2日目―リストバンド
15分は経っただろうか・・・
男はやおらに立ち上がると、水と食料をボックスから取り出すと、自分の荷物へつめる。
さらに何か鉄の塊・・・なんだろう、ここからでは遠くて見えない。も詰めていた。
詰め終わると、銃を片手に警戒しながら来た道を戻っていった。
更にそこから20分待った。
もう大丈夫だろう。
俺はマナミから離れると、木の陰から現れる。
離れたところからもケンジとしおりが身体を表す。
「マナミは無事か?」
ケンジは出てこないマナミのことが気になったのだろう。
第一声がそれだった。
「マナミは無事だったが、気を失っている。
今は俺達も休息が必要だ、少し寝かせておいてやろう。」
そして2人にお礼を言う。
「2人ともありがとう、石を投げてくれたから助かった。」
頭を下げると、
「無事で・・・良かった。」
しおりが服のすそをつまんでくる。
しおりの頭を撫でてあげる。
「それにしても危なかったな・・・まるで俺達の事が見えているみたいに撃って来ていた。
マナミも鼻先に撃たれたみたいだったし、更に警戒しねぇとあぶねぇな?」
「ああ、そうだな・・・」
「にしても隠れた後、銃声が聞こえたが何があった?」
「正確にはわからないが、木の葉がかすれる音を立ててしまった。
それを聞いて銃を撃ってきたんだ。恐ろしい耳だと思う。」
その言葉にしおりとケンジが息を呑むのが聞こえる。
「そいつはやべぇな・・・一体どんな耳をしてるんだよ。」
「それに・・・躊躇い無く撃ってきた・・・殺害が目的・・・かもしれない。」
「ああ、俺としては奴はNO.1じゃないかと疑っている・・・」
そしてケーブルをリストバンドへ近づけていたのを思い出した。
「そういえば、奴はケーブルとリストバンドで何かやっていたんだが、心当たりは無いか?」
ケンジも俺も頭をひねる。
「余ってるので・・・試せば・・・判ると思う。」
いわれて気が付いた。
亜紀のリストバンドはハルカに持っていかれたが、如月のリストバンドはまだ残っていた。
あれなら万が一、変なことがあったとしても実害が起こることは無いだろう。
ケーブルとリストバンドを取り出すと、リストバンドを調べる。
あるのは、横に何かの差込口とボタンが一個だけだ・・・
ケーブルも確かめると、片方はイヤホンのジャックのような形をしている・・・
もしかして・・・
荷物の中に会ったケーブルを全て取り出し、先を見てみる。
1つ1つ形が違う・・・
如月のリストバンドとケーブルの先を照らし合わせる・・・
1つだけ、形状が合うものがあった。
何故気づかなかった・・・
ジャックと差込口をあわせると、スッと組み合わさった。
画面が切り替わり、
『NOW Loading』
と切り替わる。
しばらくすると、画面の文字は
『GPS ON』
となった。
・・・GPSか。
思い当たる事があったので、ボタンを押し地図へ切り替える。
地図を見ると、俺達のいるあたりに光点が5つ表示される。
ビンゴ!!
どうやらリストバンドに内蔵されているGPSを光点として表示しているようだ。
これなら周りに誰か近づいたとき、リストバンドをしっかり見ておけば気づく事ができる。
先手を打って逃げたり、罠を仕掛けることが出来るアドバンテージはかなり大きい。
「これは助かる。」
言葉を漏らすと、ケンジとしおりが覗き込んでくる。
「おっ、この光点が俺達か、こりゃ良いな。」
「逃げるのに・・・便利」
2人ともこの光点の良さをすぐに把握したようだ。
俺は残りのケーブルを真ん中に置くと、
「自分のリストバンドの差込口と合うケーブルを探してくれ。」
と言って、自分のリストバンドと合うケーブルを探し始めた。
「1つ・・・あった。」
「俺は2つだ。」
「残念・・・、俺は1つもなかったよ。」
しおりが1個、ケンジが2個、俺は0個だった。
まぁ、仕方ないだろう。
「俺は生存者のカウンターと地図の拡大表示の2つだったな。」
「私は・・・なんだろう?・・・光点が・・・地図に・・・表示されてる。」
しおりのは何だろうか?
