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1日目―ブランク

ハルカに見限られたか・・・


ただの遊びじゃない。


これは命のかかったゲームなんだ。


他人に施しを行うような甘い性格では、このゲームを生き延びられないのは判っていた事だ・・・


だが、結果的にとは言え甘い行動を起こしていた。


俺は計算の上での行動だと思っているが、しおりは俺の行動に従って。


ケンジはそもそもそういう人間と言うのが見え隠れしている。


今更、毒物を警戒して食料は捨てるつもりだったといっても意味は無いだろう。


ハルカが拳銃を持っていったのは、報復を恐れて・・・と思いたい。


身につけていた拳銃が大丈夫だったと言う事は、触って起きるのを警戒し身体までは調べていないと思って良い。


ならば、リストバンドを狙ってハルカが俺を襲うと言う事はないだろう。


しおりとケンジのリストバンドも早い段階で外し、ハルカへ渡してやれば対立する理由も無い・・・はずだ・・・


問題ない・・・、俺たちの目的は最初通りにボックスの確保・・・だ。


この程度で裏切るような人間なら、命の危機にどのような行動を起こすか判らないと言う事でもある。


早い段階で見限られた事を幸運と思っておこう。


「過ぎてしまった事は仕方ないな・・・

 信用されなかったと言う事だろう。

 マナミには悪いが、置いていける食料がなくなったと伝えるしかないな。」


その言葉にしおりはただ頷くだけだった。


「まずは2人を起こすかどうかだな。

 残り3日を過ごすのには少しでも睡眠をとっていたほうがいいだろう。

 もう少し寝かしてやるか?」


しおりを見ると頷いている。


ならば問題はない、このケーブルの使い方を調べつつ時間でも潰しておこう。


荷物をあさり、ケーブルを取り出していると、後ろから声がかかる。


「その必要は無いよ。僕は起きているから。」


何処から聞いていたのだろう。


後ろを見ると、マナミが身体を起こして俺たちのほうを見ている。


ケンジが寝ているのを見ると、起こさないように気を使って俺の隣に座りなおす。


「てっきり怒り狂うと思ったんだけど、意外と冷静だね?

 ちなみに、荷物と食料はがさごそしていたけど、身体には触れようともして無かったよ。

 もしかしたら男自体が嫌なのかもしれないね。

 荷物もシャツを取り出したら悲鳴を上げそうになっていたから。」


どうやらもう1つのリストバンドも手にはめたままのリストバンドも見られては居なかったらしい。


というか、何時から見ていたんだ?


「そうか、それはつまりハルカが物色している所から見ていたと言う事でいいんだな?」


「うん、起き出した時間は見てなかったけど、出て行った時間は20時半ぐらいだったかな。」


「それからずっと起きていたのか?」


「まっさか~、もう一回寝なおしたんだけど、しおりちゃんが起きたからね。

 私ん家、ちっちゃな子がいるから、人の気配ですぐに起きる事ができるんだ。」


「自分の食料が盗られているのに、よく我慢してたな?」


「変な事して命を狙われるよりは、黙っていたほうが良いって事もあるんだよ?」


「そりゃそうだ。」


「それに、何の思惑が入ってるか判らない食料をそのまま受け取るほど警戒心が無い訳でもないからね。」


どうやらただの少女と思っていたが、結構切れ者のようだ。


侮っていれば足元をすくわれかねないな。


「なら処分できて良かったと?」


「そう言う事になるね。」


2人して顔を見合わせると、噴出してしまった。


そのまましおりも合わせて2人で声を抑えて笑い合う。


しおりも笑ってはいないが、楽しそうにしている。


「さて」


マナミが真面目な顔になったかと思うと、


「何故NO.14のリストバンドを持っていたのか、それと君の本当のナンバーを聞いてもいいかな?

