、構う訳には行かない。

今の明日香に俺たちの声が届くことは無いだろう。

ならば、時間を置き、冷静になってくれることを祈ろう・・・

俺たちはしおり達と合流すると、ケンジに肩を貸してそのまま逃げ出した。


後ろから明日香の叫び声が聞こえていたが、聞こえなくなってくる。

声が完全に聞こえなくなってから更に20分は走り続けた。


っはぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・


もう大丈夫だろうか?

後ろを振り向くと、そこには青い顔で一緒に走ってきたマナミと黙々とついてきたしおり・・・そして崩れ落ちたケンジだけが居た。

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