「ローディングが終った後、何か表示されてなかったか?」
「『TRAP ON』と・・・表示されてた。」
トラップ・・・罠か・・・つまり罠がこの島にめぐらされていると言う事か。
今まで気づかなかった・・・
下手をすれば、1日目のもう1人の死亡者は罠にかかった可能性がある。
かからなくて助かった・・・
「罠があったのか、これからは気をつけなくてはいけないな。」
「ん・・・でも・・・光点・・・ほとんど・・・無い。」
罠の数はかなり少ないのか。
なら俺達がかからなかったのもうなずけるものだ。
「なら、しおりはGPSとトラップ、両方を確認して貰った方がいいかな?」
「だな、周囲の警戒もあるし、1人で両方見て貰った方がいいだろ。」
「ん・・・任せて。」
如月のリストバンドをしおりに預けると、マナミのほうを向く。
「さて、そろそろ区切りも着いたし、マナミも起こして一通り説明するか。」
「んじゃ、俺はボックスを壊しがてら残ってるもんを拾ってくるわ。」
ケンジはそう言って駆けていった。
「マナミ、起きれるか?」
肩を揺すりながら声をかけてみる。
「・・・う・・・父さん・・・必ずお金・・・・もってくから・・・」
うっ・・・
しおりの方を見ると、頷き返される。
彼女も聞いていたようだ。
マナミ・・・金が必要なのか・・・
事情を知っておかなければ、後々危険かもしれない・・・
だが、今は起こしておかないといけないな・・・
体を揺すっていると真奈美は目を覚ました。
「ごめん・・・僕のせいで修二を危険な目に合わせた・・・」
相当気落ちしているな。
彼女の第一声は謝罪の言葉だった。
「チームで動いているんだ。助け合うのは当然だろう。」
すると、マナミはきょとんとした顔で、
「自分の命がかかってるのに・・・
相当なお人よしだねぇ。」
後半からは笑顔で言ってきた。
そこまで言われるようなお人よしではない。
今のは助けられると確信しての行動だし、一人抜けるだけで生存率はがた落ちだ。
俺は自分が生き残る為に、利用できるものを利用しているだけだ。
まぁ、別にいう必要も無い事だ、好きに思わせておこう。
その後、マナミにもケーブルのことを話し、探して貰うと2つ見つかった。
「生存者のカウンターと、なんだろう?『CAVE ON』って表示されたけど、意味判る?」
「CAVE・・・洞窟」
「そうなんだ、しおりちゃん頭良いね。」
どう見てもしおりは中学生、マナミは高校生なんだが・・・
突っ込んではいけない気がする。
そして話題は今後の動きについて。
「とりあえず、夕方までボックスを探し、その後セーフティエリアを目指す。
で良いかな?」
「それが・・・良い・・・と思う。」
「ああ、GPSってのが他にもある可能性は高い。
早期にリストバンドを外しておくに越した事はねぇな。」
しおりとケンジはOKらしい。
「修二君が言うなら、僕はそれに従うよ。」
マナミは・・・うん、まぁいいか。
最初はまっすぐセーフティエリアを見つけ、その間にありそうなボックスだけを見つけるつもりだったが、GPS等で感知される恐れがある。
リストバンドを外せれば、GPSは無効にできるし、裏をかく事すらできる。
生存確率を上げるためにも、クリア条件の整った仲間は少しでも欲しい所だ。
ただ気になるのはNO.1(予想)の男だ。
あの男が俺達を感知したのは、リストバンドの機能かもしれなくなってきた。
その場合は音感知だろうか?
考えうる限りの対策は取って行かないといけないな・・・