 私は君の予想通り、NO.7だ。」


冷や汗が流れ出る。


「場合によっては僕も身の安全を考えといけないからね。

 嘘は聞きなれているんだ。嘘は通じないと思って構わないよ?」


静かな、それでいて澄んだ目で俺の瞳を見つめている。


・・・これはうかつな事が言えないな。


ケンジにも話しておいたほうがいいだろう。


「・・・判った。

 だが、ケンジにも伏せていた内容だ。

 ケンジにも聞かせた上で今後行動を共にするか聞きたい。

 ケンジを起こすから待ってもらっていいか?」


マナミが頷くのを確認して、ケンジを揺り動かす。


「ん・・・う・・・もう時間か、悪いな。」


ケンジが目を覚ます。


「悪いな、少し早いが言っておく事ができてな。

 悪いけど、起こさせて貰った。」


ケンジはまどろんだ表情だったが、俺の言葉の意味が判ったのだろう。


表情を引き締めると、


「判った、聞かせてもらう。」


座りなおして俺たちに正対した。


全員に頷いてから話し出す。


「まず、ケンジに話す事からだ。

 ・・・目が覚めたらマナミがいなくなっていた。

 食料やいくつかの荷物が無くなっていた。」


ケンジは自分の荷物をすぐに確認した。


確認が終ったのか、俺たちのほうへ振り向くと、


「やられた・・・拳銃が無くなっている。」


やはりケンジの銃も取られていたか。


「そういえば・・・」


今まで黙って俺たちの会話を聞いていたしおりが声をあげる。


「私の銃は・・・なくなって・・・いない。」


しおりの銃はなくなっていない・・・


良い考え方をすれば、しおりの分は身を守る為に残しておいてくれた。


悪い考え方をすれば、この銃を取り合っての仲たがいを狙ったと言う事か・・・


「しおりの銃はそのまま持っていて欲しいと思うが、ケンジはそれで構わないか?」


「ああ、女が持っていたほうがいざと言う時身を守れるだろう。

 異論は無いぜ。

 ・・・で、今から追うのか?」


「いや、追っても無駄だろう。

 それに銃も取られている。下手をすれば返り討ちになる。」


「・・・だよなぁ。」


かなり気落ちしているようだ。


油断した事で自分を責めているのだろうか。


「すまねぇ、油断しなければ盗まれる事もなかったんだが・・・」


「いや、それは俺も同じだ。

 過ぎた事を悔やんでも始まらないからな。

 それより、俺もケンジに黙っていた事がある。

 それを聞いた上で今後の行動を決めて欲しい。」


そして俺はリストバンドを皆に見せる。


「俺の本当のナンバーはブランクだ。

 以前見せたリストバンドは短い間だったが、一緒に行動した仲間のリストバンドだ。」


ケンジとマナミの表情が固まる。


「俺のナンバーは大多数の人間からは迎え入れられるだろう。

 だが、同時にNO.6からは命を狙われる。

 簡単に明かす事ができなかった事を許して欲しい。」


「さっきのNO.14に関しての説明はしてもらえるんだろうな?」


ケンジは2度騙されているからか、口調が荒くなってきている。


「もちろんだ。

 俺は目覚めてすぐにNO.14の少女【七海 亜希】と出合った。

 最初は半信半疑だったからな、何も考えず彼女と一緒に行動する事にした。


 そのすぐ後にボックスを見つけたときだったか、如月と言う女性、斉藤という男性、そしてしおりの3人組と会った。

 今思うと最悪条件が揃っていた・・・

 ボックスに入っていた拳銃、NO.14のクリア条件、そして命を狙われるルール・・・


 みんなの前で亜希が働いた暴力は、普段で言えば軽いじゃれ合いのようなものだった。

 だが、極限状態ではそうならなかったんだろう。


 斉藤が拳銃を発砲し、如月が殺された・・・

 そして次に亜希が・・・

 次は俺の番と思った時にアラームがなった。


 24時間ルールが破られた事によるペナルティのアラームだった。

 液晶の表示がくるくる光ってそれが止まった時、音声が流れた。

 ペナルティは『毒殺』だったよ。


 テトロドトシン・・・だったかな、って毒がリストバンドから体内へ注入されたらしい。


 斉藤は狂ったように叫ぶとどこかに走り去っていった。


 亜希は俺を殴ったときにリストバンドがはずれ、如月は死んだ後外れていた。

 おそらく、クリア条件を満たした時と死んだ時だけ外れるんだろうな・・・


 その時の亜希の遺言もあってしおりは絶対に生きて返すつもりだ。」


俺が話し終えると、2人は静かにため息を漏らした。


「騙したのは許せねぇ。だが、生きようと必死だったんだな・・・

 他に黙っている事はねぇんだな?」


「あぁ、以上だ。

 信じられないならしおりからも聞いてくれ。

 それ以降ずっとしおりと行動を共にしているからな。

 ・・・しおり、隠す必要は無い。何か聞かれたら答えてやってくれ。」


しおりが頷くのを見ると、2人に向き直った。


「うん、今度は信用する。

 そっちも色々とあったんだね。」


マナミは信用する事にしてくれたみたいだ。


「俺も同じだ、んじゃ、これからどうするか改めて話し合うとするか。」


ケンジも座りなおすと、ニカッと笑った。

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